予想どおりに不合理[増補版] 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
- 早川書房 (2010年10月22日発売)


- 本 ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152091666
感想・レビュー・書評
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人間の行動は不合理にあふれていて、しかもその不合理には規則性がある…。
デジタル大辞泉によると「不合理」の意味は、「道理・理屈に合っていないこと。筋の通らないこと。また、そのさま。」だそうです。
この本は不合理な人間の行動を、実験から証明したものです。
15におよぶ各章であきらかにされる不合理な規則性は、とても興味深いテーマばかり。
不合理なのに規則性があるなんて、おもしろいですよね。
わたしはこの本を読みきるのに、ほぼ2週間かかりました。
なぜかというと、各章とも語り口は軽やかなのに内容がとても濃く、1章読み終えるごとに、長編小説冊読み終えるくらいのエネルギーを使っていたからです。
読み終えたあとも、自分の身近にこれと似たエピソードはなかったかなと考えてしまうため、とても頭の力を使いました。
そのため1日1~2章ずつ読むのが限界で、結果、1冊読み終えるのに2週間かかってしまったわけです。
不合理な行動は、人にプラスもマイナスも、もたらします。
しかしこの不合理性が備わっていることこそが人と機械のちがいそのものです。
「予想どおりに不合理」を読んでいると、人生をおもしろく生きるためのエッセンスは、不合理性を自覚して生きることのなかに隠されているのではないか…と思えてきます。
2週間かけてこの本を読みきることは、一見効率が悪く、とても不合理な行動に見えます。
けれど、人に備わっている不合理な法則を知って生きることで、不合理な選択をかわせたり、不合理性を逆手にとっておもしろがることもできるはずです。
15章で筆者はこのように述べています。
「たとえ不合理があたりまえのことであっても、だからどうしようもないというわけではない、ということだ。いつどこで間違った決断をする恐れがあるかを理解しておけば、もっと慎重になって、決断を見なおすように努力することもできるし、科学技術を使ってこの生まれながらの弱点を克服することもできる。」(411ページ)
人間の行動の不合理性に目を向けることは、弱点をさらされているような気持ちになり、目を背けたくなるかもしれません。
けれど、人間は機械のように合理的には生きられないのもまた事実です。
そして人間の不合理な規則性をなくすことができないのならば、不合理性を知っておくことは、生きる上でとても大切なことです。
不合理なのにおもしろい。
それが人間という生き物なのかもしれません。
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タイトル通り、いやな予想した通り、人は不合理、不条理な行動を選択してしまう、というお話。
どこかの本で読んだことのある例題が多々あったけど、それは逆で、ここに載っていたものがわかりやすいために他で引用されていたのね。
内容が分かった反面、モヤモヤする結果だな。。
306冊目読了。
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私たちは自分の行動や意志を自分でコントロール出来ていると信じている。でも実際は簡単に不合理な行動をとってしまう。
この本でとりあげられている様々な例は悔しいが自分にも覚えがあった。自分含め人間にはそういう側面があると認めることで、世界の見方が少し変わると思った。
この本の中では数々の実験がとりあげられているがどの結果も非常に興味深く、これによって行動経済学に対しての興味も大きくなった。
2023.07.30 読了 -
我々は常に合理的に行動しようと心がけている。しかし本書(行動経済学)によれば、知らず知らずのうちに、多くの不合理な行動を行っている。本書では全て実験から得られた、それらの原理を非常にわかりやすく解説している。
これらの原理は、マーケティングなどにも活用されていて、我々はコントロールされてしまっているのである。
全ての原理を意識してコントロールされないようにすることは難しいが、そういう原理が働いていることを意識するだけでも意味のあることだと思う。
本書で扱っている原理。
・常に比較する(比較しにくいものは無視する)
・三択では真ん中を選ぶ
・恣意の一貫性(最初の価格が「恣意」的でも一度意識に定着すると、アンカーとしてその価格を基準に比較する)
・自分の決断が合理的だと正当化する
・出費の痛み(自分のものを手放すときの不快さ)のため「無料」の力はすごい
・社会規範(モラルで判断すると市場規範(お金で判断する)
・社会規範の中に金銭が加わると市場規範に従ってしまう
・性的な興奮状態では適切な判断が出来なくなる
・自分の所有物を過大評価する
・予測した通りに感じ取る(高級レストランでは何でも美味しく感じる)
・価格と効果は比例関係(効果な薬ほどよく効く=プラセボ効果)
・みんなが信用し協力すれば社会全体の価値は最大化するが、短期的には信用を裏切ることで個人が利益を得られてしまい、不信が連鎖してしまう。
・チャンスがあれば不正をしてしまうが、誘惑の直前に宣誓や規則など正直さを思い出させると不正を止める。
・人は選択する際に他人の選んだものに影響されてしまう -
・人に何かを欲しがらせるには、それが簡単には手にはいらないようにすればいい
・社会的な関係と市場的な関係の二股はかけられない。あいまいな好感度は避けビジネスだと割りきる
・従業員と社会的関係を築くには、1000ドルの現金よりも1000ドルのプレゼント
・憎悪をこめたメールでやり返す前に、草稿フォルダーに2、3日入れて頭を冷やす
・自分の好きなものと、嫌いだけれど自分にとってよいものとを組み合わせ、欲望と成果を結びつける工夫をする
・<風と共に去りぬ>のレットのセリフ。「正直言って、おれには関係ない」
・べつの生活やちがうタイプの友人に移っていった人たちにクリスマスカードを送るのはやめよう
・どちらでもいいことで決断に迷うときは、これを簡単な決断だと考える
・雰囲気や期待が喜びに大きく影響する。モナ・リザの微笑みが美しく謎めいているのは、そう教えられたから
・人のごまかしをやめさせるには、十戒ような規範を読ませたり、ちょっとした文面に署名させる -
行動経済学で最も面白い本を一冊と言われれば間違いなくこの本。行動経済学の理論体系を誰でも分かりやすい読み物としてまとめている。アリエリーの研究者としての目のつけどころは実に面白い。
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行動経済学はコラムとして読むのがすごく面白いと思います。
ただ面白い実験と、そこから得た心理学的TIPS集、くらいに思ってしまう。
膝のお皿の下を叩くと自然と足が上がってしまう反応を脚気といった気がするんですが、脚気のいろんな種類を面白い実験から教えてくれる感じで、脚気がなぜ必要なのか・起きるとどういうメリットがあるか、みたいな説明はないという感じです。 -
自分の行動が自分の意思ではなく、意図的に操作された場合もあることがわかった。
選んでいるようで選ばされている。
長かったけどおもしろい。 -
行動経済学の基礎を面白く学べた。様々な角度から具体的な事象が書かれていて、納得させられる。自分の人生にどう生かせるか考えていきたい。
ダン・アリエリーの作品





