玉工乙女

著者 :
  • 早川書房
3.04
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本棚登録 : 126
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091727

作品紹介・あらすじ

石細工の職人になることにその身を捧げた少女と、男装をして怪異に挑む運命を受け入れた少女…淡く、不思議な中華少女小説。

感想・レビュー・書評

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  • 勝山海百合の中国小説はいいなあ。今回も堪能した。箱作りの職人の弟子の黄紅は、転がり込んできた周千麒にかつてからの念願だった印紐を習い始める。一方、弟のために男装となった沈双槿は画を習っているが、そのうち妹が魔に狙われてしまう。妹を救うため、黄紅の姉の阿福に会う。沈双槿は黄紅の印紐に魅かれるのだが、結局二人は出会うことはない。とにかく、この二人に関わる話の諸々が無類に面白いのだ。そうそう、蓮の麗人が沈双槿と周千麒の両方に関わって来るよね。味わいがあり、不思議もある話。

  • 箱細工のお店に住み込み奉公をしている、村娘の黄紅は街中で出逢った放浪の絵師、周に石印のつまみへの彫りの手ほどきを受けることになる。
    幼い頃から彫鈕に憧れがあったものの、彫鈕師への弟子入りは男子のみ。
    仕事の合間に石への彫刻を始めた黄紅は石の奥深さにのめり込んでいく。
    商家の娘、沈双槿は弟の病気を祓うために男子として暮らしていた。
    足を縛ることもなく、外出が出来る気楽さはあるものの、弟の成人後を考え暗い気持ちを抱えている。
    そんな沈双槿の前に蓮喰という小人が現れ、やがて妹に奇怪な出来事が起こり始める。

    黄紅と沈双槿がいつ出会うのか、出会った事で物語がどう進むのかと思ったら、掠っただけでびっくり。
    女性に厳しい世の中に生きる二人の女の子。
    夢と将来と家族と、いろんな不安も抱えつつ一歩一歩進んでいく。
    箱屋の女将、師匠の周、沈家の家族、旅先の女性たちと登場人物が楽しい。
    けど、話がとっちらかって何処に集中して良いのやら。いっそ黄紅と沈双槿の話を分けた方が良かったのでは。
    最後も取ってつけたような印象で残念。

  • 以前読んだ「竜岩石とただならぬ娘」「十七歳の湯夫人」同様、
    中国の志怪小説、怪奇譚のようなお話を期待していたのですが…
    今回はちょっと肩透かしだったようです><

    石細工の職人を夢見る少女と、男装の美しい少女が主人公。
    石を通して若干の繋がりは見えてくるものの、
    二人の人生が交差する所までいかないのが残念なところ。

    決して現実的なお話ではないのだけれど、
    ファンタジーや怪奇譚というほど現実離れしている訳でもなく。
    あくまでも淡々と二人の少女の人生を描いているので、
    少し物足りないかなぁという気はしました。

    ただ、中華風の柔らかな雰囲気は読んでいて心地良かったです!

  • あっさりした感じ。
    二人の少女が結局直接関わらないので肩透かしでした。表紙が好き

  • 図書館のヤングコーナーで面展示されていて、表紙に惹かれた。

  • 彫って彫って彫り続けるの――普通の村娘の黄紅は、石印のつまみに細工をほどこす職人を夢見て、腕はいいがだらしのない師匠を叱咤しつつ、毎日教えを請うていた。やがて黄紅の石印は目利きに認められ、ついには憧れの競刻会の出場が決まるのだが……。いつか女に戻れるだろうか――男装の少女、沈双槿は悩んでいた。か弱い弟が魔物に狙われたため、弟に女装させて自分が男となり、敵の目をくらますため耐え忍んでいたのだ。だが苦難は続き、妹までもが魔物に狙われてしまう。沈双槿は妹を救う決意をし……。たとえ何があろうとも、選んだ道を進んでゆく。ひたむきな二人の少女たちが彩る、不思議な中華少女小説。

  • 玉石へ細工をする職人を目指す少女を描いた物語……にしては、他の話もいろいろ入っていますが。ファンタジーノベル大賞っぽい作品でした。表紙ほど百合百合しているわけでもなく、ファンタジーすぎるわけでもなく。でも地にべったりというわけでもなく。どこか寓話のような。面白かったです。

  • 20:中華風ファンタジー。勝山さん初の長編ということですが、短いエピソードが連なっているという形式なので、テンポよくさくさくと読むことができます。勝山さんの描く中華世界が大好きなのですが、今回は男装女子+職人気質女子ということで、もうページをめくる手が止まりませんでした。石細工を通じて、かすかにつながり続ける少女たちそれぞれの健気さ、一途さ、芯の強さがたまりません。このふたり、意外に近いところにいるのに、直接は顔を合わせないのがまたツボ。今後はもしかすると……と想像の余地があり、霧が漂うような余韻を残して物語が終わるのも素敵です。要するに大好きです(笑)。表紙も可愛いので、文庫化の際はこのままだと嬉しいなあ。

  • いままで読んだ事のない作家勝山海百合さんの「玉工乙女」を読了。あるようでなかった中華ファンタジー作品だ。

     物語の時代は書や水墨画が愛でられている描写があり纏足の話も出ているので多分清時代の様な気がするが確かではない。そんな争い事がすくなくなり、様々な芸術が豊かに花開いた時代に粋人の趣味として盛んだった細工を施した石に見せられた二人の少女を巡るお話で、境遇の違う二人の物語が微妙に絡み合いながら展開して行く。

     タイトルからしても石を細工する技術を高めるべく修行して行く黄紅が主人公だろうが、彼女自身の物語にはファンタジー色は薄い。彼女に石のイロハから教えて行く周先生は蓮の化身に恋をして蓮を描く事が出来なくなっていて、黄紅のお話ではちょいエロオヤジの芸の先生がお話の不思議さの部分を担っている。

     もう一人の石を愛する少女双槿は家族を襲った呪いを避けるために男装をしている美少女だ。彼女の部屋に遊びに来て蓮の絵を食べ尽くす妖怪も可愛らしい。弟だけでなく妹にも呪いがかかるが、夢に出てきたお告げに従い行動するさまがいじらしい。

     話の終わりかたはというと二人が幸せになるハッピーエンドかと感じさせながらも急展開、ちょっとひねった終わり方になっている。終わり方にも不思議さを練り込みたかったのだろうか。

     そんな石に魅せられた少女たちの中華幻想潭を読むBGMにらんだのはBill Charlapの"Live at the Village Vanguard"。大人のピアノトリオ演奏です。
    https://www.youtube.com/watch?v=2sSR9PFugs4

  • 美しい石にはなりたい形があるという。それを見極める「相玉(そうぎょく)」の才能を見込まれ、石細工職人を目指している少女。もう一人の少女は、魔物に狙われた幼い弟を守るため、身代わりとなり男として生きていくことを余儀なくされていた。いつ、もとに戻れるだろうかと思い悩む少女の前に現れた、人が心に描いた蓮を食べるという「蓮喰い」。「蓮喰」は、弟だけでなく妹までも魔物に狙われていると言う。それぞれの運命に立ち向かう少女たち。見習って頑張ろうと思える。

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