国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源

制作 : 稲葉 振一郎(解説) 
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093844

感想・レビュー・書評

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  • 収奪の体制になると経済的な成長が止まるという理論。過去のいろいろな地域、国を事例として説明している。
    政治体制によって経済体制が決まり、成長のインセンティブが働くなくなると国家は衰退する。国家の衰退を経済的な衰退ととらえている。
    政治体制が民主的であれば経済成長が促される仕組みになっている。ただ、ローマを事例にとると民主から独裁へと移行しており、民主から他の仕組みに移行する可能性はある。
    「隷属への道」では政治的な自由よりも経済的自由が重要と言われており、つながるところがある。というのも、収奪的な政治体制でなければ経済的な自由は保障されるので、民主主義にはこだわっていないと言える。

  • 経済は政治の上にある。政治が正しく平等で安定していないと投資もできないし新しい産業は(既存の権力者に)つぶされる。で政治は民主的なほうが長続きしやすくて、王政や社会主義とかだと一時的に発展はするが継続しない。まっ100年ぐらいは持つかもしれないみたい。ソ連は持たなかったけど。
    南米やアフリカの収奪的な政治を何とかしないと経済発展や飢饉の対策はできない。
    となるとまずは地域の自治レベルでの民主制の萌芽を目指すのかな。フランス革命も三部会とかの影響もあったし。

  • 世界にはなぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか、本書は、政治・経済上の「制度」による違いがその理由であることを古代ローマから、マヤの都市国家、中世ヴェネツィア、名誉革命期のイングランド、幕末・明治期の日本、ソ連、ラテンアメリカとアフリカ諸国、現在の中国といった広範な事例を用いて説明するもの。
     これからの日本を考えると、既得権益に縛られずに、世の中のニーズに応じた創造的な技術・仕組み・取組みが自由活発に進められる社会により良く変えていくことが重要で、政治・行政としてもその基盤を作ったり、後押しすることが役割になろうと感じました。
     今後の日本、また世界を考えていく上で必読の良書です。ちなみに、筆者は同じヨーク大学・LSE出身の政治経済学者で親近感があります。

    【ポイント】

    ・豊かな国には自由で公平、開放的な経済制度があり、技術革新・創造的破壊による持続的な発展のインセンティブがある(一方で、権力者が国家を食い物にして民衆から収奪する仕組みあり)。また、法の支配、民主主義、多元主義といった政治的基盤がそれを支えている。

    ・日本の明治維新とその後の経済発展は、イギリス名誉革命、フランス革命と並んで偶然性も相まった稀有の出来事。

    ・現在の中国の急速な発展も、既存技術の導入などに留まっており限定的で、政治的な開放がなされていない統制的な経済制度では、長続きしないのが歴史的な必然。

    ・あくまで制度という人間によって左右できるものが主要因であることは楽観的、一方で、人の問題であるがゆえ一度形作られた制度は硬直的でなかなか変わらないことは悲観的(奴隷制、植民地時代の制度が未だに残っているアフリカ、南米など)。

    ・これまでの国際機関や開発機関による「開発援助」は往々にして途上国の時の権力者を肥太らせ、また国際機関から現場に至るまでに幾重にもピンはねされるために、真の援助が必要な大衆には届かず、必要な制度を作るにも至っていないのが現状。一方で、何もしないよりは何かした方がマシなのも事実。

  • 世界史に疎い自分にとってはめちゃくちゃ難しかった。

    この本に出てくる「収奪的な制度」は日本でもある程度は見られそう。
    電力業界とか、限られたエリートとは違うけど、農業とか?

  • 「国家はなぜ衰退するのか」(上)は「国家はなぜ衰退したのか」「国家はなぜ繁栄したのか」「国家はなぜ繁栄できないのか」の事例のショーケースでした。包括的制度と収奪的制度という本書の提示するフレームワークのもと、産業のイノベーションが事業者に対してインセンティブをもたらす政治体制かどうか、というシンプルな視点で古今東西の国家の盛衰を語っていきます。初めに結論をハッキリさせておいて次々とサンプルを繰り出してくるのでテーマの重さの割りには一気に読めました。そういう意味では本書でも何回も言及されている「銃・病原菌・鉄」がゆっくり読み進まないとならなかったのと違いを感じました。西欧と東欧の違い、イングランドとスペインの別れ道、名誉革命と産業革命の意味、アフリカの苦しみ、中国の不透明性などなど、なるほどの連発です。ただ、その主張の分かりやすさが新自由主義的な市場礼賛にも繋がりかねないような気がしてヒヤヒヤしながら(下)に突入します。

  • 人気の本だが難解。

  • 2014年25冊目。

    わずか一枚のフェンスで区切られた「ノガレス」の北と南で大きな経済的格差が生じるのはなぜか。
    地理・気候・民族が同じ北朝鮮と韓国でこれだけ貧富が違うのはなぜか。

    国家の貧富を左右するのは「地理」「病気」「文化」ではなく、
    “収奪的”ではなく“包括的”な経済「制度」とそれを構築する政治「制度」が有るか否かだというのが、本書の主張である。

    ■「収奪的制度」:絶対主義、一部のエリートによる支配、新技術導入への渋りや妨害、商業の独占・・・etc
    ■「包括的制度」:多元的政治体制、議会の機能、イノベーション(創造的破壊)への寛容性や促進、認められた財産権・・・etc

    これらの制度の違いによって(たとえ小さな相違でも)、決定的帰路(たとえば、「新大陸の発見」や「産業革命」)が訪れた際に、その恩恵を享受して継続的な発展を手にできるかどうかが決まるという。

    収奪的制度の元でも、一定の発展は見受けられる。
    しかし、包括的制度の元での発展と違うのは、そこに「持続性」が認められないこと。

    これらの主張を、原始時代、ローマ帝国、コンゴ民主共和国、ロシア、産業革命前後のイギリス・・・非常に広範な歴史を紐解いて論じている。

    ■巻末に出展と解説が多少あるものの、脚注がないため、やや信憑性に欠ける部分がある
    ■全ページが塗りつぶしたように文字ばかりで、箇条書きでのまとめなどがないため、読み辛さを感じる時がある

    などの点は気になったが、「全ては制度」という明快な主張を通していて、一読の価値はとても高いと思う。
    下巻では明治維新に至る日本の事例も出るそうなので楽しみ。

  • 資料ID:21302211
    請求記号:332||A||上

  • 上巻では国家が繁栄するには多元的な政治システム、経済システムが必要だと豊富な事例により説明されている。主張自体は理解できる(というかなんとなく先進国では以前から共有されていると思われる)が、全体的にアネクドータルで冗長な印象を受ける。著者の一人が経済学者なのだから、この著書の中でモデルを呈示するべきとまでは言わないが、グラフ等で相関関係が納得できる記述にしてもらいたかった。

  • ☆チャーリーおすすめの一冊!
    非常に難しい内容ではありますが、とてもためになります。活用できる部分も多く、自分に取ってはバイブルとなる1冊です。

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著者プロフィール

ダロン・アセモグル
マサチューセッツ工科大学(MIT)エリザベス&ジェイムズ・キリアン記念経済学教授
マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学部エリザベス&ジェイムズ・キリアン記念教授。T・W・シュルツ賞、シャーウィン・ローゼン賞、ジョン・フォン・ノイマン賞、ジョン・ベイツ・クラーク賞、アーウィン・プレイン・ネンマーズ経済学賞などを受賞。専門は政治経済学、経済発展と成長、人的資本理論、成長理論、イノベーション、サーチ理論、ネットワーク経済学、ラーニングなど。主著に、『ニューヨーク・タイムズ』紙ベストセラーに選出された『国家はなぜ衰退するのか』(ジェイムズ・ロビンソンとの共著)などがある。

「2020年 『アセモグル/レイブソン/リスト 入門経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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