海の地政学──海軍提督が語る歴史と戦略

制作 : James Stavridis 
  • 早川書房
3.26
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本棚登録 : 186
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152097071

作品紹介・あらすじ

35年にわたり米海軍軍人として活躍し、NATO欧州連合軍最高司令官を務めた元提督が語る海の歴史と戦略。太平洋、南シナ海などの海域別に、マハン『海上権力史論』と自らの艦隊勤務の経験をもとに読み解く。「海の地政学」から日本の生き残り策が見えてくる

感想・レビュー・書評

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  • NATOの元最高司令官が書いたという帯を見てゴリゴリ軍事上のことが書かれた本かと思いきや、広大な海が人類の歴史の中でどのような役割(交易/戦争/協力)を果たしてきたかの変遷を追い、今後どういった重要性を持ってくると考えられるかを描く。20世紀は太平洋の時代だった。これからは南シナ海やインド洋が目が離せないことになるのかも…。また北極圏のこれから、またカリブ地域の政治的状況に対する自分の無知を知った。勉強になっただけでなく読み物としてもとても面白かった!

  • 太平洋、大西洋、インド洋、地中海、南シナ海、カリブ海、北極海で、歴史的にどのような交流や紛争が起こってきたかを、海軍軍人として各海洋を見聞した豊富なエピソードを交えながら概観し、海が人や社会にもたらした影響を考察するとともに、アメリカが今後どのように各海洋と関わっていくべきかを論じた内容。地政学の本というよりは、海に関する世界史の教科書という印象。全体を通して、ローカルな関心から出なかった各地の勢力に対し、グローバルな関心を持って大航海時代を築いたヨーロッパ文明の特異さが際だっていると思った。大西洋のように、長い戦火の歴史からすると異常な平和を今日保っている海もあれば、南シナ海のように、かつてなかった軋轢が生まれている海があるのも興味深い。近代以降、新たな資源の発見が、その海洋に対する価値を大きく変えてきた歴史が伺える。戦略については、民間での対話推進を提唱している点が通底している。

  • 著者は米海軍大将でNATO司令官を務めたスタヴリディス大将。タフツのフレッチャースクールで博士号を取得しており、退役後の2013年からはフレッチャーの学長を務めた学者軍人でもある。

    と思って期待して読み始めたのだが、第一章は精読し、爾後スキミングでざっと流れを追ったが、やや雑駁な内容かなと思った。

    構成としては、太平洋、大西洋、インド洋、地中海、南シナ海など海域別に古代からの歴史と、海軍士官としてのスタヴリディス氏の経験を織り交ぜた内容となっている。後者については面白いが、肝心の歴史部分については、広く浅く既知の内容が多く、何か学びとるものとしては不十分かなと感じ、全体としての精読はやめた。また、第一章を読んで訳が必ずしもわかりやすくは無いかなと感じた。また日本の歴史や安保政策で間違いも散見される。

  • 洋上で波に揺られ、鼻まで海水に浸かりながら陸地を眺め世界史と地理の授業を聞いている気分、講義をしているのは これからもアメリカ海軍が世界秩序を担うと固く信じている元NATO欧州連合最高司令官。

    北極海の章では潜水艦で冷戦を過ごした指揮官ならではの現実と展望が語られていて一気に読ませる。テロリストによるケーブル切断や海賊行為、携帯が通じない北極海の航海の困難をリアルに語り、領土面積よりも海岸線の距離と港の特徴がシーパワーに資するとマハンを引き合いに、米国海軍増強が世界秩序の維持という結論。

    題名から勝手に現代の海の地政学を期待していたため、もう一歩踏み込んだ内容が欲しかったところ。今後の日本のとるべき戦略を知るには物足りないけらど、全体的に基礎を知るにはちょうどいいかもしれない。

  • 太平洋や大西洋といった海ごとの地政学的な特性について、著者の海軍士官としての経験を混じえて書く。
    まず訳が酷い。原文も日本人には読みにくいんだろうけど、それにしても潜水艦のマストを帆と訳したんだろうなというような、海軍士官という著者の背景を知らないが故の訳の酷さ。
    それと著者自体も南シナ海の項に北朝鮮を含めていて、ん?と思ったり、かなり主観的な見方をしてるように受け止めてしまう。

  • アメリカ海軍大将であり、最後はNATO欧州連合軍最高司令官を務めた著者・ジェイムズ・スタヴリディス氏が、世界の七つの海、3つの大洋と4つの内海の地政学観点の歴史を氏の経験も交えて振り返り、挑戦的な国々への対処といった現在の課題も含め、アメリカ海軍への提言を行います。

    http://naokis.doorblog.jp/archives/sea_power.html【書評】『海の地政学──海軍提督が語る歴史と戦略』 : なおきのブログ

    <目次>
    日本の読者へ
    はじめに 海はひとつ
    第1章 太平洋 すべての海洋の母
    第2章 大西洋 植民地支配のはじまり
    第3章 インド洋 未来の海洋
    第4章 地中海 ここから海戦は始まった
    第5章 南シナ海 紛争の危機
    第6章 カリブ海 過去に閉じ込められて
    第7章 北極海 可能性と危険
    第8章 無法者の海 犯罪現場としての海洋
    第9章 アメリカと海洋 二一世紀の海軍戦略
    謝辞
    解説 米海軍の元高官がつまびらかに語る海洋戦略/奥山真司
    参考文献および世界の海洋に関する推奨文献



    2017.09.17 HONZより
    2017.12.02 読書開始
    2017.12.09 読了

  • 【由来】
    ・ハヤカワのfacebook + 図書館のハヤカワアラート

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  •  米海軍出身の本書の作者は、実際に軍艦で世界中を航海し各国に寄港した経歴をもつ。その経験のエピソードをちりばめつつ、7つの海(太平洋、大西洋、インド洋、地中海、南シナ海、カリブ海、北極海)の地理的状況、歴史、政治的状況や位置づけを順に解説し、その後の章で犯罪、将来戦略と意見を開陳する構成である。
     太平洋の章などは知っていることも多いが、北極海のことはほとんど知らなかった。大洋から世界を分析するのはとても新鮮に感じた。海はつながっていて一つとはいえ、とても広大で、しかも貿易など世界をつなぐ役割として海の重要性はむしろ高まっていると説く。
     これらの帰結としての将来戦略に突飛なところはなく驚きはないが、だからこそ本書を通して語られるSea Powerに安心して納得がいくのだろう。

  •  アジア太平洋地域が特に専門ではない米海軍の戦略家は世界をこう見ているのか、というのが分かる。ポジショントークめいた記述(NATO海軍の地中海での役割増大提言、北朝鮮対処のための「海軍を基本とした計画が必要」、「アメリカはカリブ海の統制権を誰にも譲れない」等)も若干ある。
     本書の8割を占める第1~7章では、世界の各大海の地政学的な意義や歴史、現在の問題に筆者自身の体験を交えている。真珠湾攻撃、トラファルガー海戦やレパント海戦等が登場。南北戦争やイスラム国等、一見海とは縁遠そうなものでも、海上交通や海戦の役割という視点から見ると新鮮だ。第1、2章の太平洋と大西洋が伝統的に重視されているのだろうが、その割に大西洋に関しては現在の脅威が挙げられていないのが不思議にも感じる。
     第8章は海賊対処や環境、漁業問題が中心。国連海洋法条約で博士号を取りNATO司令官を務めた筆者の経歴故か。そして総括の第9章では、技術や投合作戦の進展はあるも、マハンの原則の多くは現在も当てはまるとした上で、更に同盟や国際協力、省庁間協力、官民の協力が必要だと付け加え、これらを踏まえた海洋戦略が米国にとって適切だと結論付けている。
     なお、ペルシャ湾やスエズ運河がインド洋の、台湾や朝鮮半島が南シナ海の範疇で記述されているのには違和感を覚えるが、大きく分ければそうなるのだろうか。

  • 太平洋、大西洋、インド洋、地中海、南シナ海、カリブ海、北極海にまず歴史をおさらいする、地中海では特に古代からナポレオンまで続くの戦闘の歴史、大西洋では、アメリカ合衆国が独立するにあたっての海の果たした役割、その丘は主に現在の地政学的状況に焦点を当てる。現在では、中国の圧倒的台頭、ロシアの復活というのに対し、アメリカがそのシーパワーの能力を政治が点から拡充の提言を行う。それは、軍備増強だけではなく、TPPに代表される友好国との連携の強化、ソフトパワーの拡充、グローバルコモンズたる世界の海洋の環境、治安の強化を行う。過去現在あらゆる地域に目の行き届いたバランスのとれた海から見た過去と現在の政治。

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著者プロフィール

ジェイムズ・スタヴリディス Admiral James Stavridis
1955年生まれ。アナポリス海軍兵学校を卒業後、海軍へ入隊。複数の駆逐艦や空母打撃群の指揮を執り、7年にわたり海軍大将を務める。
2009年にNATO(北大西洋条約機構)欧州連合軍最高司令官。
2013年より5年間タフツ大学フレッチャースクール学長を務めた。
「第二次世界大戦以降、米海軍でもっとも頭脳明晰であり、もっとも優れた戦略家」ともいわれている。
著書に『海の地政学』(早川書房)などがある。

「2021年 『2034 米中戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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