- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152098788
作品紹介・あらすじ
15歳のウィルは射殺された兄のかたきを討つため、銃を持ってエレベーターに乗り込んだ。自宅のある7階から地上に到着するまでの短い時間に彼が出会う人々とは……ポエトリーとタイポグラフィを駆使する斬新な手法で文芸賞を席巻した注目作、ついに日本上陸!
感想・レビュー・書評
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おととい兄のショーンが銃殺された。「掟」に従ってぼく(ウィル)は復讐する。ショーンの引き出しから銃を見つけ、ジーンズの腰に押し込む。殺したのはきっとリッグスだ。
アパートメントの8階からエレベーターに乗ると、7階から男が乗ってきた。それはショーンの兄貴分の亡パックだった。6階からは幼馴染の亡ダニが、5階からは亡マーク伯父さんが……。
各階で止まるエレベーターに乗り込んでくる身近な故人たちとの関わりを通して、短絡的な復讐の愚かさに気づいていく少年の物語。
*******ここからはネタバレ*******
横書きで、詩の形で綴られるこの物語は、情報が断片的でパズルを解くように真実が明かされていきます。
ショーンの兄貴分のパックは強盗で、ショーンに16発入った銃を渡した。
幼馴染のダニは、8歳の時ウィルとキスした日、撃たれて死んだ。
マーク伯父は、「結晶」の売人になって撃たれ、
父さんは、マーク伯父さんを殺した(と思った)やつを殺したせいで殺され、
フリックはパックを脅すつもりで殺してしまい、
ショーンは、パックの銃でフリックを撃った(これが減っていた1発分)。
いやもうここまで来ると、誰がどう読んでも、その虚しさに呆れることだと思います。
やっと1階に到着して皆が降りていく中、沈黙を通していたショーンの一言が効いていますね。
「おまえも 来るか?」
刺激的だけれども、復讐の愚かさや銃や短絡的思考の危険性を気づかせるには充分な内容です。
私としては、詩の形となっているところが読みにくく感じましたが、だからこその風情もあるので否定はしません。
生死を扱うので、しっかりした中学生以上におすすめします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
兄の復習を果たしに行く弟のエレベーターでの不思議体験。文章の書き方が独特だが、それがかえってわかりやすくてよかった。
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不思議な話だった。詩とも物語とも、どっちにもつかない話だった。悪い性質を持つ血統のせいなのか、性質を養った悪い環境のせいなのか。連鎖が少年を悩ませている。道を踏み外す少年たちにも、彼らなりのロジックがあるのかな。悪い連鎖が断ち切られることを祈る。
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兄のショーンが銃で殺された。15歳のウィルは、ショーンの洋服タンスにあった銃をベルトにはさんでマンションの下りエレベーターに乗った。掟に従ってショーンを殺したやつを殺しに行くのだ。
8階から乗ったエレベーターは、各階で止まる。そして誰かが乗ってくる。ウィルの知ってる人ばかりだが…
銃社会がいまだに続くアメリカ。その犠牲になるのは、貧困にあえぐ人たちばかり。そんな社会の悲しさを訴えかけている。 -
兄が殺された。掟に従い、殺したやつを見つけ出し必ずそいつを殺さなければならない。兄の銃。殺ったのはきっとあいつ、あいつに違いない。銃を持ってエレベータを降りる。エレベータに現れる、身近な死者たち。連れ、幼馴染、伯父さん、父さん、ギャング新入り、そして兄さん。お前も来るか?
どんな世界に暮らしていたのかが、だんだんわかってくるのですが、皆若くして死んでしまう、そんなことしていたら当然でしょ、な。クリスマスキャロルだ。 -
詩のような文体でレイアウトも凝っているとのことで興味を持って読みました。
個人的にこのテーマ、内容は、映画や本でわりとなじみがあるため新鮮みはなかったのだけれど(というと語弊があるが)、寓話風の設定がどこかクリスマスキャロルのようで、次は誰が乗って来るのかと面白く読めた。
主人公(16歳?)の語りは読み進めるほど意外と抑えめな印象を受けた。もっとやんちゃで砕けた口調にすることもできたのだろうけれど、このビジュアルでそれをやってしまうと、ポップになりすぎて読みにくくなりそうな気もする(そういう翻訳物を読んだ経験あり)。だから、あえての抑制なのかな。さらっとニューベリー賞受賞って書いてあるけど、ちゃんと司書さん等の目に留まり、日本の中高生に届くといいのだが。 -
兄を殺された弟の復讐譚かと思いきや話は意外な方向に。エレベーターが降りていくごとに話は進み、悲しみや切なさが深くなった。最後の問いかけに弟はどう答えたのだろう。まだ答えは出ていない。
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世にも奇妙な物語的な。短編映画的な。ハッとするラスト。