標本作家

著者 :
  • 早川書房
3.07
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本棚登録 : 260
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152102065

作品紹介・あらすじ

西暦八十万二七〇〇年。人類滅亡後、高等知的生命体「玲伎種」は人類の文化を研究するため、収容施設「終古の人籃」で標本化した数多の作家たちに小説を執筆させ続けていた。不老不死の肉体と願いを一つ叶えることを見返りとして——人類未踏の仮想文学史SF

感想・レビュー・書評

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  • すみません、標本作家(生物などの標本を作成する人とかTaxidermistとか)が出てくる本かと思って、タイトルだけでわくわくと読み出してしまった、全く違う!!(笑)
     標本なのは人間で、8027世紀、西暦802700年人類は滅亡、地球世界は朽ち果て寸前、玲伎種という宇宙人というか、人間ではない存在が、人間種の中でも人間世界的超有名小説家を標本としてコレクトしていて、不老不死というよりも、なんか私には想像もつかないようなデジタル技術のナナメ向うから降ってくるようなテクノロジーで延々と再生させられるというか、データの存在になってるというか、そんな復元された有名作家に小説を書かせ続けている、というような話。そんなもん、かけるかいな、、。800000年やで、、おんなじパーソンで似たような体験と経験をし続けて、創作し続けるて、どんな拷問を考えだすんよこの作家は!と、思いながら読み始めたが、まあ、実在の有名作家の名前をちょいもじっただけで(検索されても大丈夫なアレか?!ちがうけど、笑)、その作家の作風とか考えると、やっぱり拷問だわ、と、存外これはSFホラーなのでは?と感じて読んでいた。ホラーやねぇ、、。時間牢獄的な何か。
    ワイルドはともかく、作家チョイスが私のツボとかなり違うというか、趣味の違いがあり、そこらへんが微妙にいれこみづらくなったというか、ここはあの作家にしてほしかった、、、という「ぐぬぬぬ」感というか、このハズしぐあいが絶妙かもしれんが、、まあ、ゆうても高校生の頃に読んでたら、めっちゃ好き!って思ったはず。
    高校時代の私の好みのSFで
    現在の私には結構ホラーだった。

  • この作品は文学というか小説好きな方からすると賛否両論ありそうだなと思いつつ、個人的には大いに「賛」でした。面白そうと感じるものは読んでみたく種々雑多が平気な上に、有名作家の代表作を完読しているわけではないので、今作の物語はとても楽しめた。小説を書くことと読むことをここまで壮大な物語に仕上げられると否が応でものめり込んでしまう。

    舞台は西暦80万2700年の人類滅亡後の地球。高等知的生命体「玲伎種」は文化の研究のため多くの小説家を標本として再生する。収容施設内で作家達は執筆を続け、巡稿者メアリ・カヴァンは書き上げた作品を纏める。

    前半は主要作家(実在作家をベースにした偽名キャラ)の人物像や作品が描かれていて、作家それぞれの書くことへの思いと各作品の書評のようで、興味深く楽しめた。その後はメアリの願望や苦悩、人間に対する心の持ちようなどか詳らかになり、そこからは一転して穏やかならざる展開になる。この辺りも読み応えがあり、どんな結末になるのかと惹き込まれていく。劣等感や自己否定が強くても、他者の犠牲の上に成り立つエゴや欲望を持ち合わせるのは少し分かる。無意識の狂気にも感じるが純粋な愛のようにも思う。最後にメアリは満たされたのだと思うと、なんだか読んでいるこちらも救われたような気持ちになった。

    冷めやらぬうちにアンナ・カヴァンの小説を読もう。

  • 人類の滅びた遠い未来で、謎の球体関節生命体に復活させられた各世代の作家(小説家)が共著を仕上げているという設定がまずぶっ飛んでいます。出てくる作家は過去の作家はモデルがいて、複雑な絡みがなかなかに興味深く、会話が中心の前半はかなり楽しく読み進められました。後半はかなり重い雰囲気で、文章も敢えてでしょうが段落がなく、文字を詰め込むだけ詰め込んだふうで、読み疲れてしまいましたが、今後に期待したいなと思えました。

  • とても面白かった。SFが苦手な私だが、この作品は文系の人向けと言っていいのかも。ただ、私自身きちんと読めているとはとても思えず、モデルになった作家たちも知らない人が多く、それでも楽しめたと言わせていただいていいだろうかと控えめに…
    GWの読書としては最高だった。

  • 人類滅亡後、知生体により再生された10人の英国の作家たち、不死処置を施され収容施設で、異才混淆という名の共著の執筆を続ける。原稿をまとめる、読者でもある巡稿者が、共著をやめひとりで書くことを提案する。

    はるか未来という状況を作って、過去の作家・作品への愛を語る。作家にとっての読者の存在の重要性もほぼ並列に語られているところが興味深い。

  • SFという舞台装置を使用した創作論であり、作家論であり、読書論でもある壮大な物語。
    含蓄がある文章と緻密な構成、高いリーダビリティから作者が丹念にこの作品を手がけたことが伝わってくる。
    "読む"という行為の「欲望」や「危うさ」を、そのまま小説のテーマとしており、作者と対話するように読むことで、読書の面白さや豊かさ、そして不可解さや虚しさを心に打ち付けられる。

  • ハヤカワSFコンテスト大賞作ということで
    読んでみました。
    俺はこういう何かの賞の受賞作とか大好きなのだ

    さて、感想だが、
    これはSFなのか

    Fがずいぶん強いような

    でも、この世界観はよく考えつくな
    と感心した

    最初は面白かったんだけど、
    だんだん、よくわからなくなってった印象

    十傑も多く感じた
    七くらいで切り上げてほしかったかな

    動画を2倍速で観る時代だからね
    もう少しシェイプアップして
    テンポよくしても良かったかな

    正直、万華鏡がどうたらとか言うところは
    ようわからんなと思っていたのだが、
    選評で、そこがダイナミックだったと指摘している方もいて、

    ええっ、そうなん!?

    と、そこが一番印象に残った

    読むのにめっちゃ時間掛かったし、
    特に読書になれていない人にはオススメはできないかな

  • 面白い、という言葉ではまとめきれない、切実な想いが大切に詰められた一冊でした。小川さんの本を、これからも一読者として(仲間意識を勝手に持ちながら)、手に取りたいと思う作家さんでした。あの、本当に応援してますと、手を取って、ぶんぶん振って、伝えたい、と思っています。

    第10回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作、そのタイトルに惹かれて手を取ったのだけれども、ある意味SFであり、ある意味全然SFらしくない作品でした。有名どころの本は手に取ってきた、と思っている本好きの方すべてが"楽しめる"本だと思います。本を愛している人に安心してお勧めできます。なぜなら小川さんはこんなにも本を"愛している"のだというのが痛いくらいに伝わってくるから。

    一方、"楽しめる"と、クオテーションマークで囲ったのは、主人公であるメアリの内実が語られるところから、だんだん話が切実になっていくからです。その切実さが、一人の肉体を伴った人物の悲痛な声で、その声に私自身もわかるなと思うところもあり、誰しもそういう悩みを抱えているという、本を通じて得られる連帯意識を、今までの歴代の作家と同じく、感じることができました。これはまさしく「本」なのだと思います。

    話の筋や、その説明の仕方など、すんなり読めなかったところもあるといえばあるけれど、それを上回る本への愛や、書く・創作するということに対する想いが熱く伝わってくるので、作家も一人の人間なのだと目が覚めるようでした。
    作中にもありましたが、たいして力を入れずに不真面目に世の中に送り出されている本も沢山あるでしょうし、世の中にあふれる消費文化の色が強いものに晒され続けると、どうしても世界に対する構え・否定というをベースに物事を判断・批評してしまうのですが、彼ら彼女らも一人の人間で、日々悩み・変わり生きているのだということを忘れかけていたように思います。

    本の最後の謝辞を読めば小川さんご自身の人となりが伝わってきて、このまっすぐな人を応援したいと思いました。いつか出る次回作も楽しみです。

    巻末に付けられていた「主要参考文献一覧~または、33+Ⅷを42にするための、最後の一項目~」を順番に読み直すのも良いかもしれない。(オスカー・ワイルドは福田恆存の訳でなくちゃ、と思う自分を封印して)

    以下作品の内容に関すること***
    ・現実に存在する作家をモデルにしている登場人物は、主要登場人物は名前が置き換えられている一方で、ディケンズや三島など(よかった言及されていて笑!)は実名である違和感笑。全部置き換えたら言及のみの作家は誰か誰だかわからないけれど、それなら文人十傑は本名ではダメなの?と思ったり。小川さんであるだろう主人公に、尊敬するカヴァンと自分で名乗らせたいという、オタク心?故なのかしら
    ・カヴァンの『氷』に出てくるイメージのまんまの舞台なので、むしろすごいと思いました。し、カヴァン読んだことない人は絶対読んでください!!と太字で言いたい
    (・あと私はイシグロのイメージにも通じるなと思いました)
    ・そして太宰治、好きなんだなあと。私は思春期にそこまで太宰にハマらなかった口だけど、太宰好きです!!の熱い思いが伝わってきて、また読んでみようかと思いました。オタクの(熱心なファンの笑)純粋なプレゼンで興味持つよね
    ・最後の文献一覧を見ても、今回主たるキャラが、オスカー・ワイルドだったことを見ても、小川さんの趣味が自分のそれと近いので、次回作以降も信用できるなあと思います。耽美主義同盟
    ・読了感は少し不思議で、この本に圧倒された感は、実はあまりありません。でもなんだか、この本は自分の心の片隅にしっかり居場所を見つけて、ふと思い出す切なさや愛おしさの象徴になる気がしています。圧倒された作品でも「すごいものに出会ってしまった」とその時は思うのだけど、心に残り続けるわけではないので、そういう意味では、この本の方が「すごい」もの、なのかもしれない
    ・ああ本が読みたい、本が読みたいと、そういう気持ちがふつふつとわいてい来る、そんな読了感です。純粋に楽しむ、愛するということへのピントがいつの間にかずれていたことに気が付きました
    ・まとめると、この本に出合えてよかった!です

  • これSFってより純文学だよお!とんでもない量の文字の暴力。最初の説明が長いので、そこを耐えられるかどうかが勝負。作家、読者、人間のエゴみたいに焦点があたっていくにつれ、展開が良くなっていったように感じた。

  • こんなSFがあってもいと思う。自分は好きです。
    主人公とその相手?は最高にブロマンスでした。

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