インドの食卓: そこに「カレー」はない (ハヤカワ新書)

著者 :
  • 早川書房
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153400160

作品紹介・あらすじ

日本人にもおなじみの「カレー」は、イギリスが植民地時代のインドに押し付けた概念である。インド人は「ダール」「サンバル」「コルマ」と細分化して呼ぶのだ――南アジア研究者がインド料理のステレオタイプを解きほぐし、その豊穣な食文化世界を案内する

感想・レビュー・書評

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  •  著者は南アジア研究者だが、本書では食べる側の視点であり、読んで楽しい。紹介された色々な食をぜひ試してみたくなった。
     粉食か米食かという南北差、また宗教に伴う禁忌の食肉程度の知識はあったが、自分の予想よりも遥かに多様だった。アイデンティティと直結する食。ベジ自体も一般的でありながら多様。果物やスイーツはかなり魅力的。花椒が入らない「シェズワン」をはじめインド式中華、チベットや東南アジアとも共通する料理も面白い。

  • ・唐辛子やカシューナッツは外来の種で、もともとインドにはなかった。ポルトガル人によってもたらされたため、ゴア産のカシューナッツは高級とされる。

    ・ムガル帝国(ペルシア語でモンゴル)時代の統治にペルシア人官僚が多かったことで、プラオから派生したビリヤニが生まれた。
    ・キーマもペルシアの食文化だ。暑さ厳しい場所では食肉をすぐに調理しなければならない。肉をそのまま焼くと硬くなるので、挽き肉にした。
    ・この流れが、宮廷料理となる「ムガライ料理」のベースとなる。

    ・バターチキン発祥の店、モティーマハルの店主はもともとパキスタンで食堂を開いていた。
    ・タンドリーチキン(これも発案)が日によって余りが出る。硬くなったチキンをフードロスの観点からソースと混ぜて作ったのがバターチキン。
    ・パキスタンが分離独立していなければ、タンドリーチキンもバターチキンも生まれていなかったかもしれない。

    ・甘さが特徴のインド料理といえばグジャラート州。「カッティミーティ」は「甘酸っぱい」を意味するグジャラート料理を形容する定番表現だ。

    ・ベジタリアンにも分類がある。完全菜食のピュアベジ、卵はOKのエッグダリアン、曜日限定型ベジタリアン。
    ・何を食べるか、何を食べないかがアイデンティティとなる。
    ・ジャイナ教徒の92%、ヒンドゥー教徒の44%がベジタリアン
    ・肉食禁止の前提は「不殺生(アサンヒー)」の思想である。生き物を殺さないだけではなく、すべての生物に危害を与えないことを意味する。

  • いわゆるグルメ本とは異なり学者さん的の分析しており角度の違う情報が得られます 途中難しく飛ばして読んだりしましたが、貴重な情報がありましたら

  • 読んでてお腹すいた本。
    カレーだけじゃなくて、インド関連の食事の話。
    インドへ行ったら「毎日カレーなの?」って聞かれる質問に、著者も戸惑ってる感じが共感できた。カレーって言っても色んな種類があって、インドのスパイス使った煮込み料理のことをカレーって総称してるだけで、っていうめんどくさい回答を堪えて「毎日カレー食べてた」って答えてるところが特に。
    インド中華についても書かれてて、そういえばメニューの端っこに炊麺とか書いてあったのを思い出した。インドでも中華が根付いてるんだな〜。インドだけじゃなくて中華パワーも侮れない…笑
    個人的にはRRRのくだりや、インド旅でトラウマ級に甘かったグラブ・ジャムンの話も出てきて、一緒に旅した友達へ勧めたくなった。

  • 日本でイメージするカレーとは異なるインド料理のカレー。その別物と思われる料理の真実と日本に馴染みのあるさまざまなインドカレー、日本で広がるインド料理屋を事細かく解説している。多様化する日本のインドカレーのルーツが分かる。

  •  インドの本当の食事事情、日本に渡ったインド食の歴史等。

     インドでカレーという食べ物はなく、日本語の感覚でいえば出汁が近い。さらに、日本全国至る所にあるインド風のカレー屋はネパール人がやっている北部インド料理に近いものであり、主流のインド料理とは違う。
     では、本場のインド料理はどんなものか。さらに、日本にラーメンがある様にインドにも中華料理が独自に進化したインド中華もある。それらの本当のインド料理が食べれるお店の紹介まで。
     本当のインド料理屋さんを探す為に読んだ本だが、歴史や背景も知れて楽しめる一冊だった。

  • 『#インドの食卓』

    ほぼ日書評 Day757

    副題に"そこに「カレー」はない"とあるので、インド料理を様々に分類する内容かと思いきや、インドの政治史や日本との関わりにまで踏み込む、なかなかに濃い内容。

    著者は大使館勤務でインドやパキスタン方面にも長らく駐在した人で、現地事情にも通じているが、最終章で帰国前後(2000年代後半あたり)で、我が国におけるインド料理屋事情が様変わりした様の記述は、食通の方はそのパートだけでも読む価値がありそうだ。

    追認も含め、参考になりそうなネタをいくつか。

    インドでは、ある意味、ベジタリアンがノーマルで、肉食は「ベジでない」という言い方をする。

    中村屋のカリーと、東銀座のナイルは、ルーツをインド独立の民族活動家つながり。

    冒頭の国内インド料理事情。南北に加えて、東西のバリエーションも増えている。ベンガル料理とか、はたまたガチ・ネパ(ネパール人のやっているインドではなく、ガチのネパール)とか。さらに現地にはインド中華というカテゴリもあり、西葛西あたりでオーダーすると、作ってくれる店もある(日本でも天津飯とかエビチリとか独自の"中華"があるように、独特の進化を遂げたものらしい)。

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  • インド史に精通した著者。頻繁に現地で過ごしているため、鮮度の高く正確で多角度からの視点で解説。

    本の主題はタイトルの通りだが、具体的で曖昧にしない解説が貴重。掲載写真も的確。

    読了35分

  • ヨーロッパ人のインド食文化概念→「カレー」の発明 インド料理ができるまで:高気温→殺菌効果のスパイス 唐辛子・ナッツはアメリカ新大陸から バーブルの食レポ フマーユーン・ビリヤニ 英国人・カレー粉 インド料理の誤解:モーティー・マハル タンドリーチキン→フードロス回避→バターチキン ナーン文化圏 ローティとチャパティー コルカタ・ビリヤニ 印度家庭料理・レカ 肉かベジか;マハラジャマックーチキンorベジ ベジタリアン・5億人・8種類 浄と不浄 ドリンク・フルーツ・スイーツ― インド中華料理 インド⇔日本

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著者プロフィール

1976年愛知県生まれ。岐阜女子大学南アジア研究センター特別客員准教授。中央大学総合政策学部卒業後、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科で修士号取得。在中国、在インド、在パキスタンの日本大使館で外務省専門調査員として勤務。著書に『インパールの戦い』(文春新書)、『モディが変えるインド』『インド独立の志士「朝子」』(以上、白水社)、共著に『軍事大国化するインド』(亜紀書房)、『台頭するインド・中国』(千倉書房)、訳書に『日本でわたしも考えた』『アメリカ副大統領』『シークレット・ウォーズ(上下)』『ネオ・チャイナ』『ビリオネア・インド』(以上、白水社)、監訳書に『日本軍が銃をおいた日』(早川書房)などがある。

「2022年 『インド外交の流儀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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