人間はどこまで家畜か: 現代人の精神構造 (ハヤカワ新書)

著者 :
  • 早川書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153400191

感想・レビュー・書評

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  • SNSで目に入った書評を見てきっとおもしろいと思って、さっそく入手。
    人はこれまでにいろいろな動物を家畜化してきたというのはわかっていたが、自らも家畜化しているという視点はなかった。でもたしかに、自然から切り離された、清潔で計画的で道徳的な生き方は"家畜化"なのだなぁ…。「社畜」のような表現もなかなか的を射ているということか。
    この本では、自己家畜化を必ずしも悪いこととはきめつけず、ゆるやかな進化の過程としてはある意味当然の変化だととらえつつ、社会や文化の設計がこのゆっくりした変容がおいつかないこと急なことで生じる問題などを検討している。

  • 人類は自己家畜化を図ることで社会の豊かさや清潔さを求めてきたが、それに伴い動物的な側面は切り捨てられている。

    例えるなら、ドラえもんでいうのび太(授業に集中できない子供)やジャイアン(暴力をはたらく子供)は治療や排他の対象になった。

    過剰な自己家畜化とそれに取り残される人々という現状把握。
    更にそこからの未来予測。

  • 【書誌情報】
    『人間はどこまで家畜か――現代人の精神構造』
    著者:熊代 亨[くましろ・とおる] (精神科医、評論家)
    出版社:早川書房
    レーベル:ハヤカワ新書
    価格:1,078円(税込)
    製造元:09759781
    ISBN:9784153400191

    ◆精神科医が「自己家畜化」をキーワードに読み解く、現代の人間疎外
     清潔な都市環境、健康と生産性の徹底した管理など、人間の「自己家畜化」を促す文化的な圧力がかつてなく強まる現代。だがそれは疎外をも生み出し、そのひずみはすでに「発達障害」や「社交不安症」といった形で表れている。この先に待つのはいかなる未来か
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015735

    【簡易目次】
    はじめに
    序章 動物としての人間
    第1章 自己家畜化とは何か―進化生物学の最前線
    第2章 私たちはいつまで野蛮で、いつから文明的なのか―自己家畜化の歴史
    第3章 内面化される家畜精神―人生はコスパか?
    第4章 「家畜」になれない者たち
    第5章 これからの生、これからの家畜人
    あとがき──人間の未来を思う、未来を取り戻す

  • 犬や猫は自己家畜化した動物。自ら家畜になった。人間も同じ。
    動物園の動物に似ている。動物園の動物は繁殖ができない。ホッキョクグマは、半年以上生きられたのは122頭中16頭。
    自己家畜化とは、人工的な環境でより穏やかで協力的な性質に自らを変化させること。
    『暴力の人類史』によれば、人間の暴力性や衝動性が減ってきている。
    現代人は理性的で合理的、感情が安定しているように強制されている。それができない人が精神病になるのではないか。
    アナール学派=社会が変わるとルールや生活習慣だけでなく感情や感性まで変わる。

    家畜化したギンギツネの実験。攻撃性が少ないキツネを交配することで、13代でペットとして買えるほどになった。
    その特徴は、小型化する、顔が平面的になり前面への突出が小さくなる、犬歯など歯は小さくなり顎が小さくなる。性差が小さくなる。角が小さくなる、脳が小さくなる、繁殖周期の変化。
    ホルモンの変化で攻撃性が少なくなる。白い斑点ができるのはホルモンのせい。色素を作るメラノサイトが端まで移動できず、尾の先端や足の体毛が白くなる。副腎の大きさも機能も小さくなり、感情的情動的反応が穏やかになる。象牙芽細胞が少なくなり歯が小さくなる。脳の成長が遅れて小さくなる。性ホルモンが変化し、発情期や生殖サイクルが変わる。
    人間にも自己家畜化が進んだ。歯、口、顎のサイズが時代とともに小さくなる。人類は火をあやつることで大きな脳を持てるようになった。消化率がよくなった。ホモサピエンスはネアンデルタール人より脳が小さくなった。脳の使い方が変化した。攻撃性が減って野生動物としての感情的な反応が低下した=穏やかな感情を身につけた。野性的な脳から家畜的な脳へ変わった。文化がヒトを進化させた。動物と穀物を養うと同時に人間も家畜化されたのではないか。
    人類は唯一の耐火種である=火を見て温かい気持ちになるおは人間だけ。
    攻撃性は反応的攻撃性と能動的攻撃性がある。セロトニンのおかげで、反応性は減ったが、能動性は減っていないため戦争はなくならない。

    子どもは「7つ前までは神のうち」死亡率が高い。
    かつてはいつ死ぬかわからないという死生観を持つしかなかった。飼いならされた死。

    資本主義の定着で、社会契約の遵守が重要になった。
    いつ死ぬかわからない死生観では、資本主義は成り立たない。社会契約の中で資本主義や個人主義という思想通りに生きることを余儀なくされている=新自己家畜化。

    現代の精神を病む人たちは中世では英雄だったのではないか。
    ADHDやASDはスペクトラム的な疾患概念なのため、境目ははっきりしない。有病率は3%、4%とされている。
    文化的な自己家畜化についていけない人が精神医療にかかる。
    ナチスドイツは、向精神薬で恩恵を受けて、最後は弊害とともに崩壊した。
    成功同意書は、性行為の領域に功利主義や社会契約のロジックを導入するツール。自由を尊重するようにみえて、自由を管理させるものではないか。
    自己家畜化はゆっくりした変化だったが、文化的な自己家畜化は急速で、恩恵のほかに疎外を生み出している。

  • 時代によってまともな人、社会不適合な人の基準は変わってくるというのは言われてみればその通りだな。

    戦国の世なら活躍できた人でも令和の世なら犯罪者かもしれないし、令和の世でそれなりに成功しているインフルエンサーも江戸時代に生まれたら口先だけの人として誰からも相手にされないかもしれない。

    ”人間が作り出した人工的な社会・文化・環境のもとで、より穏やかで協力的な性質をよう自ら進化してきた、そのような生物学的な変化のこと”という意味である(本書ではこう定義すると14ページにはかかれていた)自己家畜化について、もっと知りたくなった。

    新書なので触りにしか過ぎないだろうが、入門としてはピッタリなのだろう。

  • 人間が衝動的な暴力を集団的な暴力によって排除抑圧し秩序を保つことで、統計学的な生存率を高めるという生存戦略を取ってきたとする進化生物学の自己家畜化の議論から始まる。しかし、本書の中心的なテーマは生物学的自己家畜化ではなく、文化的な自己家畜化と筆者が呼ぶものだ。生権力の議論を自己家畜化という言葉で語り直していると言える。

  • 2024-03-30
    思っていたのとは逆に、家畜になれないものを家畜にならず主体的である方向の議論が読みたかった。どうすれば家畜になれるか、を模索した内容。たぶん家畜という言葉のイメージ(使役者がいる)のせいで、どうもスッキリしない。提示される未来予想図も両極端。
    どうせなら、自己家畜化をおしすすめてなお

  • 一緒に読むとよさげ

    過防備都市 (中公新書ラクレ 140) https://amzn.asia/d/i0pqTqY

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著者プロフィール

1975 年生まれ。信州大学医学部卒業。精神科医。地域精神医療に従事する傍ら、ブ
ログ『シロクマの屑籠』にて現代人の社会適応やサブカルチャー領域について発信
している。
著書『ロスジェネ心理学』(花伝社)、『「いいね!」時代の繋がり』(エレファントブッ
クス新書)、『「若作りうつ」社会』(講談社現代新書)

「2014年 『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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