虚栄の篝火 下

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163124803

作品紹介・あらすじ

多層化した現代は、もはや文学の手にあまるのか。ニュージャーナリズムの旗手トム・ウルフが、あえて小説の形式を選んだ答がここにある。21世紀文学の方向を示す野心的大作。

感想・レビュー・書評

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  • ウォール街のミリオンプレイヤーである主人公は、愛人との逢瀬の車中、ダウンタウンで黒人青年を相手にした人身事故を起こす。男女はその場から逃走するが、一事が万事、二人は追い詰められていく。
    事件は、超エリートによる最底辺の貧困層に対する横暴とも写り、また白人による黒人に対する蛮行としても捕らえられる。被告は高いステータスゆえに、社会の憎悪を一身に受ける身となる。報道が加熱を極め、事件はマイノリティ団体によって反特権階級闘争の道具として利用され、はたまた人種問題も孕み一大スキャンダルへと膨張してゆく。いわゆる「炎上」だが、炎が怪物的に燃え広がる様が、生き物を見ているようで恐ろしい、小説として見事。
    社会的ヒステリーとも云うべき状況を描いて、非常に迫力がある。また大事な点だが、ストーリーが練られており、終盤まで強く引き込まれることは請け負える。被告、検事、記者、それぞれの視点から事件が追われるが、立場それぞれに欲望にまみれ、倫理面から照らせばどこにも救いは見当たらない。つまらぬカタルシスはない。
    アメリカ的な特殊状況とも云えようし、我が身に迫る問題として読むことも(残念ながら現代日本は)可能だろう。

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