陸軍参謀: エリート教育の功罪

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  • Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163425108

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  • 1988年刊行で少々古いが、大変有益かつ興味深い書籍である。著者は陸軍士官学校在籍中に終戦を向えた人物であるが、外交(著者は「軍事」と言うが、軍事は狭義の外交である)を理解した政治家が行うシビリアンコントロールの重要性、軍人の政治介入の問題点を鋭く指摘した書である。また、陸軍の昭和時代の軍閥抗争も十分ページを割き、永田鉄山の暗殺を嘆くことしきりである。本書は是非に多くの人に読んでもらいたい。気になった点を幾つか挙げておく。
    ①陸軍は昭和期には数カ国との戦争を想定していながら、戦略検討は対ソ一辺倒であった(片倉談)にも関わらず、中国のゲリラ戦のみならずソ連のパルチザン戦法・ノモンハン事件に関しても検討不十分であった。②陸軍は、情報と後方兵站面を消ししし、戦争(国防)と作戦の混同が顕著。この傾向は石原莞爾が作戦部長になってから一層顕著(飯村穣談)。
    ③蒋介石が重慶爆撃中、「日本の誰と和平交渉すればよいか?」と尋ねたところ、「大佐・中佐・少佐です。」との返事があり一同笑いに包まれたこと(幕僚と交渉しなければならず、国家統制の体をなしていないことを皮肉るもの)、④東条はもとより、小磯首相時においてですら、国務と統帥の統合に陸海軍はそっぽを向いていた。⑤陸大の個別戦の戦術教育は必ずしも悪くはないが、外交シュミレーションをさせなかったのは最大の悪。
    ⑥陸軍の人事において信賞必罰は実現されていなかった。特に、辻・牟田口はどうにかしようがなかったのか。もっとも、その原因が石原らを満州事変後、処断しなかったことにあり、さらには、河本大作を張作霖爆殺事件で処断できなかったことが遠因といえる。結局、陸軍の隠蔽工作と田中義一の不徹底がとことんまで祟ってしまったように思える。

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