プーさんの鼻

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163675404

感想・レビュー・書評

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  • 若山牧水賞受賞作品。
    俵万智さん40代の初めの頃の歌集。


    作者あとがきより
    八年半ぶりとなるこの歌集には、子どもの歌が圧倒的に多い。ちょっとどうかと思うほど、たくさん作ってしまった。同じ素材、同じテーマで、こんなに作ったのは初めてのことだ。
    いや、同じ素材でありつづけないから、作らされてしまう、と言ったほうが正確かもしれない。
    子どもは大げさでなく、一日一日変化してゆく。
    その存在に振り回される日々の中で、なんとか自分の心を、言葉で追いかけてきた。
    たぶん短歌でなかったら、できなかったと思う。子育ては、驚きと慣れの連続だ。一度慣れてしまったら、はじめの驚きの感覚は失われてしまう。それはそうでなかったら、前へは進めないわけで、子どもが歩くことに毎朝感動している親はいないだろう。だからこそ初めの一歩の驚きを逃さずに三十一文字に刻みたいと思った。
    ー以上作者あとがきより抜粋


    俵さんはお子さんに普通の親が何度もカメラのシャッターを切るような調子で三十一文字を刻んでこられたのだと思いました。
    カメラとはまた違う表現手段でご自分と息子さん、他のご家族の気持ちまで刻むのだから、短歌ってすごい!
    短歌の魅力が改めてわかった気がしました。



    ○夕飯はカレイの煮つけ前ぶれを待ちつつ過ごす時のやさしさ

    ○どこまでも歩けそうなる皮の靴いるけどいないパパから届く

    ○もう会わぬと決めてしまえり四十で一つ得て一つ失う我か

    ○新生児ふかふか眠る焼きたてのロールパンのごと頭並べて

    ○バンザイの姿勢で眠りいる吾子よ そうだバンザイ生まれてバンザイ

    ○ひざの上に子を眠らせて短編を一つ読み切る今日のしあわせ

    ○生きるとは手をのばすこと幼子の指がプーさんの鼻をつかめり

    ○フリージア、スイトピーなど飾れるに子はまずつかむ白きかすみ草

    ○一分まとめて進む長針がひた、ひた、ひたと迫るさよなら

    ○軽々と肩車されしはしゃぐ子よそれが男の人の背だよ

    ○たんぽぽの綿毛を吹いて見せてやるいつかおまえも飛んでゆくから

    ○自分の時間ほしくないかと問われれば自分の時間をこの子とすごす

    ○ブーケストおどけてキャッチする我の中で何かが泣きそうになる

    ○何度でも呼ばれておりぬ雨の午後「かーかん」「はあい」「かーかん」「はあい」

    • まことさん
      アテナイエさん、こんばんは♪

      コメントありがとうございます!
      短歌を読むようになってから、まだ3年くらいですが、俵万智さんは、とても好きな...
      アテナイエさん、こんばんは♪

      コメントありがとうございます!
      短歌を読むようになってから、まだ3年くらいですが、俵万智さんは、とても好きな歌人だと思っています。
      『サラダ記念日』を改めて読み直してみると、誰にでもできそうにみえて、実際は誰にもできない凄い歌を詠まれる方だと思いました。
      俵さんと、同期の歌人の穂村弘さんは、スタイリッシュで、カッコいいですが、私は、誰にでもわかる優しい歌を詠まれる、俵さんが好きです。

      私も実は、今年の春から短歌を作り始めましたが、まず、作って初めに俵さんが選者を務められる読売歌壇に投稿しました。結果は、まだ何もありませんが。
      そのせいもあって、俵さんの歌集を読んでいます。
      俵さんとは、世代も近く、今、短歌界の主流らしい、甘くてホップな歌より、俵さんの直球ど真ん中だけど、俵さん以外には、詠めない歌が大好きです♪。
      2023/07/23
    • アテナイエさん
      まことさん、こんばんは。

      はっぱり、俵さん、お好きだったのですね。
      誰にでもその情景が目に映るような歌ばかりで楽しいです。
      まこと...
      まことさん、こんばんは。

      はっぱり、俵さん、お好きだったのですね。
      誰にでもその情景が目に映るような歌ばかりで楽しいです。
      まことさんは短歌の投稿もされているのですね、すばらしいです!
      結果に焦らず楽しんでいただきたいです(^^

      それと先日の料理レシピも、またまた楽しく拝見しました。
      お料理が上手なまことさんのお勧めレシピ、さっそくチャレンジ
      してみようと思います。

      じつは塩もみキャベツの各種レシピが大活躍しています。
      コールスローも春雨炒めも最高で、餃子も作ってみました。
      どれも簡単で美味しいです(^O^)
      まさに塩の塩梅がジャストですね。
      2023/07/23
    • まことさん
      アテナイエさん、おはようございます♪

      俵万智さんは、好きというか、もう尊敬する歌人です。
      読売歌壇は今朝も見たのですが、載ってなかっ...
      アテナイエさん、おはようございます♪

      俵万智さんは、好きというか、もう尊敬する歌人です。
      読売歌壇は今朝も見たのですが、載ってなかったですが(^^;。

      料理は私は上手ではありません。
      上手な方は料理本なんか見ないで、ちゃっちゃっとされると思います。
      あんかけ焼きそばは美味しかったのでお勧めです。
      やってみてくださるとのこと嬉しいです。
      塩もみキャベツも活用されてくださっているようで嬉しい限りです。
      私も餃子にも入れましたが、作りやすいですね!
      ご報告ありがとうございます。
      2023/07/24
  • お母さんにプレゼントしたいです

  • たった31文字にこんなに心揺さぶられるなんて!どの歌も、まるで目の前の光景かのように思い浮かべることができる。おもしろいのも切ないのも、自分が子どもと過ごしてきた時間を作品として飾ってもらったような気持ちになってしまった。
    あとがきの、「子育ては、驚きと慣れの連続だ。」に大いに共感。驚きの瞬間をそのままギュッと言葉に閉じ込めてあるような、新鮮な感じがした。
    恋の歌には儚さが、家族の歌には昔を懐かしむ感じがあった。影響されやすい質なので、自分でも短歌を詠んでみたくなった。

  • 子どもを産んだら是非読んでほしい。
    妊娠中のよろこびから、新生児時代のとまどい、成長のおどろきなど、一首ずつ順番に読んでいくと「あー俵万智もあたしと同じお母さんなんだなあ」と共感。
    そしてやっぱり上手い表現。笑える歌もあるけど、だんだん思わず泣けてしまって、我ながらびっくり。嬉しく、あったかい涙だった。
    どの歌もいいけど、夜中に子の寝顔を見つつふと思い返した歌は、「葉桜のみどりにすいと手を伸ばす坊やいつまで私の坊や」だった。

  • 手元に置いて、ふとした時に読み返したいと思える作品だった。子育て中だから、より響いたというのはあるかもしれない。詩集を読むのは初めてだったが、詩から自分の経験を思い出したり、様子を想像したり、短い一文でこんなにも楽しめるということを知れてよかった。日常のふとした瞬間を大切にしたい、と思わせてくれる作品。


  • 歌集を読みながら自分と家族との関係を振り返った。
    とても大切にされていると思うし、少し照れちゃうけど私も負けないぐらい愛情を伝えていきたいなーと思う

  • 妊娠したことをきっかけに手に取った本。
    短歌も、俵万智さんの本もはじめて読みました。
    限られた言葉を読むだけで、季節感や尊い一瞬の情景が広がっていくのがすごいなあと思いました。
    愛おしさであふれる気持ちになったり、切ない気持ちになったり、一冊でいろいろな感情を味わえます。
    子どもの歌も、恋愛の歌も、家族の歌も、ひとつひとつがすばらしく、連続性のあるものもあるので、アルバムのページを開いているような感覚がありました。
    大切な一冊に出会えた気がします。


  • 作者が30代後半から40代前半の作品集。

    圧倒的に子育てに関するものが多く
    見つめていた時間、気づき、感動の
    多さが感じられる。

    まるでスマホで写真を撮るように
    短歌を記したかのようにライブ感、勢いを感じた。

    その中にかぞくのこと、恋のことが詠まれていることで
    作者に立体感がでてきた。
    アラフォー、シングル、ワーキングマザー
    食べることが好きで、家族関係も良好。
    歌に現実味が増し、親近感がわいてきた。

  • さかのぼってあなたを否定するわけじゃないけど煮えすぎている白菜

    夜泣きするおまえを抱けば私しかいないんだよと月に言われる

    「これもいい思い出になる」という男それは未来の私が決める

    落ちこんでいるひまもなく子を風呂に入れおりどうってことはなかりき

    子を連れて冷やし中華を食べに行くそれが私の今日の冒険

  • い図。2人目を出産して、生まれたての息子の顔を見ていたら、上の娘が生まれてから読んだ俵万智さんの短歌がチラチラと思い出され(生まれてバンザイ とか)、もう一度読みたい、もっと多くの育児系の作品を読みたいと思い、図書館にあった5冊を母にリクエストして借りてきてもらった。『たんぽぽの日々』『プーさんの鼻』『ちいさな言葉』『ありがとうのかんづめ』『オレはマリオ』。たんぽぽの日々については借りるの2度目。
    このプーさんの鼻は、短歌オンリーの本。育児系のもの以外も含まれていて新鮮だった。私はエッセイ付きのものの方が読みやすいかな。2018/3/27

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著者プロフィール

1987年の第1歌集《サラダ記念日》はベストセラー。歌集に《かぜのてのひら》《チョコレート革命》《プーさんの鼻》《オレがマリオ》《未来のサイズ》《アボカドの種》、評伝《牧水の恋》、エッセイ《青の国、うたの国》など。2022年、短歌の裾野を広げた功績から朝日賞を受賞。読売歌壇選者のほか、宮崎で毎年開催される高校生の「牧水・短歌甲子園」審査員もつとめる。

「2023年 『旅の人、島の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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