磯崎新の「都庁」―戦後日本最大のコンペ

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163702902

感想・レビュー・書評

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  • ちょっとしたきっかけで建築に興味を持ち、図書館でぱらぱら格好いい建造物の写真をめくりはじめ、そこからもう少し踏み込んで建築について知りたい、と思ったので読んだ一冊。そういう動機で読むのにはぴったりの本でした。
    都庁コンペの話だけれど、ここ最近の日本の建築家の師弟関係だとか、そもそも建築コンペとは、とかそういうことについてざっくりしたことが頭に入った。
    ノンフィクションなんだけど、一風変わった書き方で、分厚いけどさくさく読める。おもしろかったです。都庁見にいかなきゃ。

  • 読み物としてたいへん読みやすくおもしろかった。当時の建築業界を取り巻く情勢がわかりやすくおもしろかった。丹下健三がらみの話がかなりあった。

  • 読み始めたら、これが止まらない。500ページ近い大作だが、一気に読み終えてしまった。

    巻末の年表を見ると、僕が手にした7月23日は磯崎新77歳のバースデー。偶然というのは不思議なものだ。何の縁もゆかりもないのだけど、一方的に磯崎氏にはシンパシーやら縁を感じる。

    僕は建物の保存活動にかかわっているが、そんな中、参考になるものはないかと、最初に当たった文献が磯崎氏の「大分県立中央図書館」がアートプラザとして再生するまでを描く「建物が残った―近代建築の保存と転生」だった。

    さらに、この本を読んだ後、大分行きが急きょ決まり、アートプラザほか磯崎建築巡りをするなど、連鎖反応が起こった。

    前置きが長くなったが、さて、本題。1985〜86年、戦後日本最大のコンペティションとなった新都庁の舞台裏を描くノンフィクション。このコンペは指名制で行われた。大手設計事務所に声がかかったが、当時、中小企業に過ぎなかった磯崎のアトリエの名前もあった。

    本命は丹下健三氏。磯崎は東大時代、丹下の研究所に籍を置き、師匠に当たる。コンペ説明会に向かうエレベーターの中で、磯崎と丹下はバッタリ会う。磯崎は挨拶するが、丹下は無言のまま立ち去る。

    スタッフに「ぶっちぎりで勝とう」と宣言する丹下に対し、磯崎は低層ビル案で挑む。

    コンペの行方、二人の生きざまをシンクロさせて描いており、建築には詳しくないという人も十分楽しめる。文章も軽めで分かりやすい。

    磯崎が体験した空襲、大阪万博、学生紛争、バブルといった歴史的トピックスには、イサム・ノグチ、岡本太郎、山田洋次、唐十郎、赤瀬川隼彦、赤瀬川原平らと有名人も絡み、面白さを増している。

    磯崎の人物像についてはさらに書き込みがあってもよいが、現役建築家とあって、さまざまな制約、自主規制もあったのだろう。それでも、それぞれの人物像にはスレスレのところまで切り込んでいる。

    現代建築史を知るテキストという面もあるが、やはり面白さは師弟の愛憎ドラマにある。最後もなかなかひねりが効いている。必読。

  • むちゃくちゃ面白いです。

    当選した丹下大先生ではなくて、
    落選した方を取り上げる視点がいいです。

    日本のモダニズム建築の流れから、現在に通じる建築界の人間模様まで網羅していて建築史読み物としても充実。

    今年読んだノンフィクションで一番の収穫。

  • 裏話。

  • 都庁舎の新宿移転時に行われた設計コンペの経過を磯崎事務所の視点で描く。

    建築のうんちく、過去の回想、エピソード的な話が盛りだくさん詰め込まれている。

    そのためか、非公開だったことも有りコンペの選考過程の話は薄い。

     市民が理想とする、民主主義的な都市のイメージに近いのが磯崎の中庭的な広場を飲み込む低層案。

     役所の権威、象徴、ランドマーク的なものという意味では、良いか悪いかは別として丹下の案が正解に近いであろう。

     市民の中にも、思った以上に権威にひれ伏すのを好む層が多いのではないだろうか。

  • 丹下の一人相撲。

  • 2009/09/12 購入
    2009/09/15 読了 ★★★★
    2024/01/20 読了 ★★★★★

  • いや、面白かった。
    これまで読んだこと無いジャンルではありますが、
    建築もおもろいね。
    自分にはその才能はありませんが。。。

  • 新都庁建設の指名コンペに纏わるお話。
    超高層という要項に対し、中低層のカウンター案をだした磯崎新。
    実現していれば間違いなく磯崎新の代表作になったほどのプログラムの素晴らしさを持っていた。
    だけどカウンター案はその内容の素晴らしさなどは問題にならず、結局カウンター「案」のまま終わってしまう。
    カウンター案は所詮カウンター案でしかないのだ。磯崎新に政治的な感覚や政治力がなかったと言えばそれまでだ。
    でもアンビルトに終わったからこそ伝説として語り継がれているともいえる。

    あまりに浅い本で小難しい話はいっさいない。単に読み物として楽しめる。

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