「食糧危機」をあおってはいけない (Bunshun Paperbacks)
- 文藝春秋 (2009年3月26日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163712406
作品紹介・あらすじ
食糧問題をシステム工学で分析した。「食糧は、本当は余っている!」BRICsの経済成長、人口爆発、生産量の限界、「買い負け」、バイオ燃料、食糧自給率…食糧危機の俗説を一網打尽。
感想・レビュー・書評
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数年ぶりに再読した。やや雑で、ところどころ無駄に攻撃的ね筆致もあるだが、複雑な問題の要点をおさえた本。一般向けとあって読みやすく、オススメ。
本書には関係ないことだが、著者は東大を辞めてから、(とくに近年は)中国をdisる本にも手を染めているようで心配である。
【書誌情報】
『「食糧危機」をあおってはいけない』
著者:川島博之
定価:本体1,095円+税
発売日:2009年03月27日
頁数:240
判型・造本:B6判 上製 並製
初版奥付日:2009年03月30日
ISBN:978-4-16-371240-6
Cコード:0095
〈https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163712406〉詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
勧められて読む。つかみかたが 上手いですね。
アタマが クリアー になっていて、分析の 切り口が うまい。
食糧危機論をどうやって批判するのか?
その切り口が 非常に鮮明である。なるほどと思わせる。
『豊作貧乏で、農作物の価格が上がらない』という指摘があったが、
農業技術の進展は、人口増加のスピードよりもすごいのは確かだ。
レスターブラウンが 1994年に『誰が中国の人口を養うのか?』
といったことをおもいだした。
それから、20年が経っているのである。
しかし、一人っ子政策のおかげと農業技術の進展で
中国人は 中国人によって養われている。
ただし、ダイズが 南米に頼りきりなのだ。
世界の半分の 豚肉と野菜をたべている 中国人。
飢えることはなく
ますます 食欲は旺盛で 爆食街道を突っ走っている。
食料は足りなくなると言われているが
農業技術は 急速に進んでいるのである。
1 化学肥料の生産増加とコストダウン
2 環境に優しい農薬の登場
3 品種改良
地域特性 収量増加
4 農業の機械化と省力化
→すべては、面積の単収をあげるという技術に集中。
それが、効果が出ている。
中国は 牛肉の消費量が少ないので アメリカの半分であるが
アメリカ型の食生活に移行したら エサ不足に陥るだろう。
しかし、アメリカ型になるかは 何とも言えない。
中国の食は 豚肉>鶏肉>牛肉。
牛肉のおいしい食べ方が よくわかっていない。
サカナに関しても中国人は川魚を食べている。
最近は サーモンに人気があるが。
確かに、マグロもブームになりつつある。
本当に人口は爆発するのだろうか。
2050年は 80億人から100億人。
アジアにおいても 出生率が 減少している。
中国は一人っ子政策を廃止して、少子化高齢化に対策をうつが
そう簡単に中国の人口は増えないだろうね。
生産量はほんとうに限界か?
これは あくまでも 肥料と水の問題であり
それが解決したら 生産量は 増えていく。
農地の減少?地球の温暖化?
バーチャルウォーターの概念は?
水は枯渇するのか?
リン酸は燐鉱石からとるが枯渇するのか?
などなど、農業の生産量に限界はない。
しかし、美味しいものをつくるということでは、
生産量は限られるかもしれない。
バイオエタノールによって穀物相場があがる。
これは 多くのファクターが 金融要因となっている。
バイオエタノールは アメリカの農家保護であり、補助金によって成り立っている。
補助金政策が 中断されれば、継続は 困難になるだろう。
バイオエタノール技術が 穀物になっているから問題で
もっと成長の早いもので、全体が使えれば、かなり可能性があると思う。
食料危機説は 食料自給率問題と絡んでいて
あくまでも 農業保護派が主張しているのである。
なぜ 食料危機を言う背景をきちんとつかむことが必要である。
おおむね正しく、中国においても 飢餓の問題は
経済的な理由に原因するところが多い。
やはり、豊作貧乏なのだ。
結構 重要な指摘がされた 本であることは 確かだ。 -
『食糧危機は、あり得ない』事を、論拠を示しながら、丁寧に解説されている。好著。東大大学院の准教授とは、思えない、優しい解説。
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農業の高齢化は食糧危機から遠ざかっている証拠、つまり如何に不安をあおる情報があふれているか、について気づくことができました
心が不安な時に読むと良いアロマ的な名著です。
エネルギー問題への解決策も記載されています。
なぜ、を続ける大切さ、加えて固定観念の力強さに気づかされました。
加えてビジネスへのヒントが隠れているような気がします。
合わせて媚びない人生もお勧めです -
『エンゼルバンク』で引用されていたので読んだ。
今までの、そして今の食糧危機に対する声は、「人口が増え、都市化が進み、食糧問題が増える」というものだが、本書によれば、これは明確に間違っている。世界では食糧が余っている、というのが本書の主張である。
1972年ローマクラブの『成長の限界』では、人口爆発をベースにしている。世界の人口は増え続け、いつか爆発するという主張だ。
しかし、世界の人口は爆発的に増えているわけではないし、世界的な飢餓にも陥っていない。
本書を読んで、自分で考えることの大切さを再認識した。
自分でデータを取り、自分で分析し、自分なりの結論を持つ。
このことがいかに困難なことであるかは、本書を読めば分かる。 -
食糧危機って、今、話題になってたっけ? 長い間、積ん読になってたのを読んだのだけど、ちと時期を外してしまった感が…。 (^^; やはり、本は買った時に読むのが一番か…。
内容はとても良い。やたら食糧危機食糧危機を煽る人たちの論拠を一つ一つ丁寧に説明し、データに基づいて、我々は既に十分な生産能力を持っていることを証明している。
ただし…。生産能力は十分でも、食糧に関する問題がない訳ではない。食糧危機の話は生産能力以外にも、マネーゲーム、政治、流通、食料自給率、そして戦争の問題などがある。それらを分けて考える必要があるって訳だ。アフリカの飢えている子どもたちの映像が流れても、それは食料が不足しているのではなく、戦争や流通、そして経済の問題だったりする。トウモロコシの価格が急騰したのは、バイオマス燃料の需要を見越したマネーゲームの結果であって、供給不足になった訳ではない。流通価格維持のために減反政策をやっていたりして、実は農地を増やすことはまだまだ可能だったりもする。
一人一人がこのような知識を持っておくことは、とても大切なこと。民主主義国家だから、より望ましい問題解決をしてくれるであろう政治家に投票しなければらないが、短絡的で扇情的な (分かりやすくて情に訴える) 言動に、どうしても私たちは流されやすい。それに抗うための私たちの武器は "知識" だ。直接、私たちの生活に影響する話題ではないのだけれど、まともな意思決定のできる政治家を選ぶために、貪欲に知識を求めて、こんな本も読んで欲しいと思うのであった。 -
著者はシステム工学出身。農地はまだあるとか、肥料で収穫量は上げられるといった、議論が荒っぽいと感じる部分もあるが、食糧問題の概略をつかむのには役立った。
・家畜用の配合飼料は、油をとった絞りかすである大豆ミールにトウモロコシや魚粉などを加えたもの。1960年代に使われ始め、1970年代に世界に普及した。
・中国の一人あたりの穀物消費量は、1996年に382kgに達した後、減少している。一人あたりの食肉消費量は2004年時点で56.8kgで日本を上回っている。
・中国で消費される肉のうち、6割以上は豚肉。西アジアでは羊肉が多かったが、現在は鶏肉が53%を占める。
・1?の肉をつくるのに必要な穀物は、牛が8〜11kg、豚が4kg、鶏が2〜2.5kg。
<考察>
そもそも「食糧危機」とは何か。世界的な不作のときや価格が高騰した時に、経済力がない人々が食料を得られなくなることだろう。この本でも、サハラ以南の貧困層については問題があることを認めている。
しかし、もっと長期的な視点に立てば、農業や畜産のあり方が持続的なものかどうかが問題なのではないか。例えば、土壌の肥沃度、環境との関係。私としては、そのあたりを考えてみたい。