日本最初の盲導犬

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163713601

作品紹介・あらすじ

1939年、ドイツから4頭のシェパードが日本に上陸した。失明軍人の「光」となった日本最初の盲導犬、70年の時を超えて発掘された感動秘話。

感想・レビュー・書評

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  • 戦時下において失明する人がこんなにも多いのだと・・・歴史の教科書では習わなかった戦争の痛手を知った一冊。

    国産で育成され実践活躍した盲導犬の第一号は「チャンピィ」。
    チャンピィの誕生は戦後であり、盲導犬という存在はその頃から始まったという認識だった。
    しかし、チャンピィが誕生するだいぶ以前に・・・時は戦時下・・・戦傷失明兵のために盲導犬を普及させたいという活動が広がり、そのために尽力した人達がいた。
    ドイツから基礎訓練を受けたシェパードが4頭輸入され、その犬達を基盤にして、完全ではないけれど盲導犬として使役を果たした何頭かが存在したという足跡。そして戦況悪化により育成活動は頓挫してしまった歴史。
    それらの証を残しておきたいという関係者の熱意によって、長年にわたる調査を経て本書が刊行された。

    戦争を知らない私は、この時代のすさまじい状況に、衝撃を受けた。
    そして、
    戦傷兵の失明=絶望の淵から脱し生きることの希望を持てるようになる過程には、
    目の代わりであり心の支えでもある犬の存在がどれほど大きかったかを知り、心打たれた。

    当時の兵士達はやりきれない様々な感情を短歌に読むことを慰めとしていたが、本書でも多くの歌が紹介されている。
    想いがつたわってくる。

  • 物心ついた年齢の日本人であれば、盲導犬の存在を知らない者はいないであろう。

    今では、聴導犬、介護犬、災害救助犬、セラピー犬等、様々な「介助犬」が活躍しているが、その嚆矢となった盲導犬が、どういう経緯で誕生したのか、いつどうやって日本に導入されたのか、等を知る人は非常に少ないのではないだろうか。

    本書は、日本の盲導犬の導入、日本初の盲導犬の育成、日本での盲導犬導入当初のの盲導犬の使用者(盲導犬は、訓練されたイヌだけではなく、使用する人の方にも相応の訓練や見識がないと活躍できない)等の尽力ぶりを著した良書だと思う。

    惜しむらくは、当時の関係者の多くが既に亡くなられているため、情報源がかなり限られてしまっていること。
    本書が十年前、二十年前に編まれていれば、より正確かつ多くの貴重な情報を後世に残すことができたであろう。

  • 紆余曲折を経て成し遂げられた盲導犬導入の歴史。盲導犬は盲目となった傷痍軍人の社会復帰に極めて大きな役割を担った。
    未だ掘り起こされていない称賛されるべき先人の足跡を丹念に追って描き出す著者の取材姿勢に感服。
    忠実な犬と愛情あふれる人間との関わりは読んでいて胸が熱くなる。
    ただし南京大虐殺を事実とする記述には首を傾げる。

  • 第二次大戦中にドイツから4頭の盲導犬が輸入された。
    これは戦傷により盲目となった兵士たちのために働いた犬たちの実録。
    いままでまとまった記録が残されていないためどんな運命をたどったのか不明な犬、戦時中の食糧事情のため餓死した犬、病死した犬…
    もう泣けて泣けて仕方がない。

  • 日本の障害福祉は 傷病兵に対するものから はじまってることが多いんだなぁ と思いました犬をかわいがるそれぞれの家族の様子に ぐっときました 

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