團十郎復活

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163723808

作品紹介・あらすじ

発病・再発・造血幹細胞移植-そして、悲願の舞台復帰へみずから綴った壮絶な闘病の記録。白血病との闘い416日。

感想・レビュー・書評

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  • 歌舞伎に関しては、武智鉄二や三島由紀夫の言説を読んできて、彼らの言い分もそれなりに説得力があり、二人のニューバージョンもそれなりに面白く感じてはいますが、何故か本来の歌舞伎そのものにはまったく興味も感心も魅力も感じずほとんど見ていませんし、ですから歌舞伎役者に誰がいるかも知りませんでした。

    だいたい様式美などというものに何の意義も見出せない愚か者の私は、もしそれをいうなら茶道くらいで充分じゃないか、なにも目をむいて意味不明の言葉をわめいたりおしろいをぬたくったりする必要などさらさらないんじゃない、と御託を並べていました。

    ですから、『鬼平犯科帳』で長谷川平蔵を演じた上での中村吉右衛門とか、『御宿かわせみ』で神林東吾役の中村橋之助など、だいぶ後になってから彼らが歌舞伎役者だと知りました。

    まあ、私の歌舞伎音痴のことはさておくとして、今回のテーマは他でもない、顔です。

    たまたま7月17日(土)のNHK・BS週刊ブックレビューを見て、この本の特集で、司会の梯久美子が市川團十郎にインタビューしている場面に出会って、大変驚いたのでした。

    なんとまあ、スキンヘッドの顔でこれほど魅力的な顔を今までに見たことがありません。

    丸坊主というと、どちらかというと竹中直人や松山千春や清原和博(ごめんなさい、対比するためにやむを得なく厳選して打たれ強いタフな豪傑をピックアップしました)などのように下品で賤しく見るのも汚らわしい感じがほとんどなのに、市川團十郎の神々しいばかりの魅力的な顔はどうしたことでしょう。

    拝見していて、ゾクゾクする、胸がキュンとする、引き込まれそうになる、心に鬱積していたものがパァーッと飛び散り開放的な気持ちになる、オルガスムスにも似た恍惚感を感じるなどなど、いや、これはまた、そうとういかれてしまったようです。

    それもこれも、2004年の発病以来白血病のフルコース治療を受けてきて、無間地獄の苦しみを味わい死線をさまよって帰還した人だからこそ獲得しえた、いまここに生きるオーラというか、生命の青色発光ダイオードというか普通に生きてる私たちとは相容れないまったく違う生命体としての輝きを発しているからだと思います。

    妹さんからの造血幹細胞移植で血液型がA型からO型に変わったことや、最新の白血病治療の詳細など、時にユーモアを交えて綴られる416日間の壮絶な闘病記ですが、ふと、4月21日に亡くなった免疫学者の多田富雄の闘病記を読んだときに感じた、豊かな知性と感性による思惟とはこういうものなのかということを、また改めて感じさせてもらって読んだ本でした。


    この感想へのコメント
    1.フィリップ・まろ (2010/08/07)
    11代目・市川海老蔵と小林麻央の結婚披露宴を見た。海老蔵のやんちゃぶりと団十郎の重厚さの対比が面白かった。
    僕はほとんど歌舞伎のことは知らないけれど、興味はある。
    あの披露宴を見て何より面白いと思ったのは梨園の群像の華やかさ。個性的な曲者達の彩り。若い衆たちも先代たちに負けず劣らず輝いていた。歌舞伎界はいや栄えに栄えることだと思った。
    余談だけど、僕もスキンヘッドです。でも、惜しくも竹中直人ふうかな。

    2.薔薇★魑魅魍魎 (2010/08/07)
    まったく忘れていましたけれど、急に突然いま降ってわいたように思い出した、もうひとつの魅力的なスキンヘッドがありました。
    ユル・ブリンナーと竹中労です。
    遠くを見つめる透徹した眼差し、無頼のようにみえてナイーブで知的で、その情熱的なパトスと熱狂的なエートスに魅了されないわけにはいきません。
    嗚呼、もう私の中ではまろさんはユル・ブリンナーのイメージに決定しました!

  • 市川團十郎さんの白血病の闘病記。半分ぐらいは歌舞伎の難しい話でした。

  • 改めて12代目團十郎さんのすごさを感じました。
    生前にこれを読んでいれば、もっと早く團十郎さんに興味を持っていればと悔やまれます。
    “無間地獄”と表現されているように、白血病の治療とは本当に凄まじく辛いもの。その苦しさも歌舞伎になぞらえて表現するあたり、團十郎さんの大らかさが伝わります。闘病記なのにちょっとした歌舞伎の解説書の側面もあったりして読んでいて引き込まれました。
    そしてとても勉強熱心で博学な方であることも伝わって来ました。もう少し、長く生きていて欲しかったと改めて思います・・・

  • 謹んでお悔やみ申し上げます

    文藝春秋のPR
    「歌舞伎俳優・市川團十郎の白血病との壮絶な闘い
    「白血病のフルコース治療を受けました」2004年の発病から08年に実妹から造血幹細胞移植を受けるまで。團十郎の壮絶な闘病記

    担当編集者から一言
    今や日本だけでなくヨーロッパでも名前を知られる歌舞伎俳優、市川團十郎氏。2004年に息子海老蔵さんの襲名公演の幕開け直後に急性前骨髄球性白血病との診断を受け、即入院となりました。その後、舞台復帰するも、2005年に再発。抗がん剤治療で「無間地獄」の苦しみを味わうが見事に復帰。2007年にはパリ・オペラ座で「勧進帳」を演じます。その後、実の妹さんからの造血幹細胞移植を受けて血液型がA型からO型へ。まさに「白血病治療のフルコース」をたどって、今日元気に舞台を務めていらっしゃるのです。本書は、白血病との闘い416日間を自身の言葉で記した手記。團十郎という当代きっての名優が類まれな名文家であることがわかります。(FY)」

  • 共同図書 774.28/I14

  • 歌舞伎ものをしばらく読んでみようということで、読んでみたが、白血病だけはカンベンな!という気分。
    治療に金がかけれらるであろうセレブリティでも、こんな無間地獄を味あわされるとなると、俺なんかもっと痛くされるに違いない。
    あと、こんな地獄を味わった団十郎の舞台ってのをいっぺん見に行ってみたい。

  • 面白かった。
    白血病と診断され、闘病されているというのはテレビメディアで目にしていた。そして、九州の浜の町病院で多忙の中わざわざ足を運ばれて患者さんに激励をされていた姿を見て、驚きのほうが大きかった。こんな著名人がこの浜の町病院の一室におられるのかって感動。
    彼の移植の道のりに大変興味があったので、今回手にした。
    内容は歌舞伎の舞台の予定や内容を展開させながら、啓示的に闘病を織り交ぜている感じである。そしてそこかしこに御両親や仲間のがん闘病についても触れている。それほどにがんは、身近になりつつあるのであろう。
    移植、闘病一色ではなく、歌舞伎への愛情と家族の支えなかで彼の生活を垣間見れる一冊であると思う。

  • 大病を患いそして克服するまでの長い戦いの記録と、
    歌舞伎に対する想い、情熱、使命感をつづった手記。

    文章には悲壮感はなく、思わず笑ってしまうエピソードが盛り込まれています。
    おおらかで、余裕に満ちたそのお人柄に、
    あらためて、
    だだ者ではない器の大きさを、感じました。

    あぁ、歌舞伎という大きな世界を受け継ぎ伝えていくために神に選ばれて、そして生かされている方なのだな~と、
    強く感じました。


    もっともっと、歌舞伎の世界を知りたい、成田屋の芝居を観たい。
    歌舞伎の魅力に、心酔したくなりました。

  • 2010/04/05

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