私が弁護士になるまで

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163747804

作品紹介・あらすじ

三十代で人生を変える。アナウンサーという仕事に迷い選択をせまられた私はフジテレビを退社、退路を絶って司法試験に挑戦することを決意する。ロースクール卒業後、五年以内に三回しかチャンスはない。一年目の不合格。そして-。

感想・レビュー・書評

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  • 歳がいくつだからとの理由で、実行へ移さない人がいたら、きっと人生の転機になる本だと思います。

    菊間さんはアナウンサーを辞め、排水の陣を敷いた。
    相当の覚悟ですね。
    次へのステップの保証はまったく無し。
    例の未成年飲酒問題の時でも、勉強三昧を貫き通した。

    第2のステージへと上がった今の菊間さんは、毎日を精一杯生きて明日がわくわくするそうです。

    「優しく強くそして聡明であれ」
    そんな弁護士さんになりたいのだそうです。

  • 元フジテレビアナウンサーの弁護士転身の記録。

    時系列に弁護士になろうと思ったきっかけ、勉強の推移、合格後の研修、など、どうやって転身したかが書かれている。

    その内容自体はこの人自体に興味が無ければ「ふーん」で終わってしまうので、他のタレント本と大差ない。
    ただ一つだけ深く共感したのは、「流れてくるニュースをひたすら読むだけで終わってしまい、ニュースのその後を追うこともできないアナウンサー」に対して、著者が不満を持っていたという点。
    今のメディアは持ち上げるにしろバッシングするにしろ、一過性のものが強すぎ、その後に何の責任も持たないものが多い。
    その点にちょっとでも疑問を感じたというのであれば、弁護士として一つ一つの事件を大切に扱ってくれるのではないか、という期待はある。

  • どきどきしながら一気に読み終えました。

    苦しさもあるだろうけれど、こんな風にがっつり勉強できたら幸せだろうなと思いました。
    合格の時の受験の前後の場面に共感を覚え、合格発表の場面では思わず涙ぐんでしまいました。

    熱さと、勤勉さと、明るさをお持ちの菊間さんは、きっと素晴らしい弁護士さんになっていかれるだろうなと思いました。

    学びたい気持ちを持っているオーバーサーティーの私には、ほんとうに励まされる一冊でした。
    私は私の目指すものに向けて、学びを深めていきたいと思います。

  • 「優しく、強く、聡明であれ」
    これはなんの職業でも言えることだとおもいます。
    優しいだけでは実務で通用しない。強い人はたくさんいるけど、そういう人はたいてい能力がない、能力がある人はたくさんいるけど、そういう人で優しい人は少ない。全てを兼ね備えた、中でも優しさを忘れない法曹でありたい。

    真理だと思います。

  • フジテレビで女子アナとして活躍していた著者が未成年アイドルを飲み会に誘ったことで大バッシングをうけ、その後フジテレビを退社し司法試験に受かり弁護士となった。退社後の彼女が試験に受かった時、フジテレビの『特ダネ』で笠井アナや、佐々木アナが泣きながらそのことを伝えていたシーンがとても印象深く、偶然本屋で彼女の顔写真が表紙にのる本を見た時迷わず手にとった。事件直後事務所にいながら仕事が与えられない苦悩や、ロースクールで得た仲間との努力、1回目の失敗と、2回目の合格、全てのシーンにおいて彼女がどのように考え、どういった人たちからどんな影響を受けてきたのか、大変正直に細かく描写されており面白い。著者に好感が持てるようになった一冊。

  • 入社後2、3年の若手社員が会社を辞める時に、「電通を辞めました」だとか「博報堂を辞めました」などとブログに書いて話題になることがある。そういうものを目にするたびに感じるのが、この時代の節目に30代を迎えているという自分自身の宙ぶらりんさ加減である。別に会社の管理職でもないので「会社に対して失礼だ」などとは思わないのだが、その論調を素直に応援しようという気にもなれない。せいぜい無関心を装うのが、関の山だ。

    そんな昨今の風潮から考えると、本書もいわゆる「〇〇辞めました」という文脈の中に位置づけられるものかもしれない。しかし、少しばかりモノが違うのが、その決断が10年以上会社を勤めあげた30代の人間によるものであったということ、そして、その顔と名前を皆に知られているアナウンサーによるものだったということである。

    あらかじめお断りしておくが、著者の菊間 千乃さんとは古くからの友人である。本書も本人から直接頂いたものだ。初めて彼女に会ったのが、僕がまだ大学3年生の時だったから、かれこれ15年くらいの付き合いになる。その間に、彼女と全くの音信不通になった時期が3度あった。

    1度目は忘れもしない1998年9月2日。アナウンサーが生放送中に5階建てのビルから転落、そんな前代未聞の事故が起こった時のことだった。その時テレビを見ていた僕は、本当に驚いた。何しろ、ブラウン管の向こうで慌てふためいているのは、前日まで僕が一緒に働いていた中継スタッフの人たちだったからだ。

    僕の大学生活は「めざましテレビ」でのアルバイトに明け暮れた。「それ行け!キクマ」という生中継のコーナーで、アナウンサー、ディレクター、AD、アルバイトなど、スタッフ間の垣根が全くない一つのチームとして、今日は群馬、明日は神奈川と関東近郊を駆けずり回っていた。事故が起こったのは、翌年3月に控えた就職を前に、僕がアルバイトを辞めた次の日だった。

    当時の自分の役どころを過信するつもりなど毛頭ないのだが、いつもと違う現場の空気が何か事故に影響を与えてしまったのではないか、そんな心のしこりのようなものは15年近く経った今も消えることがない。

    2度目は未成年タレントとの飲酒問題のとき。自らが撒いた種とはいえ、この時会社から下された処分は無期限謹慎という厳しいものであった。そりゃあ、連絡も取れなくなる。そして3度目が、今回の司法試験への挑戦の時であった。

    本書はこの飲酒問題から司法試験の挑戦へと向かう、彼女の30代における転機を描いたものである。ちなみに最初の事故の時の模様は、彼女の前著『私がアナウンサー』に詳しい。

    何といっても僕が興味深く見つめたのは、彼女がアナウンサーを辞めるに至ったプロセスの根っこの部分である。彼女に限った話ではないのだが、僕が感じるアナウンサーの凄みとは、一言でいうと「空気の達人」というところにある。番組全体の舵取りとして、バランスを保つことが最大の仕事であり、ある程度、予定調和を求められることもある。その中で彼女が感じた違和感は、マスコミ報道の主体の在り方という点にあった。

    伝えっぱなしの仕事が無責任なようで、もう一歩先に、踏み込みたいという気持ちがどんどん強くなっていった。「大変ですね」「まだまだ混乱は続きそうです」「しっかりした検証が必要ですね」など、座りのいい言葉を並べて終わる番組は偽善者のようで、居心地が悪かった。

    この時に「しっかりした検証が必要ですね」と言っている主体は、テレビ局なのか、番組なのか、自分自身なのか。実名で名前を晒しながらも、発言の主体は空気のように掴みどころがない。そんな悩みを彼女が感じたのは、ソーシャルメディアの影も薄かった2007年のことだ。

    マスコミは一体誰の声を代弁しているのか、そんな問題に一番早くから気付いていたのはマスコミ自身だったのかもしれない。そして彼女は、ブラウン管越しに情報を発信することよりも、直接社会と向き合うことを選択する。

    一方で、後半は彼女の司法試験への挑戦記となる。「〇〇辞めました」のエントリーの先に一体どのような世界が待ち構えているのか、想像してみてほしい。才色兼備と形容されることも多い女子アナが、全ての退路を断ち、何者でもないものとしてロースクールに通い、就職活動まで行う。その姿は、どこまでも泥臭い。

    私にはこんな普通の日常が再び訪れるのだろうか・・・先の見えない不安。自分は一体何をやっているんだろう、この年になって、社会の役に立つような生産的なことも何せず、勉強だけしてていいんだろうか、悲観的に今の自分を責め立てる気持ちが広がって、いやぁな気分になった。

    ロースクール制度とは、基本的にはロースクールで3年間きっちり勉強すれば、司法試験には7〜8割は合格するという触れ込みで始まった制度である。しかし実際のところ、2011年現在の合格率は25%前後であるという。そして与えられたチャンスは3回のみ。

    このロースクールにおける生徒同士の人間模様は、実に不思議な関係だ。志を同じくし一緒に勉強をする仲間でありながら、同じ椅子を奪い合うライバルでもある。そんなギリギリの状況の中に、生まれた奇妙な連帯感。

    しかし、全てが順風満帆であった訳ではない。一回目の試験終了後、突然彼女は週刊誌の記者に声をかけられる。この手の煩わしさから解放され、受験勉強に専念するべくアナウンサーを辞めたというのに、その思惑は台無しにされてしまうのだ。かつて取材する立場にいたがゆえに、無責任に取材される立場に身を置くことは彼女を追い詰める。

    それでも、アナウンサーとしての経験が役に立ったことも多々あるそうだ。模擬裁判で自分が想定した答えが引き出せた時の達成感や、予想外の答えが出てきた時の切り返しの瞬発力は、生放送の仕切りと似ているのだという。何のことはない、本当は敵も味方も、アナウンサーであったという彼女自身の中に存在したのだ。

    本書の標題からもお察しの通り、彼女はやがて弁護士への切符を勝ち取る。そこで彼女が手にしたものは、はたして何だったのか? キャリアに正解のない時代と言われて久しい。本書の中に書かれているのも、答えではなく問いかけだ。「自分は今、何をすべきなのか」「自分はどうありたいのか」、そんな断続的な問いかけの先に答えはある。答えは点ではなく線なのだ。そして、彼女の引いた線は不格好だが強くて太い。

    漠然とした不安を抱えながらも目の前の仕事に向き合っている一人の30代のビジネスマンとして、また一人の友人として、僕は本書を全力でオススメしたいと思う。そして、再び10年後に出るであろう彼女のその後を描いた次回作を、早くも心待ちにしている。

    • haijiihaさん
      長年のファンで私も前作も読み次回作も期待してます
      長年のファンで私も前作も読み次回作も期待してます
      2012/01/16
  • 10年ぶりに再読しました。
    当時は自分で購入し、今回は図書館で見つけて。
    著者の経験が背中を押してくれるような本で、思えばキャリアについて自身に節目があり、考えるときに手に取っているようです。
    行動力あって努力家で、現在も活躍されていて憧れます。

  • 転職や資格を取るなど勉強を頑張っている人におすすめ。

    【概要】
    ●アナウンサーという仕事
    ●ロースクール制度
    ●1回目の受験
    ●2回目の受験
    ●研修

    【感想】
    ●周囲の反応がどうであれ自分で決めた道を進むのは素敵だ。同時にそれなりの覚悟は必要だと思った。
    ●自分の人生を変えようと考えるならば、できる限り若くて独身のうちに行動する方がよい。

  • とにかく尊敬する。やっぱり一線で活躍してた人はどこへいっても努力出来るし頑張りぬけるのだなと。
    それに比べて…と自己嫌悪に陥る。
    自分も頑張らないと。

  • 12/6/20 津田沼丸善で購入

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著者プロフィール

聞き手 菊間 千乃(きくま ゆきの)
 弁護士(松尾綜合法律事務所)

「2018年 『谷口安平オーラル・ヒストリー 終わりなき好奇心』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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