金王朝「御用詩人」の告白 わが謀略の日々

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163767109

作品紹介・あらすじ

金正日のお抱え詩人はなぜ脱北したか。北朝鮮の統一戦線事業部とは、武力挑発から文化的なテロに至るまで、多様な工作を行う部署。著者は、その中の「101連絡所」に勤務していた。そこでは、メディア、小説、詩、音楽などによる、韓国や自国民の感性操作を行っていた。文学的な才能があった著者は、すぐに金正日の心を動かす詩を書いた。やがてある日の夜中、突然電話が鳴り、カーテンで目隠しをした車や汽車、魚雷艇を乗り継ぎ、ある場所へ連れて行かれる。将軍への謁見が叶ったのだ。「将軍様の接見者」となった著者は、金王朝を讃える歴史書「金朝実録」の編纂を命じられる。その資料を調べる過程で、以下のような秘密を知った。1994年 金日成は金正日のせいで死んだ1997年 金正日は「深化組事件」により、金日成側近の粛清を始めた1995~98年 配給制度の崩壊により、約300万人が国内で餓死した2002年 日本の小泉訪朝団は金正日の「拉致認定」と引き換えに、114億ドルの支援を提示したその他、「つつもたせ」「現地妻の村」「妊娠工作」、赤軍派、横田めぐみさんの生死……北朝鮮の謀略の数々を本書で明かす。統一戦線事業部元幹部による初めての手記。

感想・レビュー・書評

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  • このような上流階層の人物でも(だからこそ)、脱北するようになっている。かの国の早急の変革を望む。

  • 【金正日お抱え詩人はなぜ脱北したか】富裕層に生まれ、対南心理を操る若き詩人として将軍に謁見。やがて金王朝の秘密と故郷の惨状を知る。暗殺予告された脱北詩人の告発。

  • 言葉にはなんと力があるのだろう。
    北朝鮮の「苦難の行軍」時期の悲惨な様子を描いた詩集「わたしの娘を100ウォンで売ります」を読んで、そのあまりの筆力に驚いた私は、著者が韓国の脱北者メディア「ニューフォーカス」の代表であるということを知り、ニュースなどで彼が北朝鮮情勢について分析する記事などを探して読むようになった。
    「ニューフォーカス」が日本国内のメディアでも大きく取り上げられたのは、2013年6月に「北朝鮮が幹部にヒトラーの自伝『わが闘争』を贈った」というニュースを流したときだ。このニュースは世界中で報道され、同月、北朝鮮がその報道を激しく非難した。その後も何度も直接名指しされているのが、この本の著者である張真晟氏だったのだ。

    はじめ私は「詩人」というものが、日本語でいう「詩人」だと思っていた。しかし、北朝鮮における「詩人」は少し違う。
    北朝鮮においてすべての文学は、北朝鮮人民にトップに対する忠誠を誓わせ、韓国において韓国人が自国政府に不満を持つようにする、そんな「文学」のことをいうのだという。
    彼は、そういった心理戦に携わる統一戦線事業部で「詩人」として働いていた幹部であり、金正日を称賛する詩を作って金正日に面会することのできた一握りの人間であり、また日本人拉致問題についても重要な資料や話を目にすることができたという。

    そういった意味で、同書の内容は一つ一つがすべて興味深い。また、実力ある詩人だからだろうか、文章には力があり、訴える力がある。
    これまで読んだ北朝鮮関係の書籍の中で一番の良書である。

    これまで言葉を「工作のため」に使っていた著者が、韓国ではそのペンの力を本当の意味で「祖国のため」に使うことを望んでいる。

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