生涯投資家

著者 :
  • 文藝春秋
4.12
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906652

作品紹介・あらすじ

「お金儲けは悪いことですか?」 2006年6月、ニッポン放送株をめぐるインサイダー取引を行った容疑で逮捕され、のちに執行猶予つき有罪判決を受けた村上ファンドの村上世彰氏。逮捕間際に言ったその言葉が注目された。以後、表舞台から姿を消したが近年株式取引の世界に復帰。その動向が注目されている。 本書は、その村上氏の最初にして最後の著書であり、半生記であり、投資理念の解説書でもある。灘高―東大法―通産省を歩んだエリートがなぜ投資の世界に飛び込み、いったい何を試みたのか。ニッポン放送、阪神鉄道、東京スタイルなどへの投資において、いったい何があったのか。その投資哲学、日本企業、日本の経営者たちへの見方はどうなのか。そして今後何をしようとしているのか。 村上ファンドを率いて日本に旋風を巻き起こした著者が、その実像と思いを自ら書き上げた話題作。(目次)はじめに――なぜ私は投資家になったか第1章 何のための上場か上場のメリットとデメリット/官僚として見た上場企業の姿/コーポレート・ガバナンスの研究/ファンドの立ち上げへ――オリックス宮内義彦社長との出会い/日本初の敵対的TOBを仕掛ける/シビアな海外の投資家たち第2章 投資家と経営者とコーポレート・ガバナンス私は経営者に向かなかった/私の投資術――基本は「期待値」、IRR、リスク査定/投資家と経営者との分離/優れた経営者とは/コーポレート・ガバナンス――投資家が経営者を監督する仕組み/累積投票制度を導入せよ――東芝の大きな過ち第3章 東京スタイルでプロキシーファイトに挑む東京スタイルへの投資の始まり/十五分で終わった社長との面談/激怒した伊藤雅俊イトーヨーカドー会長/決戦の株主総会/なぜ株主代表訴訟を起こしたか/長い戦いの終わり第4章 ニッポン放送とフジテレビフジサンケイグループのいびつな構造/ニッポン放送株式についてくる「フジテレビ株式」/グループ各社の幹部たちの思惑/本格的にニッポン放送への投資に乗り出す/生かされなかった私たちの提案/私が見たライブドア対フジテレビ/逮捕第5章 阪神鉄道大再編計画西武鉄道改革の夢――堤義明氏との対話/そして阪神鉄道へ/会社の将来を考えない役員たち/阪神タイガース上場プラン――星野仙一氏発言の衝撃/またしても夢は潰えた第6章 IT企業への投資――ベンチャーの経営者たちITバブルとその崩壊/光通信とクレイフィッシュ/USEN、サイバーエージェント、GMO/楽天――三木谷浩史氏の積極的なM&A/ライブドア――既得権益に猛然と挑んだ堀江貴文氏第7章 日本の問題点――投資家の視点からガバナンスの変遷――官主導から金融機関、そして投資家へ/日本の株式市場が陥った悪循環/投資家と企業がWin‐Winの関係になるには/海外企業の事例――Appleとマイクロソフト第8章 日本への提言株式会社日本/コーポレート・ガバナンスの浸透に向けて/モデルケースとしての日本郵政/もう一つの課題――非営利団体への資金循環/世界一の借金大国からの脱却第9章 失意からの十年NPO/東日本大震災について/日本における不動産投資/介護事業/飲食業/アジアにおける不動産事業/失敗した投資の事例――中国のマイクロファイナンス、ギリシャ国債/フィンテックへの投資おわりに

感想・レビュー・書評

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  • 本編を読む前に巻末の著者略歴をみて欲しい。そこにあるのは3行だけのシンプルな経歴だ。成果も栄光も語られていない。村上世彰氏が本書を刊行した理由は言い訳でも正当化でもなく未だ為らぬ日本へのコーポレート・ガバナンスの定着であった点に説得力を感じる。

    私自身は村上氏に対して悪い印象を持っていないが、「ハゲタカファンド」のイメージがつきまとい本人も不本意であったろう。しかし魅力なき者をオリックス宮内氏や西武G堤氏、ISSモンクス氏など超大物たちが可愛がり支援するはずもなかろうから、やはり村上氏は相当魅力的な人物であったことが窺える。

    村上氏は父親が投資家で、自身も小学3年生の時分から投資に慣れ親しんだという恐ろしい経歴の持ち主だが、「期待値」という表現で彼の天才的投資センスが随所に見受けられる。一方で経営センスに乏しい点は自身も認めるところだが、重要判断について語るとき著名人の名をスケープゴートにしたり、株主提案が投資先企業の本業強化とGoing Concernに貢献しているのかというと疑問があったりと、彼自身の狡猾さも感じられるので、その点は割り引いて評価する必要はある。

    彼の行動は賛否両論あろうが、東京スタイルやニッポン放送、ユーシンなど株主統治の意識が低い経営陣らに一石を投じた意味合いは大きい。数々の派手な事件の裏で彼が何を思っていたか、彼が目指していたものは何だったのか、なかなか興味深く面白い本であった。

  • 日銀が株式市場で、筆頭株主に現実になろうとしている時に、この本を読めたことで市場の見方が変わった。
    日本人に未だに存在する、投資やお金に対する歪んだバイアスが、戦後の経済政策からの延長によって、「上場=パブリック」意識が根付かなかったこと。
    そうした状況を既得権益者は逆手にとって、市場から人々を無言で排除してきたことで、公器としての企業を私物化していた経緯。
    そうした環境ではもちろん人々の投資リテラシーが育たず、投資で儲ける人への偏見を育ててしまったのかもしれない。
    一度根付いた意識を変えるのは並大抵ではない。ベンチャー投資は社会を変えるための投資だと思えばやりがいがあるかもしれない。

  • きわめてまっとうな事が書いてある本。読み終わって感じたのは、村上さんって自分の正義(というか価値観)に則って動いている人なんだな、という事。日本の株式市場の考え方は歪んでいるなぁ、というのは改めて感じるし、上場する必要が無い会社はMBOすべきだし、IRRは15%を望むというのも、資金を循環させる事で資本市場を活性化させるという観点からは、なるほどな、と思う。
    村上さんは、慈善活動もやってるし、日本の将来についてもしっかり考えているし、こういう人が逮捕されずにもうちょっと活躍してくれれば、もう少し違った日本が見えていたのかな、と思ったりもした。
    日本の上場企業にコーポレートガバナンスが根付いてくれると、幸せな人が増えて良いな、と個人的にも感じた。まずは、自分が出来ることを着実にやっていきたいな、とそんな事を考えた。この本は本当にオススメ。

  • 出る杭は打たれた。日本企業にコーポレートガバナンスを浸透させるため、今日も投資を行う

    ●感想
     なぜ村上氏は逮捕されるに至ったのか。知りたくて読んだ。やはり、「出過ぎた杭は打たれる」のだな、という感想を持った。本書に書かれている村上氏の理念には共感するし、おかしいことは特にない。逮捕されたことに関する詳しい考察、分析はかかれていないが、「村上氏は『想い』が強すぎる」のだ、と本を読んで思った。ここまで日本全体の発展を考え、ファンド運営や投資を行ってきたとは知らなかった。
     村上氏の投資の目的は「日本企業へのコーポレートガバナンスを浸透させる」ことである。企業を自分のモノかのように勘違いしている経営陣をただすべく、投資を行ってきた。株主を無視し、企業価値を高めない経営者が、日本の成長の足かせになっていると考えての行動である。官僚として働く中で、自分がプレイヤーとなって変えていくほうが効果的であると考えてとのことだった。
     だが、変革者はいつの世も忌み嫌われるものだ。村上氏は、良い意味でも悪い意味でも正直すぎて、敵を作ってしまう場面も多かったのだろう。「声高に理想を叫ぶだけでは社会を変えられない。むしろ敵としてみなされる」というのは歴史を振り返るとよくある事象だ。惜しむらくは、2014年に正式に伊藤レポートとして「コーポレートガバナンス」「ROI」を重要視して経営を行うように、公に話がなされたことだ。村上氏の提言は8年早かったし、日本は遅すぎたのだ。「正論で人は変えられない」ことが分かる名著。

    ●本書を読みながら気になった記述・コト
    *東日本大震災の際に即座に救援に向かったことには感服した。それ以前に、震災のための予防を行うNPOに資金提供も行っていた。村上氏はかなり社会奉仕のマインドに溢れている

    *「私にとっては短期投資も長期投資も同じである」。株主市場では、未来への成長期待も織り込まれた価格がつく。したがって、短期投資か、長期投資か、という区分けは無意味。伸びる企業に投資をすればよいのだ

  • 面白く読めたのだが、村上さんの考え方は理解できなかった。フジサンケイグループや光通信、サイバーエージェント、楽天、そしてライブドア。それぞれの経営者とのやり取り、ここは読み応えがあった。

  • 「村上ファンド」の村上さんの本。彼がこれまでに行ってきた投資の実例を交え、投資家と企業がコーポレートガバナンスを通してどのような関係を築いていくべきかについての持論を展開していく。個人的に企業は投資家と二人三脚で世の中に価値を生み出していくべきという意見であるため村上氏には賛成なのだが、それに加え、豊富な事例のドキュメンタリー的な読み物としても、投資がどのように動いているかを学ぶ基礎テキストとしても、優れた本。村上氏の情熱的で誠実な人柄が伝わってくる。

  • 賛否両論ありつつ、この人の生き方はまっすぐだなあと思う。投資家とは。モメンタム、メンタリティ、マインドセット学ぶことは多岐にわたる。

  • ホリエモンのファンです。ホリエモンが何かで言及していたので読んだのですが、単なる読物としても本当に面白い。そして感動する。
    むかし世間を騒がせていた頃の村上氏と今の白髪の村上氏とは全く違う人物のように見えるが、それだけの苦労があったのだろう。それがよく分かる。
    しかし本の内容は、自分の苦労話ではなく、投資に対する氏の姿勢を一貫して主張されていて気持ちが良い。
    そして、やはりホリエモンは村上氏から見ても他の起業家とは違う聡明さをもって認識されていたようです。
    村上ファンにもなる一場面だわ〜

  • 全編にわたり、ほぼ100%正しい主張のように思います。
    こういう人を犯罪者にしたてあげる、関係者、マスコミのほうがよほど反市場勢力だと思うし、国ぐるみで冤罪を推し進める犯罪だと思うし、娘さんの件などは殺人ではないでしょうか。なんか、日本って未来はあるのかな?って思っちゃう。

  • 村上さんもメディアに悪者に仕立て上げられた被害者の一人だったんですね…
    まぁホリエモンと世間を騒がせた当時は、ネットも情報リテラシーも貧弱でしたからメディアによるフェイクニュースや吊し上げにあうと反論の余地何てありませんもんね…
    でも、それは今でもあまり変わらないのかもしれないですね。ネット環境整備が整ったこととそれを使いこなす技量が一般人にも広く伝わるようになってネットの世界がある種の嘘やデマを淘汰する公平な場であることが分かり始めたのって最近ですもんね。もちろん既存メディアが如何に偏向してたのか、如何に恣意的な情報を流していたのか…が分かってきたのもホント最近ですもんね。
    著者がどういった信念や信条をもって投資というものに携わってきたのかものすごく伝わってきました。昨今の日本の大企業のトップや教育機関、政界、官僚などこの国を動かしているような面々が自己保身や自己都合ばっかりでこの国を停滞させているってことが、本書読んでいて通ずる部分があるなぁって良く分かりました。
    自分の仕事に熱意や矜持をもってこの国を変えていこうという姿勢は本当に素晴らしくて尊敬します。古いものがすべて悪いとは思いませんが、本来あるべき姿や形に正すことや新しい手法や取り組みをどんどん取り入れてトライ&エラーを繰り返していくことは本当に素晴らしいし必要なことだと思います。著者のような日本の未来を変えたいと懸命に力を尽くされた方を知れたことはとても有意義でした。
    いい本でした。おススメします。

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著者プロフィール

村上 世彰(ムラカミ ヨシアキ)
投資家・N/S投資部特別顧問
1959年大阪府生まれ。東京大学法学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。日本経済の持続的な成長のためにはコーポレート・ガバナンスの普及が重要であることを実感し、40歳を目前にファンド会社を設立。現在はシンガポールに拠点を移して投資を行う。また、日本の社会的課題の解決に寄付を通じて貢献したいという想いが募り、村上財団を創設。働く女性の労働・生活環境のサポート、未来の日本を創る中高生の金融教育や社会支援に積極的に取り組んでいる。

「2021年 『読んだら一生お金に困らない N/S高投資部の教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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