レフトハンド・ブラザーフッド

著者 :
  • 文藝春秋
3.27
  • (23)
  • (65)
  • (113)
  • (31)
  • (8)
本棚登録 : 914
感想 : 83
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909868

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「エイリアンハンドシンドローム」
    脳障害や精神疾患が引き金となり、片腕が自分の意思とは関係無く動く病気。別名「他人の手症候群」
    風間岳士もこの病気を持つが彼の症状は一般的なエイリアンハンドシンドロームとは明らかに異なる点があった。彼の左手からは声が聞こえる、亡き兄 海斗の声が。

    「消えてしまいたい、忘れてしまいたい。」そんな願望を一時叶えてくれるドラッグ、「サファイア」
    しかしそれは偽りの魔法だ。殺人の容疑を着せられた岳士は左手の海人と共に真犯人を探す為、この違法なドラッグの世界へと入り込んでいく。そこで見た物は、支えを求め必死に生きる一人の女性と、サファイアによって蝕まれた人々の末路、そして「海斗」の存在に対しての真偽だ。

    徐々にサファイヤに依存していく岳士、それに比例して海斗の「支配領域」が広くなっていく。岳士は、今までずっと支え合って生きてきた「片割れ」に対して絶対的な信頼と、侵食される事への恐怖心に苛まれる事となる。そして「サファイヤ」を作り出した「錬金術師」を突き止めた時、彼等の人生は大きく動き出す。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    確かに著者は題材に絶妙なブラック要素を用いる事が多いが基本的に爽やかなイメージだった。しかし本書はTHEアングラ。家出 殺人 逃亡 売人 薬物依存 と中々ヘビーな内容だ。安定の登場人物達のアニメキャラ感は否めないが、そもそも土台がSFで違和感は無いので、最初の儀式で世界観にトリップする事に成功さえすれば心底楽しめる内容かと思う。
    これは楽しんだという意味なのだが、後半のシリアスな雰囲気の中、海斗(左手)が岳士(本体)を殴るという一人芝居はやはりシュールだ。脳内再生がバグる。こうして時々額の筋肉を休ませてくれるのだ。

    著者に対してイメージの無かったレアな官能シーンはティーンエイジャー向け。ダークな雰囲気の中での唐突なエロに全力で感謝しかけたが、メンヘラと童〇貞の共依存はあまり美しさを感じなかった。世界観のハードルの高さの割に狂人レベルが足りていない。うーむ、無性に「蛇にピアス」を再視聴したくなった。
    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    あまりいい事を言えていませんが、とても面白かったです。分厚い作品だが話が停滞する場面はなく、どんどん新しいシーンに移り変わる。心二つ、身体一つの兄弟の歩みに夢中になっていました。

    読み終えた今は人知れず孤独にホロりとしています。辛く切ないどんでん返しを是非ご堪能下さい。

  • やっぱり知念実希人さん好きだな。
    現役医師だから医療知識とファンタジーとミステリーが堪能出来る♫ 
    疾走感あって展開が気になって遅読の私が
    3日で読めた。(私にしてはかなり速い)
    ある程度展開がよめつつも、でもひねってくれる知念さん。
    読んで良かった❢

  • ❇︎
    全460ページ
    とてもボリュームありました。
    でも、話の展開が早くどんどん進みました。

    弟の岳士の左手首に宿った兄の海斗の魂。
    兄弟の奇妙な共同生活。

    岳士の頭にこびりついて離れない、
    左手に残る海斗の手の温もりと哀しそうで
    満足そうな笑み。

    三ヶ月前の出来事が前半ずっと隠されていて、
    モヤモヤに背中を押されて読み続けてるうちに
    本が閉じられず、気づけば一気読みでした。

    知念実希人さんの小説は、話の途中に
    登場人物から心が離れることがあっても
    最後にいつも温かい気持ちにさせてくれます。

    大切なものを失って絶望に沈む人に
    そっと手を差し伸べる優しい物語。

  • 大好きな知念作品、購入してから積読になっている間に気がつけば先日本作の文庫本が発売に…

    慌てて手にとり読み終えました。

    やはり知念作品の醍醐味はなんと言っても医療ミステリーだと改めて実感。

    決して本作が楽しめなかった訳ではありません。

    むしろ、非常に楽しめました。

    だからこそやっぱり著者の医療ミステリーが大好きなんだと身に沁みて感じています。

    「神のダイスを見上げて」のように非現実的なストーリーではありましたが、それでもページをめくる手は止まりませんでした。

    そして本作でもきっちり仕込まれていたどんでん返し。

    ただいつものように急激に謎が解き明かされ、著者が仕込んだ伏線が一気に回収されるあの感覚は本作では薄かった。

    いや、それ以上に兄弟が主人公の青春物語でした。

    説明
    内容紹介
    殺人の濡れ衣を晴らすため奔走する高校生・岳士の味方は自らの左腕に宿る〝兄〟ただ一人…。注目の著者によるノンストップ青春小説。

    内容(「BOOK」データベースより)
    左手に宿る“兄”と俺。奇妙な2人の逃避行が始まる―ある事故以来、左手から死んだ兄・海斗の声が聞こえるようになった岳士。家出した2人は殺人事件に巻き込まれ、容疑者として追われるはめに。濡れ衣を晴らそうと奔走する岳士と海斗だが、怪しいドラッグ「サファイヤ」、そして美しい彩夏との出会いで“兄弟”の思惑はすれ違いだす…予想不可能のラスト、切ない衝撃に涙があふれる。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    知念/実希人
    1978年、沖縄県生まれ。2011年『誰がための刃 レゾンデートル』で第四回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞、翌年同作でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 主人公の行動が軽率すぎて、安易にドラッグを使用しすぎて、女にハマりすぎて、イライラする。途中で読むのをやめようかと思ったほど。
    でも、ここは知念実希人。やはり続きが気になり、最後まで読んでしまった。
    錬金術師は、そっちかーってかんじだったけど、海斗の判断はなんとなくどうなるだろうなーと。結末が気になって、後半は一気読み。イライラはしたけど、面白かった。

  • なかなかに厚い本で、最後の方を次の日に持ち越してしまったからか、こうなるのでは?と予想できてしまいました。
    弟にはもっとしっかりしててほしかったなーと思ってしまいますが、だからこそ兄がいたんでしょうね。

  • 事故で死んだ双子の兄・海斗が宿った岳士の左手。奇妙な共同生活、そして家出。
    からの、殺人容疑、逃走、彩夏との出会い、そして、サファイア。
    すれ違う兄弟の思い。壊れていく人格と似たもの同士の2人。
    ラストは章題から予想できた。兄弟の思いと愛。
    哀しく優しい物語。
    生きてしまった人は、大切な人をその胸に感じて生きていけばいい。
    お前の人生に幸あらんことを。
    即読みしました。

  • 兄弟愛河泣ける。

  • 登場人物の心の弱い部分を取り上げられていてもそれをひっくるめて人物像として好感が持てる所や、二転三転もして続きに興味を引きつつ、最後は想像の余地を残し、しっかり終わった所が良かった。

  • 最後がほんとうに切ない。
    左腕に宿る兄(結局主人公の妄想なのか霊的な形で宿ったのかは定かではない)が、主人公のためにひと芝居うって自分を切り離させる。
    最後にまさか兄から手紙がくるとは。
    途中の兄弟喧嘩で兄が「自分が生き返るため」と本性さらけ出したときは演技なのか本気なのかはらはらした。
    でもエピローグで結局演技だってことがわかってよかった。途中、薬に溺れる主人公にイライラしたけど、まだ高校生だってことを考えるとそれもいたしかたなしかと。

全83件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1978年沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。医師。2011年、第4回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」を受賞し、12年、同作を改題した『誰がための刃 レゾンデートル』で作家デビューする。代表作に、「天久鷹央」シリーズがある。その他著書に、『ブラッドライン』『優しい死神の飼い方』『機械仕掛けの太陽』『祈りのカルテ』「放課後ミステリクラブ」シリーズ等がある。

知念実希人の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×