フテンマ戦記 基地返還が迷走し続ける本当の理由

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163911816

作品紹介・あらすじ

誰が、なぜ迷走させてきたのか?返還合意から24年。沖縄米軍普天間基地返還は、なぜ迷走し続けるのか。民間人として普天間問題に関わった軍事アナリストが、24年間の手帳、メモ、資料をもとに明かす。いったい誰が泥沼に陥らせたか、なぜ辺野古案は使いものにならないのか――。政治家、官僚、米国側要人・・・・・・彼らは何をしようとし、何を見誤ったのか?そして浮かび上がる、日本の危機。軍事アナリストである著者は、自民党の政策勉強会に招かれたことをきっかけに、外交・安全保障・危機管理の分野について、歴代政府に助言・提案をするアドバイザーを勤めてきた。沖縄の普天間基地返還問題には、橋本政権下で日米の返還合意がなされた当初からかかわってきた。それから二十年余、普天間は返還に至っていない。様々な案が浮上しては消え、行き詰まり、迷走を繰り返している。なぜこのようなことになってしまったのか。民間人ながら至近距離でこの経緯を見つめてきた著者が、24年間にわたるメモや資料から、普天間問題混迷の原因を指摘。政治家・官僚などが多数実名で登場、現代史の裏面を描き出すクロニクルである。【目次】はじめに なぜ普天間返還は進まないのか?序章 チャンスは4回あった第1章 迷走への序曲 自民党本部1996第2章 小渕官邸1998~2000第3章 小泉・安倍・福田・麻生官邸2001~2009第4章 鳩山官邸2009~2010「トラスト・ミー」の陰で第5章 沖縄クエスチョン1999~2011第6章 鳩山だけが普天間を迷走させたのか? 2010~2019あとがき 信頼を回復する道

感想・レビュー・書評

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  • いいとこまで行けてたのに、一線を越えられない、、、

    アメリカからの圧力や何か動かし難い壁があって、、、とかではなく、政治家や官僚の個人的な資質の問題だったり、個人的な嫉妬だったり、、、えっ、そんなショウモナイことで沖縄の人たちはひどい目に遭わされ続け、大量の税金をムダに注ぎ込まれているのか、とげんなり苦笑い、、、ハァ、、、

    それが、この国なんだな、ということを知っては凹み、自分とは遠いところで暗澹たる霧に覆われてしまっているような、鈍い絶望とともに栞を挟む。の日々だった。


    あとがきの最後の言葉に尽きる。


    「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」(論語)

    人間である限り過ちを犯さない者はない。問題は過ちを改めるかどうかだ。愚か者は過ちを弁解したり、飾ろうとするが、優れた人物は、すぐに過ちを改め、過ちを貴重な経験とする──。耳に痛い言葉だが真理である。過ちを改めることこそ、政治が沖縄県民の信頼を回復する道だと信じている。
    強力なリーダーシップのもと、日本の政治が普天間問題の解決を通じて内部からの侵食を食い止め、日本が国際水準の外交・安全保障能力を備えている姿を、世界に証明してくれることを願っている。

  • 東2法経図・6F開架:395A/O24f//K

  • いかに辺野古埋立て案が無謀で無駄で無理で、ハンセン陸上案なるものが効率的で現実的かを語る著者。その案はこれまでに日米の政治家から認められる絶賛されてきたとするが、実現はせず辺野古の埋立ては進み続けている。これをどう評価すればいいのか判断がつかない。
    そもそもここで説明するように非の打ち所がないならこの案で合意されるはずで、「それが政治」と言われたら何も意味なくなっちゃう気がするし、無理で無駄な辺野古をやめられない政治にも絶望してしまう。
    著者を知らないので何ともいえないけど色んな人を批判して色んな人と疎遠になってるこの人の話ばかり全て信じる気しないような。
    軍事のスペシャリストは在日米軍がいかに重要で米国にとっても日本は最重要同盟国って言うけど、それは別の思惑があるからじゃないかと思ってる僕には響かない。あぁ俺も批判的に…。
    世界的に死活問題だから米軍は必要でオスプレイも安全で基地は沖縄にないといけないなんて、全ては信じないけどこれまでの経緯の振り返りと政治の腐敗ぷりは良く分かって良かった。
    こんな国で生きていこう。

  • この作者についてはニュース番組などで昔何度か見かけた際に論理的で落ち着いた語り口に好感を持ったことと日本では珍しい軍事アナリストという肩書き…そこに至る経歴も異常で自衛隊の航空学校から同志社の神学部中退とか。興味を持ってSNSでフォローしておりそこで知った作品。タイトルどおり日本への返還が日米間で合意されているにも関わらず24年間も実現していない事実について民間人の立場で交渉に関わった経緯をまとめたもの。失礼ながら作者のことは評論家としか認識しておらずここまで政府に食い込んでいるとは思わなかった。首相の補佐官的な役回りで橋本龍太郎から鳩山由紀夫辺りまで積極的に関与していたことに少し驚いた。作者の立場は一貫しており住宅密集地にある普天間飛行場は一刻も早く返還してもらい替わりの空港は同じ沖縄のキャンプ・シュワブに移す、というもので辺野古埋め立て案には大反対、という立場である。理由は環境面の配慮ではなく専門の軍事的な立場で要は水上に浮かべた空港では海兵隊の訓練にも実戦にも耐えられない、というもの。その意味ではアメリカ側も軍というか制服組にもその案は合意されており現実的な案である、という主張である。そしてアメリカ側も正式に日本からその案が提示されたら受け入れ合意されたはずなのに日本側が24年にわたって国内で意見を統一できなかっただけ、という見方。そしてたぶんそれは正しくて政治のリーダーシップの欠如であったり役人達の軍事知識不足であったりそういうことなんだろうと思う。そもそも作者にしてもそれだけ正しい案であれば顧問的な責任のない立場からものを言うのではなくもっと積極的に案への支持を取り付ける動きができなかったのか、とも思う。それにしても本当に生々しい記録。特に非難されているのは麻生太郎と鳩山由紀夫。珍しくリーダーシップを発揮でき得た野中広務をその出自を取り上げて引きずり下ろした麻生太郎。面罵されて一言も返せない情けない姿が明記されている。鳩山由紀夫に関してはもはやまともな能力を持った人間としてすら描かれていない。この二人に関しては財力や肩書きが人間の能力や品性に直結しないということをわからせてくれると思う。それにしても今現在既に注目すらされていない普天間問題。いみじくもロシアのプーチン大統領が北方領土を返還した途端、そこに米軍基地を作られても日本政府は何もできないだろう、と言ったことでもわかる通り沖縄だけの問題ではないことは明らか。本作を契機にまた議論なり交渉が進めば良いのに、と思います。これも素晴らしい作品。おすすめです。

  • 著者は長きにわたり、民間人の立場で普天間、沖縄の問題に係わってきたという。
    著者の主張するキャンプ・ハンセン案というのがどこまで有力な案なのか、有力ならばなぜ日の目を見ないのかは、素人が本書を一読しただけでは比較ができず判断がつかない。
    しかし唯一の選択肢だという辺野古に当初の想定外の問題があるのに直視できない、そもそも自分たちの問題を自分で考えて解決できない、普天間の危険除去という題目を唱えるだけで真摯に問題に向き合えない。この問題の根深さはよく理解できた。

  • 軍事アナリストの人が書いた本です。

    ×辺野古
     狭いし・海上施設は要件を満たさない
    ○キャンプ・ハンセン陸上案

    と彼は言っています。
    このような案があるのを知りませんでしたが、航空写真で見ればキャンプ・ハンセン陸上案もNGですな。

    https://seisenudoku.seesaa.net/article/481160489.html

  • 迷走を続ける普天間基地の移設問題。1996年の返還合意からこの問題に関わり続ける軍事アナリストによる日米の交渉の裏側。

    鳩山政権を中心に普天間基地の移設の問題を赤裸々に記録した一冊。筆者は一貫して辺野古の海上基地でなくキャンプ・ハンセンの陸上基地への移設を主張し続けている。

    佐藤優、鳩山由紀夫、ケビン・メア、孫崎享などに関する人物評が面白い。

    陸上案がいつの間に海上埋め立てにすり変わったり、辺野古基地では海兵隊の運用に支障が生じるなと、まだまだ問題は解決できなそうである。

    沖縄の建設業などの利権から軍事に関しては全く素人の防衛省の官僚、同様に米国にも専門知識をもったキーパーソンがいなかったり、政治と行政の関係について研究する際の素材として面白い。

    他の人の言い分もあることだろうが、当事者の一人から見た普天間基地の問題、なかなか面白い内容でした。何千億もの税金が投入されているので笑ってはいられないことですが。

  • 【普天間問題は外交・安全保障問題にとどまらず、病める日本の諸症状を浮き彫りにしている】(文中より引用)

    軍事専門家として名高い小川和久が、民間人として普天間基地の返還問題に携わった過去を振り返りつつ、問題の淵源がどこにあるかを探った一冊。リアリズムの欠如を憂うとともに知られざる交渉の内幕についても明かされています。

    これは2020年のトップテンに間違いなく入ってくる作品。普天間問題を政府の内側と外側の両方から観察した数少ない人物の証言として一級の価値を持っているのではないかと思います。複雑になってしまった問題の経緯を改めて知る上でもオススメです。

    圧倒的な知識量に裏打ちされたホンモノの専門家の言は重い☆5つ

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著者プロフィール

軍事アナリスト。1945年12月、熊本県生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査、隊友会本部理事などを歴任。小渕内閣では情報収集衛星とドクター・ヘリ実現に中心的役割を果たした。2012年4月から、静岡県立大学特任教授として静岡県の危機管理体制の改善に取り組んでいる。著書に『「アマゾンおケイ」の肖像』(集英社インターナショナル)、『フテンマ戦記』(文藝春秋)、『アメリカ式 銃撃テロ対策ハンドブック』(近代消防社)、『日米同盟のリアリズム』(文春新書)、『危機管理の死角 狙われる企業、安全な企業』(東洋経済新報社)、『日本人が知らない集団的自衛権』(文春新書)、『中国の戦争力』(中央公論新社)ほか多数。

「2022年 『メディアが報じない戦争のリアル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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