- Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163916422
作品紹介・あらすじ
「AIテクノロジーがいつどのように実現するか分かる」
――マイクロソフトCEO サティア・ナデラ絶賛!
「唯一無二の魅力に満ちた一冊」――ベストセラーSF『三体』作者 劉慈欣推薦!
「年間ベストブック」3冠達成!
〈ウォールストリートジャーナル〉〈ワシントンポスト〉〈フィナンシャルタイムズ〉
Amason US のベストノンフィクションにピックアップ!(976レビュー4.4★)
全米ベストセラーにして「未来予測本の決定版」が遂に日本上陸!
・元GAFAトップの人工知能学者が最先端テクノロジー解説
・鬼才のSF作家がストーリーで見事にビジュアライズ
【最高のストーリー+AI技術解説で描く「20年後の私たちの世界」】
‡AI保険が個人生活を深層学習、恋愛相手まで決める
‡パンデミック対応でAI医療が発達。非接触型社会へ
‡完全自動運転とスマートシティ。移行期の課題とは
‡没入型V Rがエンタメを一変。東京がメタバース聖地に
‡バーチャルAI教師が子どもを教育。才能を開花させる
‡量子コンピュータが発達。AI兵器が人類存亡の危機を招く
‡幸福の定義が変わり、経済モデルは全く新しくなる
われわれはA Iに降伏するのか? それとも、AIでよき未来をつくるのか?
深層学習、未来予測、自然言語処理、AI教育、ディープフェイク、自動運転、VR/AR/MR、メタバース、量子コンピュータ、仮想通貨、ブロックチェーン、AI兵器、幸福感、消える職業・生まれる職業、ベーシックインカムなど、本書一冊ですベてを網羅。
ビジネスパーソンの生き残りに必携の「SF的ビジネス教養書」が誕生!
感想・レビュー・書評
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【感想】
ChatGPTの出現により、「AIが人間にとって代わる」未来がいよいよ見えてきた、と私は思っている。
では、このままAIが進化し続けたとしたら、20年後の未来はどうなっているのか?ヒトの感性や経験など無用になるぐらい人間を凌駕し、世界を支配するのか?それとも従来のまま、人間の仕事を補助するアシスタントに過ぎない役割を担うのか?
本書はそうしたAIの未来を、2041年という時間軸に立って予測する一冊だ。筆者はカイフ・リーとチェン・チウファンの2人。リーは、40年間AⅠ研究にたずさわり、AppleやMicrosoftやGoogleで製品開発をおこなってきた、AI研究のプロフェッショナルである。そんなリーとタッグを組むチウファンは、近未来を舞台とした小説である『荒潮』を著したSF作家だ。
本書の骨格は、2041年の世界を舞台にチェン・チウファンが物語を書き、そこに登場するAI技術を、専門家であるカイフ・リーが補足・解説する、といった構成になっている。短編はテーマ別(恋愛、教育、パンデミック、VR、兵器、幸福など)に10作品収録されており、各短編でそれぞれ一冊の本にできそうなぐらい濃密にまとまっている。
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冒頭で取り上げられるのは「恋占い」という作品だ。
2041年のインドでは、『GI』というアプリを活用した保険サービスが普及している。GIには動的なAIアルゴリズムが搭載されており、生活を送る中でこのAIが「リスク要因」に応じて保険料を自動調整していく。喫煙、飲酒、暴飲暴食といった非健康的で危険な生活をすれば、その分保険料が上がってしまう。代わりに、AIに従って規律正しい生活をすれば保険料はお得になるし、GIには保険以外のあらゆる生活情報も付帯しているため、日常生活の全てを便利に済ませられる、という仕組みだ。
問題は、GIの恩恵を受けるためには、家族全員の個人情報を企業に渡さなければならないことである。そして、自身が見ているウェブページや訪れた場所といった情報まで収集され、それが保険料の形で逐一「理想的/理想的でない」と判定されることである。
主人公のナヤナは、サヘジという男の子に恋をした。しかしサヘジはカースト弱者である。ナヤナはサヘジに近づこうとするものの、GIはサヘジを「リスク対象」とみなしており、接触を避けるように誘導される。そして保険料の上昇という形で家族に恋がバレてしまう。AIが全知の存在になったことで、恋や好き嫌いといった「感情」の部分も、AIによって測られるようになってしまったのだ。
2人の恋の行方は、ぜひ本書を読んで確かめてみてほしい。
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以上のような形で、テーマ別に10個の作品が紹介される。
各作品に共通するのは、「AIによって人間のありかたはどう変わるのか?」というテーマだ。
ChatGPTの出現が示唆するように、今後のAIはかつて無いほどのスピードで発展していく。数年前には、AIが人間の領域に進出しても、人にしかできない新たな仕事が誕生し、そちらにシフトチェンジするだけだ、という論調が見られた。しかしながら、そうした楽観論はもはや終わったというべきだろう。
実際、『AI2041』で描かれるのは楽観的な世界ではない。人間らしさが発揮できる領域にまでAIが進出し、人々はAIの決定事項を追認するだけの存在になっている。ほとんどの作品で、AIを上位存在のように位置づけ、その下で暮らす人間のあり方を描写している。
しかしながら、AIに世界が埋め尽くされながらも、決してディストピアではない――そうした希望に満ちた結末を、どの作品も示している。AIには確かに未完成の部分がある。倫理的な良し悪しを判断できないAIは、人間の価値観を脅かし、不安にさせる場面がある。それでも、人間とAIは共生でき、よりよい未来を作り出すことができる。
未来への光を指し示すような本。小説部分は非常に面白く、技術解説もわかりやすく詳しい。ぜひ読んでほしいおすすめの一冊だ。
――強力なAIのせいで人間は無用階級になると考えるなら、自己改造の機会はなくなる。きたるべき豊饒時代にただ享楽し、進歩も努力もしなければ、人類文明の発展もそこで終わる。シンギュラリティが近いからと絶望と無力を感じるようなら、本当にそれが来るかどうかにかかわらず、人間は深い闇に落ちる。
それに対して単純作業からの解放や、飢えや貧困の消滅を感謝し、AIが持たない自由意思を大切にし、人間とAIの共生関係は1+1以上の価値を生み出すと信じるなら、人間はAIをよき伴侶として、前人未踏の宇宙へ勇敢に船出することができるだろう。
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【まとめ】
10編のうち、印象に残った作品を以下にまとめた。
0 まえがき
本書がめざすのは、AIの本当の姿を語ることだ。率直でバランスのとれた語り口で、建設的で希望ある内容を書く。
描くのはAIの実像だ。すでにある技術、または今後20年で成熟すると合理的に予測できる技術を紹介する。そうやって2041年の世界のさまざまな側面を描く。20年後に80%以上の確率で登場しているはずの技術をあつかう。
1 恋占い
舞台はインドのムンバイ。2041年のインドでは、GIという動的なAIアルゴリズムが搭載された保険を導入することで、最小の費用で最大の保証を実現している。GIと連携した生活アプリをインストールし、模範的な生活――保険料が下がるような健康的で安全な行動――をすれば、暮らしのあれこれを非常にお得・便利に済ませることができる。しかし、その対価として家族全員のデータリンクを企業に提供しなければならない。
主人公の少女、ナヤナは不可触民のサヘジという男の子に恋をするが、SNSでサヘジの投稿を閲覧したり、サヘジと直接接触したりすると、保険料がどんどん上がっていく。GIにとって、カースト弱者であるサヘジは「リスク対象」であるからだ。カーストはとっくの昔に法律で禁止されたが、AIはデータ分析によって潜在的なカースト差別を読みとって、それを保険料の算定というかたちで顕在化させている。
「AIによって禁じられた愛」のゆくえはいかに......。
AIは人の気持ちが読み取れない。現実に残る不公平や偏見を顕在化させる。そして、未来のAIによる深層学習には、「個人を知りすぎる」という短所が眠っている。それを解消するにはかなり手間がかかるだろうが、それでもやるべきことのいくつかは明白だ。
まず、AIを使っている企業は、どこで、どんな目的で使っているかを公表すべきだ。次に、AI技術者の訓練には一定の職業倫理が適用されるべきだ。製品に埋めこまれる倫理的選択によってだれかの人生を変える判断がなされることを理解し、ユーザーの権利を保護すると誓うべきだ。さらに、AI訓練ツールにはきびしい検査機構を埋めこむべきだ。不公平なサンプル比率のデータでモデルが訓練された場合は警告し、場合によってはその使用を不許可にするといった機能が必要だろう。また、AI監査法を制定する必要もある。
2 金雀と銀雀
金雀(キムザク)と銀雀(ウンザク)は双子の孤児。兄のキムザクは社交的だが、弟のウンザクはアスペルガー症候群を患っているため内向的である。
孤児院では最先端のAI教育を行っており、孤児一人ひとりに専用のパーソナルAIコンパニオンがつく。自分ひとりだけの「先生」からマンツーマン教育を受けることで、眠っている才能や個性を効率的に伸ばしていくことができる。キムザクとウンザクは自らの性格に適したコンパニオンを作り出し、キムザクは競争心と知性を、ウンザクは創造力を伸ばしていった。しかし、相反する性格からか、二人の仲は次第に悪化していく。
キムザクとウンザクは養子として別々の家庭に引き取られる。キムザクは、裕福だが規律の厳しいパク家へ引き取られた。パク家の他の子どもたちは、10代にして最先端分野で活躍している天才ぞろい。キムザクはそんなエリート一家の中で投資家になるために訓練を積んでいく。一方のウンザクは、トランスジェンダーの芸術家夫妻に引き取られるのだが、集団生活になじめず、仮想空間に没頭していく。
二人はAIによって育てられ、AIによって動機付けられ、そしてAIによって変化していく社会の中で成長していくのだが……。
AIが教育現場の多くの場面を肩代わりすることで、教育コストは下がり、より多くの子どもたちが平等に学ぶ機会を得られるようになるだろう。エリート教育機関に囲いこまれていたトップクラスの教師や教育コンテンツが開放され、コストがゼロに近いAI教師によって広く普及するだろう。
一方で経済的に豊かな国や地域では人間の教師を多く育成し(あるいは家庭教師を雇って)、少人数教室を実現したり、専任のメンターやコーチにするだろう。人間とAIの教師は共生可能であり、柔軟な新しい教育モデルをつくれる。AI時代は教育機会を大きく広げ、生徒一人ひとりの能力を引き出すはずだ。
3 ゴーストドライバー
主人公はスリランカ人の少年シャマル。シャマルはVRドライビングゲームのトップランカーである。
2041年の世界では自動運転レベル5が達成されているが、AIによる操作が役に立たない場面がある。大規模災害でインフラが麻痺しているときだ。
シャマルはVRゲームでの挙動を現実世界にフィードバックする装置を使って、自動運転車をマニュアル操作し、災害の被災者をリモートで救助していくのだが......。
真の自動運転車の実現に必要なのは一個のブレークスルーではなく、何十年にもおよぶ試行錯誤の積み重ねだ。
頭においておくべき重要なことは、現在の自動車の単純な発展版として自動運転車が登場するわけではないということだ。自動運転は完全スマート都市インフラの一部として実現するだろう。作品中で描かれたような相互接続技術インフラの存在が前提となる。
レベル5実現の最大のハードルは、AIは大量のデータで学習させなくてはならないところにある。そのデータは、多くのシナリオでの現実の運転を反映したものでなくてはならない。しかし、そこで求められるシナリオの多さと多様さは膨大だ。路上にありうるあらゆる物体と、移動方向と、天候状況のすべての組みあわせをデータで収集する方法は、現在のところない。
しかしある大きな前提に取り組むことで、開発を加速できる可能性もある。レベル5は都市や道路状況を正確に把握する必要があるわけだが、それが「情報化された都市や道路」であったらどうか。つまりセンサーや無線通信が道路に埋めこまれ、前方の危険の有無や、見えないところの道路状況を道路が車両に教えられたらどうか。今後の新しい都市建設で中心街の道路を二層構造にして、自動車と歩行者を完全に分離して衝突の可能性をなくしたらどうか。インフラを再整備して歩行者が自動運転車に近づかないようにすれば、レベル5車は大幅に安全になるし、早い時期に実現できるだろう。
4 人類殺戮計画
国家予算級の大金が入った暗号通貨のウォレットが、何者かによって盗まれた。量子コンピューターレベルのパワーが無いと実現不可能な犯行だ。
盗難事件から2週間後、世界の主要な石油輸送航路が通る7つの要所がドローンによるテロ攻撃にあう。ホルムズ海峡、マラッカ海峡、スエズ運河、エーレスンド海峡、ハブ・エル・マンデブ海峡、トルコ海峡、パナマ運河。主要産油地から世界各国へ運ばれる、1日あたり6,000万バレル以上の原油の大半が、これらの水路を通る。
石油なしに成立する商品やサービスは世界に存在しない。影響はすぐにあらわれた。物価の急上昇、株式市場のパニック、インフレ、交通渋滞。物流とサービスは途絶し、金融システムは崩壊する。車は走らず、飛行機は飛ばず、船は出ない。プラスチックは生産できず、代替エネルギーはない。地域資源の略奪、局地戦、全面戦争。
やがて世界中で、重要人物がドローンによって暗殺され始めた。
この世界での、地球規模の犯罪活動のしくみについては次の通りだ。
非中央集権的でありながら、ブロックチェーンとAI技術で高度に組織化されている。あらゆる取り引きは暗号化され、製造と輸送は自動化されている。犯罪主体と犯罪行為は時間的にも空間的にも分離され、暗号化された契約のみでつながっている。武器は全自動で製造、配送される。麻薬は無人の山間部でロボットによって栽培、収穫、精製され、無人の自動運転車で商業地へ運ばれ、ドローンで末端へ配送される。買い手はオンラインで購入ボタンを押して、人目につかない暗がりで待つだけ。人手を介さないので、昔のギャング映画の定番だった裏切り、密告、潜入捜査などは起こりえない。もし警察に取り引きを嗅ぎつけられても、モジュラー構造のその部分を切り離すだけでいい。すぐに代替構造ができて、損失は最小限ですむ。
ブラックリストに記載された重要人物がすべて殺害されると、ドローンは活動を停止した。
次のテロ計画は、宇宙貨物に偽装した核爆弾の打ち上げだった。成層圏で核爆発を起こすことで電磁パルスを生じさせ、地球上の電子設備を全て破壊する。
テロを計画したルソーが望んでいたのは、人類の活動にブレーキをかけることだった。人類社会を情報革命以前にもどしたいのだ。グローバリズムの網の目を断ち切り、二酸化炭素排出量を低下させ、自然が自己回復する猶予をつくろうとしている。
「人間の活動を原始生活に戻す」。終末の日を目前にして、テロ捜査官のロビンが選んだ選択とは......。
IBMのロードマップでは、量子コンピューター(QC)の量子ビットは今後3年間に倍々で増加し、2023年には1,000量子ビットのプロセッサができると予測している。4,000論理量子ビットあればそろそろそれなりに有用な応用計算ができる。そこで一部の楽観的な予測では、5年から10年で量子コンピュータが登場するという見方もある。
しかしそのような楽観主義者は見落としている困難がある。IBMの研究者は、量子ビットが増えるほどエラーの制御が難しくなると認めている。この問題に対処するには、複雑で繊細な機器を新技術と精密工学で製造しなくてはいけない。また一個の論理量子ビットをエラー訂正のために多数の物理量子ビットで構成し、安定性とエラー耐性を持たせなくてはならない。となると、4,000論理量子ビットの性能を発揮するQCをつくるには、おそらく100万個以上の物理量子ビットが必要だろう。
たとえこうして量子コンピュータの実用運用に成功したとしても、量産となると話はべつだ。そして古典コンピュータとはまったく異なるプログラムで動くので、アルゴリズムを一から開発しなくてはならない。ソフトウェアツールも新しくつくりなおすことになる。以上のような問題を考慮して、ほとんどの専門家は実用的なQCの実現に10年から30年かかると予想している。
5 大転職時代
転職斡旋業界に突如現れたオメガアライアンス社は、人員整理の対象となった労働者を「架空の仕事」に割り当てていた。その仕事は、VRゴーグル越しに、遠隔地にある建設現場の資材を組み立てて行く作業なのだが、実際にはそんな現場は存在しない。全ては美麗なシュミレーションゲームであり、人間に「仕事している感」をもたらすための幻想であった。
いくら失業者の再訓練に労力をつぎ込んでも、日夜進化し続けるAIには勝てない。しかし、人としての尊厳――社会のために価値を生み出しているという感覚――まで取り上げてしまっては、社会の崩壊につながる。そこで、人員整理の対象者をAIによって生かし続けていたのだ。
AIが、住宅ローンの審査だけではなく、建設作業のような肉体労働、さらには人間の従業員の採用や解雇までも行う未来で、働くことの意義はどうなってしまうのか.......。
AIは多くの業務を人間よりうまくやれる。しかもコストはゼロに近い。この事実は莫大な経済的利益を意味するが、同時に前例のない規模で人間の仕事を奪う。ブルーカラーもホワイトカラーもひとしくこの混乱にのみこまれ、人間の仕事の40%が、2033年までにAIと自動化技術によって代替可能になるだろう。
失業率の上昇は、問題のごく一部でしかない。失業者が増え、わずかに残った仕事を奪いあえば、平均賃金は下がる。それにより富の格差はさらに拡大する。AIが多数の人間の職業を消滅させる一方で、これらの新技術を掌握した巨大テクノロジー企業はさらに巨万の富を築く。このままだとAIは21世紀の新たなカースト制度を生み出すだろう。頂点には一握りのAIエリートが君臨し、その下に比較的少数の特別な労働者がいる。彼らは多領域のスキルセットを持ち、戦略性とプランニングと創造力を多く発揮する(ただし賃金は低い)。その下は大多数の無力で苦しむ大衆だ。
AIによる職業置き換えの大波を受けて、単純作業の職種はほぼ絶滅する。このような仕事の多くは初心者むけだが、それがなくなったら、初心者はどうやって学習や経験を積み、単純でない上級者むけの仕事をめざせばいいのか。仕事のスキルを身につける手段は自動化の時代にも残さねばならない。実地で学び、能力をつけて上をめざせるようにしなくてはいけない。下積みと呼ばれるような地道な仕事はなくなり、VR技術で代替されるだろう。 -
AIが築く20年後の近未来社会を、10のSF短編とそのテクノロジー解説、という形で描き出した書。原書は2021年刊行。
未来1「恋占い」、未来2「仮面の神」、未来3「金雀と銀雀」、未来4「コンタクトレス・ラブ」、未来5「アイドル召喚!」、未来6「ゴーストドライバー」、未来7「人類殺戮計画」、未来8「大転職時代」、未来9「幸福島」、未来10「豊饒の夢」の10篇。
いずれのストーリーも、AIが(基本的に)個人と社会にいい影響を与える明るい未来を描いている。「AIはかつてない富を生み出し、人類との共生関係でその能力を引き出し、仕事、遊び、コミュニケーションを改善し、単純作業から解放し、…豊饒時代に導く」。ただし、「AIのバイアス、安全リスク、ディープフェイク、プライバシー侵害、自律兵器、職業の置き換え」などの負の面も併せて描いている。これらの問題の「根本的原因はAI自身ではなく、それを使う人間の悪意や不注意」であり、「これらを解決に導くのは、人間の創造性、機転、粘り強さ、知恵、勇気、同情、そして愛」だという。
読み物として単純に面白かった。また、物やサービスの「欠乏がほぼ無くなり、無料に近いコストで生産され、…ほぼ無料ですべての人々にいきわたる」豊饒時代が到来する、との予測にも興味をそそられた。(そんな時代が本当に来るかどうかは怪しいが)豊饒時代を想像するのは楽しい。「アーリーリタイアをした若者に快適な生活を提供しつつ、勤勉な労働者が新しい技術を身につけ、趣味に生きる人が夢をかたちにし、やさしい介護士が愛を周囲に伝え、成功者が尊敬を勝ちとり、夢みる者が世界を変えるインクルーシブな」社会。仕事で稼ぐことが不要となり、貨幣がなくなり、貧富の差がなくなり…。豊饒時代に自分が生きてるとしたら、果たして何をしているだろうか? 気の向くまま本を読み、友人と酒を酌み交わし、旅行を楽しみ、乞われて時々社会の役に立つ貢献をする。これかな! -
AIに関する短編SF小説+その解説という中々ユニークな構成。
短編SF小説なので、ストーリー展開に面白みがある訳ではないですが、
未来の世界を妄想することは結構ワクワクします。
ただ、まだ誰も見たことのない世界を
文字にして伝えるというのは結構な難易度なようにも思え、
小説ではなく映画として見れたらさらに面白かったのに、、
というのが正直な感想。
個人的には、8章の話が興味深かった。
BI(ベーシック・インカム)が成り立たない世界感や
人はみな労働するんだけど、できの悪い人はAI相手に
架空の労働(意味のない労働)をさせられるってのは、
中々のホラー(でも本人は無意識)で、
あり得る話でちょっと怖かった。
AIに無限の可能性があるみたいな、
楽観論で書かれているのではなく、
ちゃんと現状のAIの限界も踏まえて
フェアに書かれているところが好印象。
「AIに仕事が奪われる」みたいに
盲目的に危機感を持っている人は、
この本を通じて、AIの可能性と限界について、
フェアに知ることから始めたらいいんじゃないでしょうか。 -
分厚さに圧倒されましたが、なんとか読了。AIが発達した2041年についての近未来SF小説10遍とその技術的解説。すくなくとも世界は終わりそうもないので安心しました。
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ものすごいツボに入った。
2041年に起こりうるAIによる変化が起きた世界を物語として提示しつつ、その技術的な説明もセットで掲載。
物語がどれもすごく興味深く、それだけで読んでいてすっごく楽しい。説明もわかりやすい。
リスクはあるとは思いつつも、早くこんな未来が来て欲しい。 -
仮想現実、拡張現実、複合現実など新たな技術の最大の課題は想像力、コンテンツ制作だ。AI による仕事は今後あらゆる面での雇用問題が噴出する。人間の仕事の40%が2033年までに代替可能となり「大転職時代」になると予測している。
AIの苦手分野とは3つ、創造性、共感、それに器用さである。そんな中で有望な職業とは。認知系職業:ソーシャルワーカー、キャリアカウンセラー、芸能人、エキスパート。身体的職業:介護士、スタイリスト、理学療法士、トレーナー
量子コンピュータ(ビットではなく、素粒子を使う量子ビットにより格段に性能拡大と開発スピードの短縮で、費用も安くできる、と言う。だが、些細な振動、電気干渉、温度変化に弱く、自律性が今後の課題となる。それは自律兵器など人類の存亡をかける「悪」の世界が量子コンピュータにより凌駕することは間違いないがその時代に人間は如何なる対応が出来るだろうか。更に、2041年には、非物質化が旺盛となる。それは物理的製品はソフトウェアに吸収され無料化に近づくと言うことだが、製薬、遺伝子治療などはコストは下がるが生物体として残り、食品産業も動物などの肉等合成食品などで電気、水、肥料等だけで食材革命が起こる、と言う。「豊饒時代」は人々に仕事が無く、金融崩壊から貨幣も通用しない世界が来る、というが量子コンピュータ:自律ロボット等が想像を絶する世界を作ることは間違いない。 -
かなりのボリューム、ゆっくり読まないと疲れます(笑)
G検定受験前に読むと、物語として頭に入るのでよかったかも。
前半は楽しいSF世界だが、後半はデストピアを連想させる深刻さもある。いつの時代も、優れたものは諸刃の剣。人間力が問われる。
量子コンピュータの世界をもっと知りたい。 -
よくある未来予測の本と思いきやまさかのSF小説の短編集のような構成。
人工知能学者とSF作家がタッグを組んで、2041年の世界を舞台に実現しているであろうテクノロジーを題材とした10の物語と、その解説が収録されている。
読み物としても非常に面白く、20年後に実現しているであろう技術がすんなりと頭に入ってきた。
近未来を舞台とした小説という形式なので多少の誇張や、マッドサイエンティストが出てきたりとエンタメ要素が強いストーリーもあるが、各話の後に続く解説によって、登場する技術に対する説明がわかりやすくされていてとても親切な本だと感じた。
ビジネス書としてはもちろん、SF小説が好きな方も十分満足できる内容だと思います。 -
AIの進歩に関する10の短編とそれに使われている技術説明の部分の抱き合わせ。
どのお話もとても面白かったですが、個人的には「コンタクトレス・ラブ」「アイドル召喚!」「幸福島」あたりが興味深かった。
「高度に発達した科学は魔法と区別がつかない」
とは有名な言葉ですが、この中で使われている技術は時に魔法のようです。
AIはある種人間を超える力で、新しい世界を切り開いてくれます。
もしかしたら労働という概念もなくなるかもしれない。
その中で人はどのように自己実現していくのか。
それを問いかける話でもあります。
技術説明部分もとても丁寧で、勉強になりました。
いつもすいびょうさんの感想のすごさに、
驚いておりますΣ(oдΟ;)
ChatGPTすごいですよね。
ブラ...
いつもすいびょうさんの感想のすごさに、
驚いておりますΣ(oдΟ;)
ChatGPTすごいですよね。
ブラウザ検索が、AIに変わる日が近づいているんですかね…
生徒は大学のレポートをAIに作らせて、教師はそのレポートがAIで作られたものを判別するために、AIを使う。
そんな話を耳にして、なんか、とても笑っちゃいました。
私も先日ユーザー登録して、
Can you speak JAPANESE?
と打ったら、日本語で答えてくれました(笑)
そのレベルの使い道しかない私です…
例えば本書で出てくるチャットAIは、レポートを提出し...
例えば本書で出てくるチャットAIは、レポートを提出したらAIが採点し、ミスした部分に基いて新たに課題を作ってくれたりします。個人の性格・知能・ステージに合わせたパーソナルなAIが、才能を100%発揮できるようにズバズバと教育してくれる......とんでもない世界です笑
ChatGPTは、私も使い道に困って持て余していますが、いずれそれもAI側から導いてくれる、そんな世界になるのかもしれませんね。
返信ありがとうございます。
すごい世界ですね、ほんと。
いろいろなところで活用の幅を広げていることは想像で...
返信ありがとうございます。
すごい世界ですね、ほんと。
いろいろなところで活用の幅を広げていることは想像できます。カップラーメン作る時に、Siriにタイマーカウントさせているだけではダメですね…ww