トヨタ 中国の怪物 豊田章男を社長にした男

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163918051

感想・レビュー・書評

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  • 「トヨタ 最大の秘密を知る男の『告白』」という帯のついたトヨタの中国進出の立役者、服部悦雄氏についての1冊。本好きの先輩からお借りして、ほぼ一気読みで読了しました。
    なかなかイカツい表紙で、豊田章男さんの表情もなんか怖い(笑 これはオススメされなかったら読まなかったなぁ。(しかし、豊田章男さんと奥田碩さんが並ぶ表紙というのも味わい深いし、この3人の位置関係もなかなかですね)

    本著、4割くらいはトヨタとは関係のない、服部氏の戦後中国での生い立ちが語られるのですが、強烈な印象を残すのはむしろこっちだなぁと。
    「あまり話したくないんだ」と服部氏が著者に言いながら、それでも著者が引き出した(と思われる)大躍進政策に文化大革命。後者は『三体』でもその異常さが描写されていましたが、本著の切り口でもやっぱり凄まじい。政治で人は死ぬんだなぁ。
    しかも、服部氏はそこに「悪質分子」とされる日本人として生きてきたというドのつくアウェー。。
    「日本人は中国人をわかってないんだよ」という服部氏のセリフ。本著を読むと腑に落ちます。

    トヨタに入って奥田碩さんと出会ってからの服部氏は、中国を中心に活躍し、特に豊田章男さんの下では異世界転生小説バリの無双をしていくのですが、辛い若き日とのコントラストがより際立つようにも感じました。
    しかしこれだけの大仕事を成し遂げながら、最終章で「中国人になりきれない中国人で、日本人になりきれない日本人」と自らを評する服部氏。切ないなぁ。。

    本著、インタビューと回想、史実の記述を上手く組み合わせて飽きさせない、魅せる1冊でした。
    著者の「主な著書」で紹介されているものだけでも興味ある人物が複数挙げられていて、この筆致で読めるならぜひ読んでみようと思いました。本著内でも、さりげなく著者の別作品の紹介がされているのが上手いなぁと(笑

  •  これは面白いです! 自動車版『大地の子』で、タイトルとしては「中国の近現代史と自動車産業」のほうが正確かと思います(これだと売れないと思いますが…)。

     中国で生まれ育った服部悦雄という元・トヨタ中国事務所総代表のインタビュー録です。「服部悦雄」は、『トヨトミの野望』では「八田高雄」で登場しますが、その『トヨトミの野望』も織り交ぜながら展開します。但し、こちらの本では全て実名。氏の経歴に合わせて、満州国解散から習近平時代までが描かれ、これを読むだけで中国の近現代史がわかります。

     氏は、中国人の本質は「好死不如懶活(きれいに死ぬより、惨めに生きたほうがまし)」と言い切ります。毛沢東の大躍進運動(「雀撲滅運動」は初めて知りました)や文革、天安門事件など、マクロ面のみならず、この「本質」を裏付ける庶民の生きざまも描かれ、自動車事業に関係なくとも読める内容です。

     児玉博氏は、かつて故・西田厚聰氏とのインタビューによる『テヘランから来た男-西田厚聰と東芝崩壊』を上梓していていますが、どちらもストーリー展開が秀逸。今回も一気読みコースでした。

     実は、以前、トヨタが天津に進出する際に、天津汽車(後に第一汽車に買収)と部品合弁会社設立の交渉を担当しました。この本にある通り本当に大変で(一冊の本が書けると思った)、かつての体験を思い出し、ドキドキしながらページをめくりました。それ故とも言えますが、面白さは太鼓判の一冊です。

  • 中国で終戦を迎え大躍進政策や文化大革命を生き抜き、トヨタ中国の総責任者まで努めた服部氏のインタービューを基にしたドキュメンタリー。氏の生い立ちたどる中で、インタービューで引き出される凄惨な実体験の数々。中国の近代史から戦後史のリアルな実態が非情にも炙り出されている。中国建国の英雄とされている毛沢東は日本の歴史の教科書でもそのような紹介がされているが実態は大躍進政策や文化大革命といった失政によって1億人近い人民を死に追いやった虐殺者でもある。全土で雀を徹底的に駆除する事を推奨された結果、害虫が発生して作物が育たなくなり飢饉が発生し4〜7千万人もの餓死者を生んだといあれているが、同じ事を書いた体験談が、評論家の石平氏の半生記でも記述されていて、それが偽りのない話であるという事が改めて思い知らされた。

    冒頭に「日本人は中国人を分かっていない、本質をみていない」と言って服部が割り箸の袋の裏に書き留めて著者に見せた文字。
    「好 死 不 如 櫑 活」hao si bu ru lai buo
    「きれいに死ぬよりも惨めに生きたほうがまし」
    これが中国人の本質だという。桜が散るみたいに潔く死ぬなんて、中国人は考えないと。

  • 好 死 不 如 懶 活
    hao si bu ru lai huo
    きれいに死ぬよりも、惨めに生きたほうがまし

  • トヨタの中国進出の内容でしたが、自分の思っていた内容とは違ってました。ちょっと残念でした。

  • 「中国」について書かれたものは三国志以来。
    それくらい無縁でしたが、身近なトヨタの話と相まって、とても面白く読めました。
    文末の参考書籍についても機会があれば読んでみたいと思いました。

  • これは面白い。
    トヨタ自動車の中国市場を取り巻く歴史とそこに関わる歴代の社長陣を、服部悦雄という中国育ちの日本人で中国トヨタの立役者となった人物への対話から描いている。
    ストーリー展開が秀逸で、あっという間に読み終えてしまった。
    服部さんの生い立ちにも関わる、かつ、中国市場を語る上で欠かせないポイントが多いため、本の前半は満洲国解散〜近代における激動の中国近代史が記載されている。
    その中で、中国人はどんな思いでどんな生活をしていたのかを服部さんが見た世界も含め記載されている。
    何度も中国史は読んで来たがこんなにわかりやすく、イメージしやすく理解できるものは初めてだった。

    後半ではトヨタ自動車の中での出来事が記載されている。
    以前中国で働いていた経験からも、中国でのビジネスや中国人らしさというものには思い当たることが多かったが、特に服部さんが中国人らしいとして周囲の日本人から敬遠されるシーンもありありとイメージがわいた。

    本書の中でも紹介されていたが、トヨタ自動車をモデルにしたトヨトミシリーズと、本書の作者である児玉さんが書かれている テヘランから来た男 西田厚聰と東芝壊滅も読んでみようと思う

  • 【豊田章男と奥田碩。側近が明かすトヨタ世襲の暗闘】豊田章男に与えられた社長への試練。絶体絶命の中国ですがったのは、トヨタ社内で「バケモノ」と呼ばれる、中国育ちの日本人だった。

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