種田山頭火の死生: ほろほろほろびゆく (文春新書 8)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166600083

作品紹介・あらすじ

酒に溺れ、家を捨て、全国を行乞した俳人山頭火。歿後六十年、その句はますます多くの共感を得ている。旅から旅への人生。しかし彼は単なる漂泊の自由人だったのか?否。幼い日に見た父の放蕩、母の自裁、家産の瓦解…。自分をとりまくすべてが滅びゆくとの強迫観念にさいなまれ、出口を求めつづけた神経症者の必死の吐露が彼の句だった。永年山頭火を"心の友"としてきたアジア経済論の第一人者が、その生涯と内面の苦悩に肉迫する。

感想・レビュー・書評

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  • 自分に自信が持てず、酒に溺れ、自己嫌悪に陥り、また酒に塗れて暴れ、どんなに歩いても執着は消えず、どれほど甘えても安寧は訪れない。
    こうまで生々しい“神経症者”山頭火に、新書で出会えるとは思わなかった。


    ○暑さきはまる土に喰ひいるわが影ぞ

    山頭火の弟が縊死した町、夏が確かにギラギラしてた。



    ○どうしようもないわたしが歩いてゐる

    山頭火が結庵した町、皆優しかったのにね。


    ○死ねない手がふる鈴ふる

    偶然とはいえ所縁の場所を旅してみたけれど、軽々しく、お気に入りの詩人だなんて言えなくなっちゃったな。

  • 読み応えあり。しっとりと悲しみがつまっていてよかった。美しい破滅の物語だなぁ…と思った。
    うちの父もそうだったけど、きっと酒があなたを生かしてくれていたんだ。大種田と言われるほどの大富豪、大地主の凋落ぶりが悲しい。誰かに呪われているんじゃないかってくらいの落ちっぷり。

    母と父から受け継いでしまった忌まわしい血。「惑乱と放蕩」の血筋に怯えながら生きる。そう思っていたのは本人だけかも知れないけど、こうも不幸が続くとそう思わずにはいられないよね。著者の物語の書きっぷりが圧巻だった。

    父の浮気・蒸発放蕩、母の身投げから始まった、身内の不幸。姉妹兄弟の病死に自殺。家産の瓦解に目を覆う。これはほろほろほろびゆくのも頷ける。漂白し俳句を詠み、正一は山頭火になっていったんだと思った。

  • 著者はアジア経済についての専門家ですが、本書は山頭火こと種田正一の生涯を、分かりやすく解説した本です。

    酒と旅、そしてつねに自己に対する絶望に苛まれつつ生きた山頭火の生涯を、親しみやすい文章で綴っており、おもしろく読めました。

  • (1998.12.19読了)(1998.10.20購入)
    ほろほろほろびゆく
    (「BOOK」データベースより)amazon
    酒に溺れ、家を捨て、全国を行乞した俳人山頭火。歿後六十年、その句はますます多くの共感を得ている。旅から旅への人生。しかし彼は単なる漂泊の自由人だったのか?否。幼い日に見た父の放蕩、母の自裁、家産の瓦解…。自分をとりまくすべてが滅びゆくとの強迫観念にさいなまれ、出口を求めつづけた神経症者の必死の吐露が彼の句だった。永年山頭火を“心の友”としてきたアジア経済論の第一人者が、その生涯と内面の苦悩に肉迫する。

  • 「分け入っても分け入っても青い山」
    この句がずっと好きでした。そんなに苦しい境地の中で詠んだなんて全然知らなかった。

  • 種田正一。

  • 駄目人間友の会

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著者プロフィール

拓殖大学元総長

「2022年 『世界の中の日本が見える 私たちの歴史総合』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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