- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166601714
感想・レビュー・書評
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勉強中。
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サブタイトルは<開国から戦後復興まで>。
<はじめに/「はやり歌」の近代>とあり、以下目次は。
第一章 開国と攘夷のはざまで
第二章 近代日本の幕明け
第三章 異文化との接触
第四章 メディアと大衆化
第五章 政府の介入
終 章 焦土から復興へ
この一冊の面白さは,さまざまな<はやり歌>を、とことん調べて具体的に実証することにもある。
例えば戊辰戦争倒幕の歌「宮さん宮さん」の謎。このトコトンヤレナ節について、<本当に歌いながら行軍したのか>にはじまり、イギリスのオペレッタ<ミカド>にまで言及。またこのオペレッタでは秩父事件が起きた,その秩父が舞台となっていたことなど。
また「東京音頭」については、メディアの大衆化と低俗化という見出しで12ページにわたり記述されるが、この低俗化の次に検閲の時代を迎える等々。
戦時下での<はやり歌>としてわたしの記憶にあるのは、奉祝「紀元二千六百年」。この一般募集の歌詞に18,000余が応募したという熱気は,ヒトラードイツと同じく、日本の軍国主義化にわが国民は魘されていたのだろう。それは国民学校二年生の時だった。そして「露営の歌」「父よあなたは強かった」「愛国行進曲」などなど。
この軍国主義時代の<国民歌謡><新国民歌>等などの作詞者には、北原白秋・佐藤春夫・土岐善麿。斎藤茂吉・高村光太郎・西条八十等がいる。そして作曲家には山田耕筰・池内友次郎・信時潔・大木正夫・服部良一・堀内敬三・中山晋平などが。
しかし戦争批判には到底及ばないが,この時期の歌について、百田宗治や近衛秀麿また萩原朔太郎さらに兼常清佐らが新聞紙上などで批判している由。
どの芸術にも時代の刻印は捺される。日本近代史の光と影を宿す<はやり歌>だった。