新約聖書 2 (文春新書)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166607822

作品紹介・あらすじ

イエスの死後、キリスト教はいかにして広まったか。回心したパウロの役割は。黙示録に著された国家の恐るべき姿とは。今を生きるわれわれにとって尽きせぬヒントが、聖書には書かれている。

感想・レビュー・書評

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  • 巻一と同じく佐藤優氏による安心の解説がついてくる。
    彼が鈴木宗男事件で逮捕された時の独房での心情や、クリスチャンだった彼の母親の話も、聖書とからめて書かれており、そちらも読み応えがあった。

    イエスの復活が幻影のようなものであったと仮定して、源氏物語の六条御息所の霊と比較している興味深い解説もあった。
    ちょうど源氏物語を読みはじめたところなので、御息所の章を読むのが楽しみだ。

    使徒言行録、パウロ・公同書簡集、ヨハネの黙示録と読み進めていくに従って、輪郭がつかめてきた気がする。

    欧米人だけでなく、ユダヤ教徒、イスラム教徒を含めた一神教信徒は、いつかこの世の終わりが来て、そこで歴史が完成すると根底では考えており、そこを意識すると世界を動かす原理が見えてくる。

    汝の隣人を愛しなさい、の愛は、漢字そのままの意味では表現しきれていないこと、自分の力ではどうにもならない切なさのようなものがこもっているという話も興味深い。

    使徒言行録では、キリスト教の開祖パウロの物語をはじめて詳しく知った。
    元はキリスト信者を迫害する側だったことも読むまで知らなかった。
    教祖はイエス、開祖はパウロ。

    今までは聖パウロ教会や聖パウロ生誕祭といった言葉を耳にしても、パウロというのはどこかの誰かの名前としか思っていなかったが、今では聞くたびに開祖パウロの物語を連想することができる。

    ほかにも伊作という名前の男性や、聖路加病院といった言葉を耳にしたときも同様に、新旧約聖書のエピソードが想起されるようになった。
    ちょっとは西洋的な教養が身についたかも。

    書簡集は、それぞれ違う教会にあてて書いてはいるが、ほとんど同じような主張が繰り返されるので、正直いうと初心者には退屈する部分がある。

    ただパウロの地方教会ごとの好き嫌いがだいぶはっきりしていて、信仰はすばらしいと褒めちぎっている手紙もあれば、何度言ったらこの愚かな人たちはわかるのかと嘆いているものもあって、神の子イエスとは違う、完全なる人間くささが面白い。

    あとパウロは女が出しゃばるのが個人的に嫌いだったと見える。
    女は黙っていなさい、慎み深くしなさい、教会の行事でわからないことがあっても、じかに質問しないで後で夫に聞きなさい、といった響きの戒めがずいぶん目立った。

    ヨハネの黙示録は間違いなくこれ以上の悪夢はないほどの、おどろおどろしい終末だ。
    地震、稲妻、雹など当時の人間の発想力で思いつく限りの災いや、頭や腕がいくつもある竜やヘビなどの怪物が出てきて、いろんな街や人が滅亡させられる。

  • 新共同訳の新約聖書+佐藤優による簡単な解説,といったスタイルの新書。今やスマホアプリで聖書を読める時代にもなっているが,ビジネス書らしでは新書が有利かもしれない。

  • 宗教

  • 新書版新約聖書の後半である本書には、
    使徒言行録、書簡集、そしてヨハネの黙示録が収められている。
    聖書というものは、断片的に触れることはままあるが(コリントの信徒への手紙などは、結婚式で聞いたことがある向きも多いだろう。)、通読する機会はなかなかない。
    今回、一連の福音書とあわせて通読しいくつかの点と点が繋がった。

    たとえば、使徒・信徒たちを迫害する側であったサウロ(パウロ)の回心というのはキリスト教が伝搬していく上で非常に重要な出来事だったことが伺える点や
    そのパウロの思想が手紙から汲み取れ、またそれがときとともに変わる点、そして異なる使徒・信徒により異口同音に語られることでキリスト教の本質としてどこに力点があるのかがうかがい知れる点など。

    最後の黙示録については佐藤優氏の解説と併せて読むことで、俯瞰的な視点からこの少しグロテスクな預言を捉えることができる。

    禁欲的な考え方、勤勉さの奨励、大局観などは現代のいわゆる「ビジネス書」にも通じるところがあり(7つの習慣など、実に聖書的である)、そういった学びを得たいという動機から手にとるのもありなのではなかろうか。

  • 佐藤優氏が「新約聖書を宗教に特別な関心をもっていない標準的な日本人に読んでもらうために書いた」という、全2巻の第2巻。
    第2巻では、新約聖書27巻中、4福音書以外のすべての文書が収められている。
    イエスの生涯について記した福音書に対して、その他の文書はイエスの死後について扱っている。
    著者はそれらの文書について以下のように述べている。
    「使徒言行録」・・・前半は「ルカによる福音書」に記された12使徒に含まれるペトロやヨハネが活躍し、後半は12使徒ではないパウロの物語である。しかし、パウロがいなければ、イエスの教えはユダヤ教の一分派にとどまり、世界的な広がりを持つキリスト教に発展することはなかった。ユダヤ教徒サウロがキリスト教徒パウロに変わる「使徒言行録」の物語は、キリスト教が反知性主義の立場をとり、社会的地位や知的能力だけで人間を評価することの無意味さを説いていることを示している。
    「書簡集」・・・収録されている21通の手紙は、「パウロ書簡集」13通(しかし、パウロ自身が書いたと確定されているものは7通)、「公同書簡」7通、「ヘブライ人への手紙」の3つのグループに分けられる。どの手紙においても「イエスが救い主(キリスト)」である点に揺るぎはないが、救済がどのようなものであるかは示されず、それは各人がどうイエス・キリストを通じて神と向き合うかということにかかっているというキリスト教の救済観を表している。
    「ヨハネの黙示録」・・・欧米人の発想の根底に刷り込まれ、ユダヤ教徒もイスラム教徒も自明として共有している、「いつかこの世の終わりがある。この終わりが同時に歴史の目的と完成である」という終末論の特徴が描かれている。現代世界を動かす目に見えない論理を捉える上で、終末論の論理を理解することはとても重要である。
    各文書の本文訳のみではなく、ビジネス関連の著書も多い著者が、聖書が欧米のキリスト教文化圏の発想・価値観にどのような影響を与えているのかという観点からの解説も加えており、有益な書である。
    (2010年12月了)

  • 「使徒言行録」と「ローマ信徒への手紙」およびその解説のみ読んだ。「使徒言行録」は、イエスをパウロに置き換えた福音書のようなものであるとの印象を持った。また「ローマ信徒への手紙」を読んで、ルターが指摘するとおり、それがキリスト教の教えの核心となるテキストであることを確認できた気がする。両テキストを読んで、キリスト教におけるパウロの存在の大きさを少し実感できた。

  • 使徒行伝と書簡、黙示録が収録されている。

    使徒行伝は続・福音書でキリストの死後から、
    パウロがローマにたどり着くまでの話で、
    書簡集はキリスト教の教義が説明されており、
    ヨハネの黙示録は世界の終末が描かれている。

    やはり自分はキリスト教徒にはなれないなあと思いつつも、
    「神の計画」「御心のままに」という表現に感銘を受けた。
    佐藤優氏は獄中で聖書を読み、イエス・キリストの受難と
    その後のキリスト教の勃興に勇気付けられていたらしい。
    なるほど。神の与えた試練には素直に従った方が良い。

  • 「わたしはアルファであり、オメガである。」

    今作では、使徒言行録、手紙、黙示録が収められている。その中でも、ヤコブの手紙、ペトロの手紙、ヨハネの手紙、ユダの手紙が読んでいてい面白かった。それぞれ12使徒の一員としてキリストをたたえながらも、それをどのように説くかについて、また、どのような言葉を使うかについて個性が見られたからである。その中でもペトロの手紙が、いかにもキリスト教っぽい内容になっている。ヨハネは書き方が中二チックである(このような言いぐさが許されるのなら)。

    ヨハネの黙示録はとても恐ろしいものだった。7つの天使が吹くラッパは災いをもたらし、裁きを行う。ヨハネはこれを神→キリスト→天使経由で聞いたと書いている。しかし、その内容はやはり中二的な世界の終焉であり、もしかしたらヨハネはやばい奴なのかもしれない、と思いながらとても気楽に読むことができました。もちろん、裁きがこのように行われる可能性がゼロではないので、キリストを厚く信仰する教徒にとっては、、宗教を捨てることはとてもじゃないけどできないだろう。

    1、2を通して少しは聖書の世界に近づくことができたと思います。また、古典を読んでいる際、キリスト教の話がすっと理解できるようになり、今まで以上に楽しい読書生活を送れるようになってきつつあります。

  • 新約聖書とは、神とナザレ人イエスに関する資料集、論文集と捉えると良いかと思える。そこに書いてある一言一句というよりも心に湧き上がる神への信仰を育むためのコンテンツ集である。

  • Ⅰのレビューが6月なので、図書館から届く本やら何やらの間に
    通勤時間に読み続けて3か月かかった。

    キリスト教は救済の宗教で超越的なものが救済する。
    だから信頼できるし知性とは相容れない。と佐藤さんが書いていて
    「知性と相容れない」のはわかるとしても、
    「だから信頼できる」かどうかはわからない気がした。

    ただ、あとがきに書かれている
    「キリスト教は実にいいかげんな宗教だ」うんぬんを読んだら
    いろいろ腑に落ちたというか、おもしろかった。

    一応念願だった原典にひととおり触れたので、
    大きな宿題が終わった気分。
    平易な解説書など探して読みたいです。

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