- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166608249
感想・レビュー・書評
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(2016.03.12読了)(2013.07.16購入)
東日本大震災から5年が経ちました。災害公営住宅の建設は、計画の50%ぐらいが完成し仮設住宅からの転居が進んでいます。小中学校の校庭に建てられている仮設住宅は、今年の夏ぐらいまでに撤去される見通しです。
街の中心部のかさ上げ工事は、まだ中途の状態で、かつての商店街を再建しようとする動きは、難航しているようです。5年はあまりにも長くて、かつての住民で県の中央部に避難した人たちは、生活基盤が避難先に移ってしまって、沿岸部には戻れない人たちが多く、商店をひらいても採算が取れそうにもなく、出店をためらう人たちが多いようです。
それでも、福島以外は、少しずつ復興が進み形ができてきています。
福島の放射能に汚染された地域は、人が住むことが許されず、震災の時のまま放置されています。震災で壊れていない家は、空き巣に荒らされたり放された家畜や野生動物に荒らされたりしている所もあるようです。放射線濃度が、低くなっている地域は、帰宅が許されてきているようですが、若い人たちは、勤めや子供の学校のことを考えると簡単には帰れないようです。
福島第一原発の事故の影響は、当初はさほど大きなものではないかのような発表でしたが、東京の水道水や静岡のお茶の葉、岩手県の内陸の茸、干し草、等から放射能が検出されるに及んで、かなり大きなものであることがわかってきました。
東日本は、人間が住めなくなるかもしれないという話は、笑い話では済まされない状態だったのかもしれません。
福島県の原発周辺以外は、放射能の濃度は、ほぼ普通の状態に戻っているので、現在のところは、住むのに支障はありません。
この本は、放射能の影響について書いたものです。安全基準がありますが、安全基準は、ここまで浴びても健康に影響はないと思われているようですが、実際には放射能を浴びたら浴びただけの影響が出るということです。
致死量を浴びたら、比較的短い時間で(何日かかかる場合も含めて)死亡しますが、そうでない場合は、浴びた量に応じて何年何十年とかかって影響が出てくるとのことです。
放射能によって遺伝子が影響を受けるので、細胞が増えてゆく成長期にある子どもたちと母親により大きな影響があるとのことです。母親が被ばくすると生まれてくる子供に影響するし、女の子が被ばくすると、大きくなって子どもを生んだときに、生まれた子供に影響が出てくることもあるということです。
【目次】
第1章 何があっても子どもたちを守らなくてはいけない 小出裕章
第2章 子どもと放射能の基礎知識 黒部信一
第3章 子どもたちが置かれた被曝状況 小出裕章
第4章 子どもたちの健康被害 黒部信一
第5章 子どもと放射能のQ&A
第6章 弱い人たちを犠牲にする原発というシステム 小出裕章
終章 原子力を終わらせるということ 小出裕章
おわりに
参考文献
●細胞分裂(24頁)
放射能は、どんなに少量でも人間の細胞を傷つけます。人間は細胞分裂を繰り返しているので、傷ついた細胞も分裂によって複製され、時間をかけて増えていきます。それがやがて癌細胞になってしまうのです。
☆関連図書(既読)
「内部被曝の真実」児玉龍彦著、幻冬舎新書、2011.09.10
(2016年3月18日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
放射能にもっとも弱いのは、細胞分裂が活発な子どもたちだ。低線量被曝は「ただちに」健康に影響は与えない。しかし…。十年後、二十年後に後悔しないために、今、知っておくべきこと。反骨の原子物理学者とベテラン小児科医による決定版。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
低線量の放射能による癌も、一般の癌と何も区別はつきません。
いわば「放射能の完全犯罪」です。十年後、数十年後に後悔しないために
今、絶対に知っておくべきこととは?
一般に信じられている放射能についての誤解を解きながら
データや図表を駆使して、原子物理学者と小児科医の立場から
「子どもと放射能」についての正しい知識を伝えます。
「私は、未来の子どもたちから、つまりこれから被曝をしながら
生きていかなければならない子どもたちから
『お前はどうやって生きてきたのか』と問われるでしょう」(小出裕章)
【目次】
第一章 何があっても子どもたちを守らなくてはいけない──小出裕章
低線量被曝の危険性を認めない政府や原発推進派
ただちに影響は出なくてもいずれ影響が出る
第二章 子どもと放射能の基礎知識──黒部信一
放射能の影響を受けやすい子どもたち
低線量被曝でもさまざまな健康被害が急増
DNAの二本鎖切断
第三章 子どもたちが置かれた被曝状況──小出裕章
福島市の子どもたちの尿からセシウム検出
「福島産」を避けても内部被曝は避けられない
第四章 子どもたちの健康被害──黒部信一
チェルノブイリで何が起きたか
甲状腺癌の見つけ方
第五章 子どもと放射能のQ&A
被曝を少しでも少なくするために気をつけることは?
野菜は洗えば安心?
第六章 弱い人たちを犠牲にする原発というシステム──小出裕章
劣化ウラン弾で子どもたちに癌や白血病が多発
強者が弱者を踏みにじる構造
終章 原子力を終わらせるということ──小出裕章
未 -
出張帰りの東北新幹線で読了。
先日読んだ原発関連の本とは立場が違うからか、論じてる内容が真逆。
こりゃ惑わされるわ。何をもって真実と見極めるか、、、。 -
反原発の「異端」研究者でおなじみの小出さんと、切り傷からがんや白血病、そしてチェルノブイリまであらゆる子どもたちを看てきた小児科医である黒部さんの共著による、「放射能と子ども」の関係について。
政府や東電、そして原発推進者は事実を隠す。
チェルノブイリ以降も、事故と、放射能と、病気の増加の因果関係ははっきりとしていないらしいが、やはり確実に子どもたちの甲状腺の異常、癌が増えているということ。
放射線の急性障害と、晩発性障害をどう捉えるか、そしてどのような対策をするかであるが、もはや福島の放射能は日本中のみならず、世界まで飛び散ってしまったというのである。
放射能との共存は避けられない。
チェルノブイリの取材を続けてきた広河氏の写真やデータなども引用されており、福島にある家族たちのことをつい祈るように心配に思ってしまう。
最後の小出さんの章、「弱い人たちを犠牲にする原発というシステム」で、彼は、「万物の霊長などと言うのは人間の驕りである」「人間など地球にとって要らない存在」とまで言っているが、他の生物に対しても優しくなれない人間の在り方は改めて今回の事故を通して問われるべきだろう。原発のシステムを知って改めて怒りを覚えた。
『寄生獣』という漫画を思い出した。
終章でも述べられているが、人の歴史の中での力は小さいが、その中で何ができるかということ。いたずらにペシミスティックになりたくないし、それでも人間の繋がりを信じて生きていきたい。 -
本書を含め放射線に関する著書をいくつか読みましたが、子どもたちに対する内部被爆以外はそれほど神経質にならなくてもよさそうだ。
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低線量であっても被曝がいかによくないか、大人は責任をもって子どもを守るべし、という話。原発事故から半年後に出た本です。
はからずも放射線リテラシーが(正しいかどうか別として)高まった今となると、決して詳しい、目新しいものではありません。
本当に責任のある大人はキッチリ責任を取るべきだし、そうでない大人も、「騙された責任」があると。でもその責任のとり方として、汚染食品を食べろとか、むしろ、怒りをメインにした感情の吐露。子どもを守るという大前提には大いに賛同できますが、行動誘発とは違う煽りのような印象が強い。過渡期の本ゆえなのか、こういうスタイルなのか。 -
久しぶりに読んだ放射能本。
長年、原子力に向き合ってきた小出先生だから言える
一貫したメッセージにあふれている。
首都に住む人間として、原発の問題から目を背けることは
許されないのではないか、と省みた。
フクシマの人たちを前に、電気が無くては暮せないから
原発は仕方なかったんです、と誰が言えるだろうか。 -
小出さんは物理学的あるいは原発というシステム的な視点から、黒部先生は臨床医としての生物学的な視点から、それぞれの知見をまとめており、参考になりました。
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展示期間終了後の配架場所は、開架図書(3階) 請求記号:493.195//Ko29