- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166610761
作品紹介・あらすじ
独裁の陰に女あり美女・悪女・猛女・烈女が謎多き独裁体制を動かしていた水爆実験やミサイル発射で国際社会を威嚇する一方、残虐な手法で最高幹部を次々に粛清する金正恩。金王朝の内幕には謎が多いが、ひとつだけ確実なことがある。それは、「北朝鮮の権力中枢では、女性たちが大きな役割を果たしてきた」という歴史だ。「国母」とされる金正淑(金正日の母)、成蕙琳と高英姫(金正日の妻)、金敬姫(金正日の妹)……彼女たちが大きな権限を握り、金王朝の中で決定的な役割を果たしてきた。現在、ミサイル発射の権限を持つ「7人組」のうち3人が女性である(姉・金雪松、妹・金与正、叔母・金敬姫)という事実をみても、それは明白だ。逆にいえば、金正恩を取り巻く女性たちの暮らしぶり、生き様、権力闘争を研究することによって、金王朝の謎が見えてくる。権力者として台頭する異母姉妹・金雪松と金与正、第一夫人の李雪主、金正男の母・成蕙琳、金正恩の母・高英姫、急速に力を失いつつある金敬姫……。嫉妬、マザコン、不倫、隠し子、淫乱、正妻と妾……韓流ドラマより刺激的な実話を堪能あれ!
感想・レビュー・書評
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2016年4月発行。
儒教の価値観が強い北朝鮮では、男女は平等だと定められても、依然として女性は困難な状況にある。それは、指導者の周囲にいる女性らにとっても同じだろう。しかし、女性も何らかの形で国を「動か」している。そんな視点から書かれた本だ。
金正日の母親、妹、そして数多くいる妻達や愛人をはじめとして、金正恩の妹、妻、そして工作員だった金賢姫、喜び組の女性たちなどに焦点が当てられる。
多くの情報は、北朝鮮関連のニュースを集めたものであるため目新しさはないが、「北朝鮮の女性」の生き様をこうして一度に読むと、ある種の「すさまじさ」を感じることができる。
同書では名のしれた有名な女性たちが取り上げられているのであるが、第7章で少しだけ取り上げられているように、脱北者の7〜8割を占める女性たちも、国を「動か」しているといえるだろう。また、生きるために闇市場で何でも売って家族を支えるたくましい女性が増え、男女の力関係も変ってきているという。
そういった意味で、女性の役割の変化は北朝鮮の変化といっていいだろう。
注)金正日の娘・雪松とされる写真、として同書に掲載されている女性だが、この女性は別人であることが一部メディアで確認されているため、この一点だけが残念な部分だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689810 -
北朝鮮の権力者にかかわる女性について知りたくて読書。
まだ金与正がほぼ表に出ていなかった2016年4月発売。改めて今読んでみると示唆に富んでいる。金与正と金敬姫が近いことが分かる。
ある北朝鮮研究者は、独裁国家にナンバー2は存在しないと指摘する。対外的な序列、元首は存在するも実際は独裁者の兄弟、家族、親族しか信用しない部族・王朝スタイルで統治されるからだろう。
北朝鮮の権力者とそれを取り巻く「大奥」は、まさに封建社会、李氏朝鮮時代そのままの現代へタイムスリップしているように思えてくる。リアル宮廷女官チャングムの誓い。現代日本人からはまったく想像できない教科書の世界だ。
また全体を通して著者の取材力のすごさを実感させてくれる。本書では多くのインタビュー内容が盛り込まれていてグイグイと引き込ませてくれる。
第1章の金与正と第7章を個人的に精読。
北朝鮮の女性の権利や立場、状況について日本のフェミニストたちが糾弾している声をあまり耳にしない。なぜだろうか。
女性に限らず、独裁国家は、権力者とその一部の周りの人間以外の人間は権利も自由もない奴隷同然なので男女問わず運命を自分の意志では決めることができないのは当然と言える。
脱北者全体の7割が女性である点も興味深い。やはり北朝鮮が変わるためには脱北した元北朝鮮人たちの存在が鍵となるのだろうか。
読書時間:約1時間45分