筒美京平 大ヒットメーカーの秘密 (文春新書 1325)

著者 :
  • 文藝春秋
3.97
  • (10)
  • (18)
  • (9)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 169
感想 : 18
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166613250

作品紹介・あらすじ

筒美のシングル売り上げは7560万枚で、2位の小室哲哉(7184万枚)を凌ぐ。作ったのは3000曲近い。名実ともに日本一のヒットメーカーだ。
 彼の作曲家としての凄さは、最新の音楽潮流をとりこんで、一般人にわかりやすい音楽として加工し続けたところにある。
 いしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」はロックだが和風で小唄調、太田裕美「木綿のハンカチーフ」はフォーク&ニューミュージック風、岩崎宏美「ロマンス」は流行りのディスコサウンド、ジュディ・オング「魅せられて」と庄野真代「飛んでイスタンブール」はエキゾチック。その時代、時代でのブームに乗っているし。さらにはその時流を読んで、ヒットしそうなものを仕掛けていたのである。
 ほかに誰もが知る曲としては、近藤真彦「スニーカーブルース」、小泉今日子「なんてたってアイドル」、「夜明のMEW」、松田聖子、南沙織、野口五郎、郷ひろみ、中山美穂、少年隊、小沢健二、サザエさん・・・。
 まあ、とにかくありとあらゆるヒット曲を書いた。
 さて、近田春夫氏は、じつは筒美を師匠とあおぎ、生前きわめて親しかった稀有の人物である。そして、多くの音楽シーンもよく知る。名連載「考えるヒット」の筆者として有名な近田氏が、筒美の魅力を腑分けしたら面白くないわけがない。
 近田氏による詳細な「筒美京平論」は、本書の骨子となる。
 もちろん、満を持して出すのであるから、それだけではない。筒美の私生活はほとんど知られていない。そのプライベートな側面を知る実弟・渡辺忠孝氏への近田氏によるインタビューによって、筒美の生立ちや音楽との歴史が明らかになる。そればかりか、筒美の曲を最も多く作詞した橋本淳氏、それから筒美楽曲のディーヴァともいうべき平山三紀(現・平山みき)氏への近田氏によるインタビューも収録した。
 まさに筒美京平をめぐる完全版ともいうべき本である。
 ファンならば手元に置きたくなるデータも巻末に付した。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 筒美京平が亡くなってまもなく1年。コンピレーションアルバムの発売やライブは行われるも、筒美京平に関する評論はあまり見かけないなぁと思ってたところに本書がドドーンと登場。

    その著者がこれまた近田春夫と来てる。週刊文春の長期連載『考えるヒット』では、“つい考えちゃうんだよ”的思考でヒット曲の謎を秘密を解き明かす絶品の論考を毎度毎度開陳していただけに、はたして筒美京平をどう解剖するのか…。

    近田さん自身、筒美京平とは50年近い交流があり、その間には〈自堕落な私生活〉について一度叱られたこともあるという、人間 筒美京平を物語る貴重なエピソードもお持ちなだけに、否が応にも期待感が膨らむ。

    そう本書は、著者だから語れる、著者しか語れない〈作曲家 筒美京平〉と〈人間 筒美京平(本名 渡辺栄吉)〉の両面に深く考察した極めて『貴重』な一冊。

    本書は2部構成で、第1部は筒美京平が作曲家デビューした1966年から2020年までの仕事について、本書の構成を担った下井草秀氏が近田春夫にインタビューする形で進む。

    〈ブルー・ライト・ヨコハマ、魅せられて、Romanticが止まらない〉といった昭和を代表するヒット曲誕生秘話、コンビを組んだ阿久悠・松本隆・秋元康らの作詞家も俎上に。

    例えば、作詞 阿久悠・作曲 筒美京平コンビによるレコード大賞受賞曲〈また逢う日まで〉に対しても、阿久悠の論理的で畳み込んでいくようなマッチョな詩には、直線的でアタックの強い旋律を書く都倉俊一の方がハマる…と言い切り、阿久悠×都倉俊一による〈ペッパー警部・UFO・五番街のマリー等〉を列挙されると、確かにそうかも…と思う。また筒美京平が好んだ歌手の郷ひろみや平山みきのふたりに共通するのは、声そのものがひとつの楽器のような、唯一無二の歌声に創作力を掻き立てられたとも語る。

    第2部はレコード会社で長年ディレクターを務めた実弟 渡辺忠孝氏、筒美京平が作曲家としてのきっかけを作った作詞家 橋本淳氏、その橋本淳×筒美京平コンビ作の70年代を代表するポップソング〈真夏の出来事〉を歌った平山みきさんの3名が登場。近田春夫が訪ね、いずれも軽妙洒脱なインタビューが展開される。

    本書の白眉は、『筒美京平=フィルター論』。
    ある音楽を、筒美京平というフィルターを通して濾過するとこうなる…というシミュレーションな形で曲を作っている。だから、そこには『筒美京平という実体は存在しない」。筒美メロディーを掴んだと思っても、腕からスルッと逃げていく。

    『小室哲哉がシステムだとしたら、筒美京平はフィルター』なんだ。要するに、筒美京平には簡単に真似し得る『らしさ』がない、『いかにも筒美京平節』ってものがないということを小室哲哉を引き合いに出し、見事な論理を提示する。

    1960年代から日本の歌謡曲の第一線で活躍し続けた稀代のコンポーザー筒美京平の功績を、該博な知識と豊穣な言葉で仔細に明確に学究的に語る近田節を踏まえ、秋の夜長、筒美京平の音楽に浸ってみてはいかがでしょう?

  • 生涯に3000曲近い曲を作り、作曲作品のシングル総売り上げは7560万枚(歴代1位。2位の小室哲哉は7184万枚)にのぼる偉大なヒットメーカー、筒美京平の創作の秘密に迫った一冊。

    生前の筒美京平と親しく交友を結び、音楽の実作者でもあり、歌謡曲/J-POPへの造詣も深い近田春夫が語り手となる。
    取材・構成を担当したのはライターの下井草秀。彼は今年1月に出た『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』の構成も担当していた。そして同書の中でも、筒美京平との思い出が印象深く語られていた。

    これは推測だが、『調子悪くてあたりまえ』のために近田を取材しながら、下井草は「筒美京平についての話だけで、もう一冊本が作れるな」と思ったのではないか。
    本書は『調子悪くてあたりまえ』のスピンオフであり、さらには近田の歌謡曲/J-POP論の著作(『気分は歌謡曲』『考えるヒット』)のスピンオフでもあるだろう。

    前半は、近田が語る筒美京平論。各時代の代表的作品を例に挙げつつ、作曲家としての特徴を浮き彫りにしている。
    筒美京平は、最前線で活躍した期間が数十年に及んだ人だから、彼をフィルターにした歌謡曲史/J-POP史としても読める。

    近田の筒美京平論はさすがに鋭く、随所に卓見がある。例として、小室哲哉と京平を比較した一節を引いてみよう。

    《――TKの音楽は、どんなところが特徴なんですか。
    近田 サビの手前での急な転調とか、譜割りにおける16分音符の扱いとか、いかにもTKらしいパターンは、研究すればコピーすることが可能なのよ。
    ――京平さんに関しては?
    近田 あの人の音楽には、実は簡単に真似し得る「らしさ」がなかなか存在しない。なぜなら、筒美京平というのは、どこまで行っても一つのフィルターだから。ある音楽を、筒美京平を通して濾過するとこうなる、というシミュレーションの形で曲を作ってるからさ。そこに、筒美京平という実体は存在しない。掴んだと思っても、その腕からスルッと逃げていく。小室哲哉がシステムだとしたら、筒美京平はフィルターなんだよ。》79ページ

    後半は、近田によるキーパーソン3人へのインタビュー(下井草秀が構成している)。
    3人とは、京平の実弟・渡辺忠孝(音楽プロデューサー)、京平の曲を最も多く作詞した名パートナー・橋本淳、そして、京平作品を歌った歌手の中では例外的に個人的にも彼と親しかった平山三紀(現・みき)。

    インタビューは3つとも、謎のヴェールに包まれていた京平の私生活に迫るエピソードの連打である。

  • 最近レコードを買うようになり、昔の歌謡曲をよく聞く。クレジットを見ていると筒美京平と書かれているものの多さに驚くと同時にだれ??と思い読んでみた。前半めちゃめちゃ面白い。
    後半のゆかりの人ととの対談も恐らく筒美京平に何かしら思い入れがある人が読んだら面白いのではと思う。

  • 「調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝」を読んで、軽い語り口、だけど鋭い視点の近田節が気持ち良くなってしまい、続けて本書を開きました。そもそも近田春夫がずっとリスペクトしてきた対象なので、自分の音楽を語る自伝より活き活きしているし、楽しそう。実際の読書も、脳内ライブラリーだけでなく、YouTubeでマニアック曲を検索しながらの「聴く読書」でした。曲そのもの、だけじゃなく筒美京平が取り込んだ元ネタもばんばん開示されるので、まるで鶴の恩返しの機織り部屋を覗いているようなドキドキ感があります。南沙織「17歳」の元ネタがリン・アンダーソン「ローズ・ガーデン」であることは有名ですが、松本伊代「センチメンタル・ジャーニー」の元ネタがギルバート・オサリバン「アローン・アゲイン」という最新の仮説(?)も披瀝されて、著者の京平研究、恐るべし、と言った感じです。洋楽と言われるもの邦楽化という、日本の高度経済成長時代が求めたもの、例えば、お茶の間からリビングへのシフトみたいなことを音楽という領域で一手に担ってきたのが筒美京平という「ツル」でなのだと感じました。だから筒美京平が「どんな曲を作って来たか?」ではなく「どうして現役として曲を作り続けることが出来たか?」だし、そもそも「彼は何者だったのか?」が本書のテーマだと思いました。そういう意味では第2部の実弟・渡辺忠孝、盟友・橋本淳、歌い手・平山みきとの対談は超貴重。まさに京平LOVEが新書に詰まっています。今年なくなった内田裕也、筒美京平とはまったく接点なかったけど、唯一の共通点としてホテルオークラが好き、ということを上げ、日米の狭間の揺れ動きにアイデンティティを見いだす、という指摘は見事だと思いました。それはひとまわり年上のジャニー喜多川にも共通するもので、そのメンタリティが戦後の音楽史の基本なのだと。近田春夫、一生、京平さんのことを考え続ける宣言もかっこいい!

  • 近田春夫による筒美京平論のほか、筒美京平とともに音楽制作人気携わった関係者、実弟との対談から作曲家・筒美京平の姿を浮き彫りにする。音楽論よりも人となりに焦点を当てている印象。もう少し音楽的な評論が欲しかった。

  • p59 筒美京平好みの声 平山美紀、郷ひろみ、松本伊代

    p79 小室哲哉がシステムとすれば、筒美京平はフィルター

  • 一周忌に読む。

  • 筒美の紡ぐ旋律は、その1曲の全体が、柔らかな色合いを持って包み込んでくるような錯覚を聴き手に与えるという点に特徴があると思う。旋律そのものだけがやたらと骨太いような、ある意味わかりやすい曲とは一線を画す。荒々しいデッサンのような魅力ではなく、破綻のない水彩画のような印象だ。時間的に連続する音像すべてを3分というポップスのフォーマットの中で稠密に出力している。もちろんフックの効いたパッセージは効果的に配置されているが、それは全体をしみこませるためのきっかけとして、計算されて置かれている。総合的な建築家のような仕事だったと思う。優れたシンガーソングライターによる明解で一貫した世界観もよいが、筒美のようなプロフェッショナルによる音楽表現の可能性の豊かさは、一層素晴らしい。

  • <目次>
    第1部  近田春夫による筒美京平論
     第1章  開化前夜(1966~70)
     第2章  王者への行程(1971~75)
     第3章  快進撃(1976~79)
     第4章  アイドルそしてジャニーズ(1980~89)
     第5章  未解明の本質(1990~2020)
     第6章  筒美京平なき今への考察
    第2部  近田春夫による対話篇
     第7章  実弟・渡辺忠孝が見た兄の生涯
     第8章  盟友・橋本淳が明かす創作現場と素顔
     第9章  歌い手・平山みきの眼に映じた”父”の肖像
     第10章  近田春夫が選ぶ10曲

    <内容>
    昨年亡くなった歌謡曲作曲家・筒美京平。マスコミに顔を出すことがほとんどなかった人の軽い感じの評論集。近田春夫にとって「神様」のような存在だったようで、リスペクトが溢れている。そこに描かれるのは、音楽の”天才”。洋学を取り込みながら、その歌手の声や生きざまを繁栄させた楽曲を作っていったらしい(自分にはわからなかったが)。よく知っている曲も多く登場し、なかなか楽しかった。
     

  • 筒美京平が亡くなってから計画された筒美京平を語りながら渡辺栄吉(本名)を覗く本。
    2021年7月刊行。

    第1部(1-6章)は近田氏による筒美京平論。
    曰く「楽理を踏まえていない譜面に紐づいていないビートルズに影響は受けてない。一世代前のアメリカンポップス」「日本語の官能性を音楽が持つフィジカルな快楽と合体させた」「邪推が及ばない音楽的懐の深さ」
    官能性。そうなんだよね。名曲は総じてそうなのかもだけど、筒美京平の艶ってあるよねぇ。

    「えげつない曲、これ見よがしの曲を作らなかった人」という評。
    それに至る会話は、筒美京平の曲には女性作詞家が似合いますねもしくは千家和也やちあき哲也→ユーミンとのフルアルバム Hiromic Worldいいですよね→正反対の作詞家は阿久悠、それには都倉俊一がベストマッチだよね。
    うん。。まぁ。。山本リンダ、フィンガー5、ピンクレディーはえげつなくてこれ見よがしかな。笑
    今まで都倉俊一作品を「電気がチカチカしてる」「ガチャガチャしてる」「おもちゃ箱」だと思ってたけどこれからは「これみよがし」って言おう。
    あとこれ人にも使えそう。なんてね。(あなたをもっと知りたくて)

    70年代3強のジュリー百恵ピンク、80年代の聖子明菜への楽曲提供もない。(ジュリーと百恵は断ったと2部で実弟から明かされる。聖子はソニー内部での郷ひろみっていうか酒井プロデューサー陣営との確執と70年代感を出さないためか)言われてみれば確かに。
    「吉田拓郎への恐怖」「スピッツには似たものを感じる」へー。音楽的センスのない自分には分からないけど吉田拓郎を天才だと言う天才が多いってことはそういうことなのね。キンモクセイよりスピッツ?そうなのね。

    「あれ(松本伊代)は彼の好みだね。平山三紀郷ひろみライン」
    当て書きのトシちゃんマッチ、ジャニー嫡子の少年隊デビュー曲など。
    考えたことなかったけど音楽センスのある人達からするとしっかり感じる「見えないライン」なんだろね。納得。

    共に7000万枚overを誇る大作曲家だけど「TKはシステム、恭平はフィルター」ってのも納得。TKは作詞の人、その雑さ。(酷い)とはいえ浜崎あゆみよりは5兆倍マシだけど。

    洋楽やKPopを「射精しない反復音楽」JPopを「射精への高まり音楽」と評してるのもまぁ分かる。とはいえKPopはマネしながら独自性をちょい混ぜするのが上手だなとも思う。洋楽にしろ邦楽にしろ。でもまぁ国民が1億超えてるならそれでも(市場規模として充分で)良かったよね。
    今までは。だけど。

    芸能界に染まらず権威に無頓着だった筒美京平らしく、対極として政府とがっつりの都倉俊一(やはり近田氏は都倉センセが嫌いなのね)芸能界のドンとがっつりの内田裕也(ここは夫婦揃って同じイメージ、無欲の風来坊を気取ったThe強欲)を例にあげてる。
    筒美京平の清廉さを話したいというよりは、都倉俊一の悪口がメインかな。
    なんか素人が知らない確執があんのかね。

    作曲家への依頼の仕方が変わったっていう話もへーって感じ。そんなの想像したことなかったけど今ってそんなんなのね。


    第2部(7-10章)は対談

    7章は実弟、渡辺忠孝
    幼少期弟に対して「ター坊の好きなのってコードが3つしかない曲ばかりだね」と言ってみたり、坂本龍一を見て「彼らは好きな音楽だけやってて羨ましい」とか弟ならではのエピソードが明かされる。

    実弟が選ぶTop10の付録も
    哀愁トゥナイト、なんてったってアイドル、夏のクラクション、青春挽歌、ラッキーチャンスをもう一度、くれないホテル、魅せられて、よろしく哀愁、お世話になりました、飛んでイスタンブール

    8章は作詞家橋本淳
    師匠のすぎやまこういちの傍若無人さに触れつつ、筒美京平との高校1年からの思い出話を披露。(橋本は一個上)ここでも筒美京平の3分で作曲、5-6時間で編曲という天才ぶりを話すが、比較として「簡単なコード作曲の平尾昌晃や中村泰二と違って」みんな悪口好きだなぁ。
    筒美京平は「ここから先は入るな」という自己境界線がはっきりした人だったらしい。ただ高校生からの付き合いで音楽事務所も共同経営し、60歳になったらお互いに花屋パン屋をやろうと持ちかけられ、亡くなる前に病室で「あんたのせいでこんな人生になっちゃった」と言われたと。葬儀参列は家族と橋本夫婦のみだとか。平山みきにすら当日電話で話したにも関わらず明かさなかったと。
    それほどに近しい間柄だったんだなぁってのと、筒美京平の「隠者」ぶりが分かる。

    対談から「スワンの涙」が筒美京平自身が最も愛した曲なのでは?と感じる。私はここ最近たまたま「ジジィだからGSでも勉強せにゃ」と聴いていて失神GSっていうキモさから嫌々聴いたものの結局最も気に入ったのがオックスのこの曲だったのでなんか嬉しい。全然たまたまだけど。でもこの本を読む前も大声で歌ってた。(その前は木元ゆうこ)近所の人にはソーリー。まぁ慣れてるか。

    橋本淳が選ぶTop10
    また逢う日まで、さらば恋人、雨の日のブルース、木綿のハンカチーフ、にがい涙、恋の弱味、サンゴ礁の娘、ブルーライトヨコハマ、色づく街、ひとかけらの純情、セクシーバスストップ、夏のクラクション

    この本で紹介される曲はほとんどがヒット曲なのでタイトルを見れば歌が頭の中で流れるが、8章で橋本淳が「幸せでちょっと不幸だった平山美紀、彼女と筒美京平と3人でLAで録音したアルバム、フィルムシティモーテルが素晴らしい曲で録音完了時にアメリカ人スタッフが拍手したのを覚えてる」と。
    幸いYouTubeにあった。(ありがとう違法アップロード)これは確かに。さすがのクオリティ。
    何度も平山美紀の名前は出るけれど(筒美京平と橋本淳の事務所に所属していた)この曲を提供するなんて彼女の声が余程好きだったんだなぁ。と。

    最後の対談は平山みき
    今まで他人が彼女の楽器としての声と真面目さが筒美京平に愛されたと分析してきたが、ここで本人によって「はいそうです」と確認される。
    デビュー曲に筒美橋本の息子の名前が入ってるのは楽しい遊び。
    彼女も筒美・橋本とのLAレコーディングを話すが、途中でラスベガスのギャンブルなどに興じる2人に怒って筒美が途中帰国するくだりは橋本バージョンでは全く触れられていない。

    近田春夫が選ぶTop10
    マドモアゼルブルース、赤毛のメリー、ビューティフルヨコハマ、誰も知らない、熟れた果実、逢えるかもしれない、雨にひとり、恋の弱味、さよならの彼方へ、グッドラック、強い気持ち強い愛

    ライター下井草秀Top10
    寒い夜明け、あなたの暗い情熱、銀河特急、女になって出直せよ、卒業、君だけに、JOY、泣かないぞェ、綺麗アラモード、あなたの淋しさは愛

    さてこっから感想ですが。

    阿久悠2冊、都倉俊一1冊と読んで流れで読んだ。
    うっすい本ですぐ読めるけど中身は充実。白黒&小さいながらもレコジャケも掲載されてる。
    プロが選ぶ筒美京平Top10は売上ランキング上位に限らず多様な選択になってるのもさすが。特に弟と橋本淳。夏のクラクションと恋の弱味が4人のうち2人からセレクトされてる。他は重複なし。

    え????「サザエさん」は????

    他にも誰もたそがれマイラブ、迷宮のアンドローラー、恋の追跡、仮面舞踏会、東京ららばい、ていうか岩崎宏美の曲を1曲も選択しないのはなんで?
    あとスワンの涙は?あれ名曲じゃん?

    知らない歌も沢山あるのでこれを機に聴いてみようと思う。

全18件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1951年2月25日生まれ。東京都世田谷区出身。ミュージシャン、作曲家、音楽プロデューサー、音楽評論家、タレント。
幼稚舎からの慶應義塾を大学で中退。1975年、近田春夫&ハルヲフォンとしてデビュー。1979年、ソロ・アルバム『天然の美』を発売。1981年、近田春夫&ビブラトーンズを結成。1985年、President BPM名義でヒップホップ・レーベルを立ち上げる。1987年、ビブラストーンを結成。1997年よりAFROMIX、NO CHILL OUTなどの名義でゴア・トランス・テクノ作品をリリース。2001年よりRICE名義、ユニットThe Lunatic Thunderなどでサイケデリック・トランス作品をリリース。2018年、38年ぶりとなるソロ・アルバム『超冗談だから』、OMBとのユニットLUNASUNのアルバム『Organ Heaven』を発売。2019年、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』をリリース。現在は、元ハルヲフォンのメンバー3人による新バンド「活躍中」でも活動中。
著書に『考えるヒット』『考えるヒット2』『考えるヒット3』『その意味は 考えるヒット4』『大きくふたつに分けるとすれば 考えるヒット5』『いいのかこれで 考えるヒット6』『定本 気分は歌謡曲』(文藝春秋)、『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)などがある。

「2019年 『VIBE RHYME(ヴァイブ・ライム)[復刻版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

近田春夫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×