吉村昭が伝えたかったこと (文春文庫 よ 1-90)

制作 : 文藝春秋 
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (457ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167217952

作品紹介・あらすじ

名著『三陸海岸大津波』はこうして生まれた3・11後に多く読まれた『三陸海岸大津波』『関東大震災』の検証、吉村昭の史実へのこだわりを各界識者が解説する徹底ガイド。

感想・レビュー・書評

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  • ●やはり吉村昭はすごい。最近はこんな真面目な作家が少ないのではないか。
    ●村上春樹みたいな作品ならまだしも、身近な話、矮小化した話が多すぎるし、ライトノベルが悪いとは言わないが、骨太な社会派の小説がどんどん出てきてほしい…
    ●昔以上にネタは沢山あるし…

  • 随筆や対談、寄稿など、吉村昭の人となりや、作品に込めたメッセージといった内容だが、膨大な作品群を残した作家だけに、文庫一冊でまとめるには手に余る印象で、テーマを何か1つに絞っても良かったかもしれない。

  • 吉村昭の簡潔で、事実をして語らしめる文体が実に好きなんです。この本は、吉村昭の小編やインタビュー、対談、奥さんの津村節子さんのインタビュー、逢坂剛ほかの吉村昭評などを収めていて、吉村昭の人となり、作品を知ることができます。

  • 震災後に読むべき作家。

  • 【名著『三陸海岸大津波』はこうして生まれた】3・11後に多く読まれた『三陸海岸大津波』『関東大震災』の検証、吉村昭の史実へのこだわりを各界識者が解説する徹底ガイド。

  • 歴史は繰り返すー東日本大震災後、呆然とする日本人が手にとったのは、「三陸海岸大津波」そして「関東大震災。両書の検証を中心に、徹底した取材と史実の綿密な調査に基づいた傑作歴史小説を数多く遺した吉村昭の、人となりと作品を各界識者が解説。揺るぎない眼で歴史を掘り起こした作家から我々への貴重なメッセージ(文藝春秋平成23年臨時増刊号を再編集。2013年文庫化)
    ・グラビア 探求の日々―吉村昭の来た道
    ・作家生活の原点、三陸で語った史実へのこだわり
    ・災害と日本人―津波はかならずやってくる
    ・「三陸海岸大津波」を歩く(高山文彦)
    ・美談を戒める―「関東大震災」の壮絶なる光景(石井光太)
    ・警告の書「関東大震災」―専門家はどう読んだか(武村雅之)
    ・歴史はくり返す―阪神大震災に寄せて
    ・「書くことを」と「書かないこと」―吉村昭と歴史小説
    ・津村節子ロングインタビュー 長い間に、字まで似てきた
    ・ボクシングに酔い、時代に出会った(吉村昭、沢木耕太郎)
    ・私が愛する吉村昭(逢坂剛、関川夏央、阿井景子、山内昌之、飴村行)
    ・作家は自分の足で歩け―戦史作家・吉村昭が問いかけたこと
    ・吉村昭さんが惹かれた十人(浅見雅男)
    ・旅、酒、肴~垂涎の随筆集
    ・近代日本の自画像(長部日出雄)
    ・吉村昭―人と作品(木村暢雄編)

    本書は、吉村生前の寄稿、講演、対談などが収録されている。また、各界識者の解説が寄せられている。氏の「三陸海岸大津波」と「関東大震災」については未読であるが、本書では講演の記録という形で、災害の恐ろしさについて触れられており、その教訓は東日本大震災にも活かすことが出来たのではないかと思われる。事実、震災以降、書店では特設コーナーが設けられていたが、これらの貴重な作品が長らく埋もれていた事が残念でならない。もちろん刊行時は注目され、版を重ねてきたことと思われるが、刊行から40年余を経て知る人ぞ知る感じになってしまったのではないか、試しにブクログで検索してみると、直近のものからでも10年が経過していることがわかる。
    ・三陸海岸大津波1970年刊→1984年文庫→2004年文庫
    ・関東大震災  1973年刊→1977年文庫→2004年文庫
    世代間のギャップというものを感じるし、記録の風化というものを考えさせられる。良書であっても世間に知られていなくては活かされないのだ。
    本書では津波被害にあった女の子の作文が紹介されているが、これを読むだけでも、物凄いインパクトがあり教訓を得られ、災害教育に役立つと思う。
    また、東京都の災害部長を例(関東大震災の報告書を読んでいないことを嘆いている)に専門家の勉強不足を戒めているがこれは大変頭の痛い話である。公職にある(災害に対処する)ものは少なくとも吉村の著書くらいは読んでおくべきだろう。
    本書に収録されている「書くこと」と「書かないこと」では、吉村がどの様に小説を執筆しているのかインタビューに答えている。戦史小説では証言者を主としその証言を記録で裏付けしていくという。吉村は、書き始めて、証言者の記憶というものがいかにあやふやなものかということを知ったという。だから、一つのことについての証言者はかならず二人以上が必要だったという。吉村は八年間戦史小説を続けたが、証言者の数が減ったことにより戦記の執筆をやめる。
    戦記をやめた吉村は歴史小説の分野に入っていく。吉村は歴史小説には話の聞ける証言者はいないが、事実は庭の飛び石みたいに並んでいる感じがするという。まず史料を調べる(見当を付けて史料を探すことも含める。)が鵜呑みにはせず、現地を取材する。
    例えば水戸脱藩士の逃走経路。研究では必要がないかもしれないが、小説を書くためにはどの道をたどったか必要だという。ゆえの現地を取材し郷土史料を調べ裏をとっていく。飛び石と飛び石の間をどの様に埋めるか。吉村の姿勢はものすごくストイックである。
    また、権威ある史料でも誤記があるため基本的に印刷物は信用しないという。吉村は取材先で刑事に間違えられることがあったという(これはエッセイのネタにもなっている)が、その歴史的事実を追求しようとする取材姿勢は犯罪捜査に通じるものがあったのではないだろうか。
    この様な作風ゆえに、必然的に史料の豊富な江戸中期以降にしか興味がないという。戦国時代も推理が苦手でダメだと言うが、吉村による戦国時代小説を読んで見たかったような気がする。吉村は記録にないことは書かないが記録にあっても子孫の嫌がる事は書かない主義だというが吉村の作風や温かさを感じる。
    随筆が5本収められているが、これがとても良い。ほのぼのとさせられ、呑んべでなくても酒が飲みたくなる。
    硬派な小説は敷居が高いという人にもオススメ出来る1冊である。

  • 吉村昭を愛読する色々な識者が吉村昭について書いたものや、吉村昭の対談など色々収録。既知のこともたくさんあるが、知らなかった事実なども数多くあったので参考になった。

  • 吉村昭は、好きな作家の一人だが、まだまだ読んでいない作品があるなと思う。芥川賞に何度も落選、先に夫人が受賞したことや、その後「戦艦武蔵」がヒットし、ベストセラー作家の一員に、そして壮烈な最期。生き方を含め、共感出来る部分が沢山あるし、敬服する点も多くある。でも、お酒が好きで、取材旅行の際に、その地方の美味しい店を見つけて回るところは、微笑ましい限りだ。
    関東大震災や、三陸沖大津波で警鐘をならしたが、それを十分生かすことが出来なかったことは、とても残念だ。

  • 主張のありそうな顔写真の表紙に、なぜか一喝されたかの気分になり、手にとる。地震、津波の話から一気に引き込まれてしまった。ノンフィクション?小説家とでもいえる氏の筆致にいたく感動。こういう作家がいることを知らなかったことを恥じた。本書は他者からみた(一部本人のものもあるが)記述を中心にしるされているので、次は自著ものを読んでみたい。多くの著作があるので楽しみがしばらく続けられそう。

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