- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167459024
感想・レビュー・書評
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戦前の共産党の中核に入り込んでいた特高のスパイである、「スパイM」こと飯塚盈延の生涯を追った本です。
スパイMについては、雑誌『文藝春秋』で発表され、その後『日本共産党の研究』としてまとめられた立花隆の仕事がありますが、著者たちは立花の仕事の取材をする機会を得たことが機縁となって、その後も取材をつづけ本書の刊行にまでいたったことが、「あとがき」で明かされています。
そのためもあって、立花の本と重複するような叙述も見られるのですが、特高のスパイとしての役割を終えたあとの飯塚の暮らしぶりについて、家族の証言などをまじえながら比較的くわしく紹介されており、おもしろく読みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
完全にサイコパス。
サイコパスというのは必ずしも悪人ではなく、良いことをするにも悪いこともするにもタガが外れている人間だ。
スパイMはソビエトに極秘留学できるほどなのだから知能は高いのだと思う。
知能が高く、タガが外れ、短期の快楽から思念の至福をも知る厄介な人間のドキュメント。 -
ノンフィクションの奇跡的な傑作。とにかくよく調べてある。
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非常時共産党時代、共産党の最高幹部として党の拡大に尽力した松村昇。彼こそが、非常時共産党を壊滅状態に陥れた熱海事件を手引きした特高のスパイMだった・・・ってフィクション臭い話だが、実話。事件の経緯だけでなく、Mの生い立ち、共産党で仲間だった者たちや家族の証言、時代背景などなどバランスよくちりばめて、スパイとしての複雑な心理を描いている。日本国内の、しかも共産党という一団体でのスパイの話なのに、そこらの世界をまたにかけるようなスパイ小説より遥かにおもしろい。特殊な話にもかかわらず、時代の雰囲気も感じさせてくれる。小説「以外」を読み慣れている人に特にお勧め。