忘れられない女: 李恩恵先生との二十ヵ月 (文春文庫 キ 8-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167565046

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  • 今更ながらに手に取ったKAL機爆破事件の実行犯、金賢姫の手記。同書は、彼女の教育係だった李恩恵、すなわち北朝鮮に拉致されて北朝鮮工作員の教育係となった「田口八重子」さんについて書かれている。

    北朝鮮の拉致問題が話題になって以降、何度も目にすることになった彼女の顔と名前だが、同書を読むと単なる「拉致被害者」としての彼女だけでなく、一人の人間としての彼女の苦悩がとてもよくわかる。
    外国人であるため、隔離されて暮らさざるを得ず、自由もなく、しかし北朝鮮にさからったところでいいことはないとわかっているのでどうにか適応しようとしていた女性。
    それでも、日本に残した子供の歳を指折り数えたり、自由に飛び回る鳥をじっと見つめたりする女性。
    北朝鮮ではそれなりによい待遇を受けて、さまざまな物品が贈られてもそれをほとんど周囲の人にあげてしまう女性。
    物や、生きることに対する希望と執着を捨ててしまったかのような女性。

    とても、とても長い年月を希望のない場所で暮らしてきた、そしてもしかしたら今もそうやって暮らしているかもしれない女性のほんの、ほんの一部しか書かれてはいないだろう。しかし十分に心をえぐるものだ。

    北朝鮮はKAL機爆破事件を自分たちが行ったとは認めていないため、金賢姫の存在も、もちろんその教育係だった李恩恵の存在も認めていないし、これからも認めないだろう。さらに、実行犯が事件を認めてしまったため、教育係であった彼女の扱いは酷いものになってしまっているだろうということも指摘されている。

    日朝問題を考える際に避けては通れない日本人拉致問題だが、北朝鮮が拉致を認めた2002年から15年が経った今もその後の進展は見られないままだ。
    まだ生きているかもしれない被害者たちを、どうすれば帰還させることができるのか、苦しみを終わらせることができるのか・・・それは私達皆が忘れずに考え続けなければならないことなのだろう。

  • 著者が北朝鮮工作員訓練時代、日本から拉致され日本語や日本の文化を教える田口八重子、朝鮮名李恩恵とすごした20ヶ月の間のことを書いたもの。

    本当の目的は拉致した人を北朝鮮で教育し、工作員として自国に戻し、命令を聞かせようとしたらしいが、帰っていくと皆言うことを聞かなくなるのだそうだ。

    そんな事が、わからなかったらしい。

    著者は全部で3冊出していて、出版順に読みたかったが、二作目はまだだが、ブックオフで105円コーナーにたまたま本著が有ったので、つい買って読んでしまった。

    著者は家族を北朝鮮に残し、大韓航空機爆発事件が北朝鮮の仕業と暴露し、今は家族に会えないどころか、国に何をされているかわからない。

    逆に田口八重子さんは拉致され、家族を日本に残し、会えない状況で、天涯孤独という意味では立場は同じ。

    北朝鮮というテロ国家に翻弄され、時間だけが過ぎていく。

    最後の方に、著者が八重子さんの家族会いに行ったときに、李恩恵は自分の娘ではない、人違い、と言ったらしい。

    なぜかというと、もし李恩恵が自分の娘だと認めると、北朝鮮で何をされるかわからないと考えたらしい。

    一般の人から見れば変だと思うが、家族にしてみればそういう考え方も、やむを得ないのかとも思う。

  • 大韓航空爆破事件のドキュメンタリーをテレビで観て、読んでみたくなった。2人の交流は微笑ましいものもあるけど、やっぱり、悲しい話でした。。

  • 拉致被害者の方が数人帰国した今、読んでみると、ああ、このことはあの人のことかも、と思うことがでてくる。二人の話は興味深いのだが、本当に悲しくなる。

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