自殺-生き残りの証言 (文春文庫 や 28-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167595036

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  •  自殺未遂者の証言が目白押し。とはいえ単に数を撃ちまくって世間に訴えるということではなく、数人の話が連続しており、ひとつの物語的展開を形成している。登場人物は死の淵からの生還者であるため、そのステージは大病院の病棟が主。そこからあふれる証言はどれも目を覆うようなものばかり。単に「血が出た」とか「気が遠くなった」といったありきたりなものではなく、「痛い」だの「苦しい」だのといった次元はもはや超越している。

     自らの意思で向かう死と、そうではない死は同じものなのか。この問題提議は「人の行動」あるいは「選択」というものの深層へと迫るものである。空腹時には何か食べたいと考える。眠気が襲ってきたときには布団に入って思い切り寝たいと考える。「死にたい」という欲求もそれと同じようなプロセスを経ているように思う。あらゆる欲求でも「自分は今これを本当に欲しているのか」と考えることはあるだろう。単に習慣的に「やらなければならないこと」を自分が「やりたいこと」と認識したり、周囲の承認を得ることが自分の目的であることの延長で道徳的な振る舞いをやりたいと思ってしまうことなどなど。他のケースと異なるのは「死の欲求」満たしたときには、満足を感じる自分がもうそこにはいないということである。

     単純に「生きててよかったね。もうバカなこと考えるのはよそうね」というありきたりな結論で済ませるのもどうかと思うが、それはそれで事実である。死ねば無となり、その後の心配はする必要がないとしても、万が一生き残った場合は身体的後遺症や経済的問題といった今後の見通しがさらに悪くなるという大きな損害を被る。そうした読みができれば自殺を考えている人も躊躇せざるをえないだろう。しかし本当に死を覚悟した人はそんなことすら考えるほど冷静ではない。自殺を図ってその結果を左右するのは、そうした心情も影響しているのかもしれない。

     現状よりも死を選択しようとしている人に、綺麗事は通用しない。しかし、そんな追い詰められた人にも説得力がある理屈は「死は取り返しがつかない」ということではないかと思う。どのような人間でも間違える、というテーゼは誰しも納得のいくものであろう。今自分がしようとしている選択は正しいのか。よほど自信に満ちた人生を歩んでこなかった限り「自分は間違っていない」とは言い切れないはずである。そしてそういう人が自殺しようと思うのは極めて珍しい。世の中に「正しい」「正しくない」といった議論は数多くあるが、あらゆるテーマと「死」というテーマとの確かな違いは「可逆性」の有無である。

  • 「死ぬしかないと思った」「死ねばラクになると思った」
    ようはとにかく「ラクになりたく」て、死にたいわけではないんですわ。

    この状況から逃げたい。
    抜け出したい。

    すごくよくわかる。
    私は実践したことはないけど、危機感あった時期があったから、すごくよくわかった。

    それにしても、凄まじい体験です。
    少し気持ちが変なふうに傾いてしまうのも事実あった。
    だからかんたんにはすすめられないかな。
    それでも、貴重なルポだと思う。

  • 中学生の時に読んだこの本。死ぬなら凍死がいいなーって。

  • あまり好きじゃない本だった。
    なんというかむずがゆい。

    「自殺しようとしたけど、生きていて良かった」
    それがこの本のメッセージだけど、本当にそうだろうか?と思ってしまう。

    ただ死にたいからではなく、楽になるために自殺をするんだというのはその通りだとしても、必ずしもその先に「やっぱり生きていて良かった」と幸福を感じる保証はない。むしろ、八方塞になる人もいるんじゃないか。その人は「やっぱり死んでおけば良かった」と思うだろう。

    想像を絶する不幸というのは存在するし、それは健常者には語りえない話だ。真に自殺するに値する状況なんて存在しないという考えはどこか薄ら寒い。

    「生きていれば良いことがある」という価値観を共有したい著者の一人相撲のように思えてくる。

  • 2011.7.14.

  • 救命救急センターに運ばれてきた自殺未遂者へのインタビューです。
    死にたいかも?どうしよう。くらいの時に読むといいです。
    本当に死にたい時の方には、何の抑制力もないお話しです。

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