全戦全勝の哲学 宿澤広朗 勝つことのみが善である (文春文庫 な 57-1)
- 文藝春秋 (2009年6月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167753955
感想・レビュー・書評
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「永田洋光」が「宿澤広朗」の軌跡を綴った作品『勝つことのみが善である - 宿澤広朗 全戦全勝の哲学』を読みました。
『スクラム 駆け引きと勝負の謎を解く』に続き、ラグビー関係の書籍です。
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ラグビーでもビジネスでも超一流の生き方をした男。
その秘密はどこにあるのか?
2年連続日本一を成し遂げた早稲田大学のキャプテン、強豪・スコットランドから金星をあげたラグビー日本代表監督、世界と渡りあった三井住友銀行の凄腕バンカー…。
1年前、55歳でこの世を去った男の戦いの軌跡、全戦全勝の哲学に迫る!
ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞作。
≪著者からのコメント≫
本企画の話を受けたのは昨年10月、ぴあとは違う出版社からでした。
銀行関係者に実際に取材を始めたのは12月に入ってからで、そのときにはもう月刊現代誌上で「加藤仁氏」の『宿澤広朗 運を支配した男』の連載が始まっていました。
正直なところ、こういう後追いのような形で本を執筆するのは非常にやりにくく、また、最初に声をかけてきた出版社ともいろいろな経緯があって、一時は企画自体が宙に浮きかけました。
ただ、その間、私を支えていたのは「宿澤氏」と取材者─被取材者の関係で付き合いのあった人間として、ナマの宿澤氏」の姿を本に書き残したいという思いでした。
幸いご遺族からも長時間のインタビューをとることができ、「加藤氏」の切り口とはまったく違った視点から書き終えることができました。
もっとも、その過程で、「宿澤氏」を知っているが故に、頭の中で「本当にそうなの?」「ちゃんと裏を取った?」と氏の声が鳴り響き、パソコンを打つ手が止まることもしばしばでした。
とにかく、「宿澤氏」に読まれても恥ずかしくない本を──! というのが、足かけ8ヶ月間念じ続けてきたことでした。
果たしてそういう思いが読者の皆様に伝わるかどうか、一抹の不安はありますが、著者として(「宿澤氏」の言葉を借りれば)「これ以上やれることはないところまでやり尽くした」と自負しております。
どうか本書を手にとって、笑い、時には怒り、そして明晰な語り口でラグビーに限らず私たちの未来へ話題を広げた「宿澤氏」の存在を、身近に感じ取っていただきたいと思います。
本書の最終章とエピローグを書き終えたのが、2003年に「宿澤氏」がラグビー日本代表強化委員長として訪れたワールドカップの現場、オーストラリアのタウンズビルであったことも、何かの縁のように感じてしまいます。
著者のそんな思い入れを、どうか皆様に感じ取っていただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
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ラグビー好きな自分にとって、大好きな監督のひとり「宿澤広朗」、、、
1989年の「スコットランド」とのテストマッチでの金星(28-24)、1991年の第2回ワールドカップでの「ジンバブエ」からの勝利(ワールドカップ唯一の勝利)等、実績を残した「宿澤広朗」の活躍が以下の六章で綴られている作品です。
■第1章 黄金の日々
■第2章 世界と戦った2年半
■第3章 原点としてのロンドン
■第4章 一卵性家族
■第5章 集大成
■第6章 頂点へ
考え方に共感できたり、その行動や生き方に憧れを感じたりして、、、
本書を読むことで、「宿澤広朗」という人物のことが、益々、好きになりましたね。
経歴も、なかなか興味深い、、、
埼玉の熊谷高校でラグビーをプレーしつつ、東京大学を目指して勉強をしていたが、東京大学の入学試験が学園紛争の影響で中止(1961年の入試試験は、東京大学で唯一中止となった年度)となり、早稲田大学を受験して合格… 入学後、しばらくしてからラグビー部に入部という、変わった経歴の持ち主なんですね。
この偶然がなければ、その後のラグビープレイヤーとしての活躍、そして指導者としての活躍も無かったんじゃないかと思います… 運命って、不思議なものですねぇ。
あと印象深いのは、
「チームワークとは仲良し集団になることではない」
という言葉… 自立した個人がそれぞれの哲学とスタイルを持ってナショナルチームという最高の集団に所属し、勝つためにそれぞれベストを尽くし、勝利という結果を得るということで自分自身の名誉を高めるという、「宿澤広朗」自身の哲学を反映した言葉とのことですが、これは仕事にも通じること、、、
一人ひとりが個を確立したうえで、責任を果たす… それが名誉を高めることになるんだと思います。
この精神は、仕事だけでなく、生き方としても意識しておきたいことですね。
2006年に55歳で亡くなったのですが、、、
仕事とラグビーを両立させながら猛スピードで駆け抜けた人生は、真似したくても真似できないですねぇ… 本書でも「生きた時間」と「生きた密度」の積は、どんな人間の値よりも大きかったのではないかと述べられていますが、ホントに納得できますね。
見習うことの多い一冊でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
尊敬する宿澤さんの本。
素晴らしい人生だった。
本としては普通。 -
宿澤広郎さん。早稲田ラグビー部(キャプテン)のOBで、
元全日本監督。全日本監督時には、平尾キャプテンとともに、
強豪スコットランドからの勝利やワールドカップでの一勝
など金字塔を打ち立てた方です。協会改革にも積極的で、
エリア毎に開催していた社会人ラグビーリーグを統一し、
トップリーグとして再編したのも、宿澤さんの業績だそうです。
なにより凄いのが、上記のような活動と平行して、銀行マン
としても高い業績を上げ、重役まで登りつめたこと。次期
頭取候補だったそうです。仕事も一流だったんですね。
2006年、急逝(登山途中に心筋梗塞)されたときには、
一般紙や雑誌でも取り上げられていました。
私も、雑誌ナンバーでチラリと記事を読んだ記憶があります。
この本は、ラガーマンとして、また、バンカーとして、
故人の業績や人柄、その哲学に迫るノンフィクションです。
勝利のために、徹底的に努力し、その可能性を高める。
ラグビーも銀行業務も精一杯取り組むのは、「名誉」
のため。
ラグビーは紳士のスポーツ。だからこそ、試合終了を
「ノーサード」と呼び、アフターマッチファンクションなる
試合後の交流会で、体をぶつけ合ったお互いの勇気と名誉を
称えあうんですね。
ラグビーから学べることは、沢山ありますね。 -
三井住友銀行で頭取目前までいく傍ら、ラグビー日本代表監督としても手話を発揮したにも関わらず、急逝された素晴らしき先輩の話。
タイトルを見たときは「何かいやな感じだなぁ」と思ったが、読むにつれてイメージが変わっていった。
この方は何においても「成功する」資質を持っていたのだと思う。その資質をなぞりつつ自分の良さも出して仕事をしたい。
また、自分の内定先の仕事のイメージも更に膨らんだので、読んでよかった。
ただ、スポーツドキュメントとしては沢木耕太郎や山際淳次に比べて文章力が劣ると言わざるをえないのは残念だ。
その分☆は4つ。 -
早稲田ラグビーから他界されるまでを、いろんな関係者の方の話を織り交ぜながら活躍中された軌跡を綴られています。強引ではあっても、ぶれない目標に向かって突き進む姿をリアルタイムで見たかったな。
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「宿澤広朗」という男の人となりが良く分かる本。
ラグビー日本代表の監督と銀行の役職を両立させ、どちらにも多大な功績を残した彼の仕事論から学ぶことは多い。日本人離れした行動力と、結果を導くまでのプロセスを大事にする姿勢は常に説得力がある。ぜひとも見習っていきたい。
一流の監督は優れたマネジメント力を持つと言われる。そこにはスポーツとビジネスという垣根は無く、個々人の本質を見抜くという行為でしかないと感じさせられる。 -
「二足のわらじ」とは宿澤さんのような人のためにある言葉だと思う。
ラグビーにおいても、バンカーとしても、どちらかが忙しいことを言い訳にせず、果たすべき責任を果たし続けたのは本当にすごいことだとしか言いようがない。
著者の、「宿澤の『生きた時間』と『生きた密度』の積は、どんな人間の値よりも大きかったのではないか」という言葉がその人生を言い得ているんだと思う。
私がラグビーを知らないせいでその偉大さを100%感じられないところがもどかしい…。
宿澤氏自身の著書もぜひ読んでみたい。 -
2009年82冊目