高倉健 Ken Takakura 1956-2014 (文春文庫 編 2-56)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907389

作品紹介・あらすじ

2014年11月10日、83歳で亡くなられた高倉健さんの追悼本です。養女である小田貴さんの特別手記は、病気が発覚してから亡くなるまでが臨場感あふれる筆致で描かれています。たとえば「薬や機械に頼ることなく、最後に自らの呼吸で旅立つまで、頭にあったのは”次の一本”」「苦しい呼吸の中、一生懸命言葉を発し続けてくれました。最後に聞きとれたのは、『慌てるな、慌てるな』でした」など、克明な闘病生活が綴られています。亡くなる4日前に完成したという健さんの「最期の手記」は、本誌に戦後70周年企画で掲載されるや大反響を呼んだものです。病床で推敲を重ねて書いた原稿の最後には、「僕は、志があって俳優になった訳ではない。思いもよらない変化をかいくぐりながら、出逢った方々からの想いに応えようと、ひたすらもがき続けてきた。『往く道は精進にして、忍びて終わり、悔いなし』」と死を覚悟していたかのよう。長嶋茂雄、降旗康男、奈良岡朋子、沢木耕太郎など健さんと交流のあった著名人のインタビューや原稿、映画関係者による全205作品鑑賞ガイド、健さんが自ら答えた一問一答や愛憎品なども掲載。健さんが二度命を落としそうになった映画「南極物語」撮影秘話は涙なしには読めません。ガンと闘った余命いくばくもない医師との心温まる交流など、高倉健さんのお人柄が偲ばれるエピソードを紹介してくれたサンテレビ報道部記者の藤岡勇貴さんは「高倉健さんと不思議なご縁をいただき、そしてこのたびの文庫化を通じてこのことを世の中に知らせていただけることに感謝を申し上げます」とのこと。高倉健さんの生き方に、改めて感動し、ファンになること間違いないの内容です。

感想・レビュー・書評

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  • (01)
    高倉健の出演と俳優人生が,本人の手記やインタビューを僅かに含んでいるが,彼と交友関係やビジネス関係のあった人物たちの証言(*02)などで多角的に語られている.
    とはいえ,彼が出演した200本以上の映画のうちで,出演本数や配役の大きさからいえば,1960年代から70年代に彼の俳優としてのピークがあり,以降は出演作品を選んでいたためか,フィルモグラフィーからは80年代以降の出演は20本未満を数えるに過ぎないことがわかる.本書には語られることはないが,出演料が高額になったことと邦画の斜陽化もその背景にあったに違いない.
    指摘のあるように,彼の三白眼について,出演当初は忌み嫌われており,その後受容されていった経過には社会的な事情と要請も影響したのだろう.その偶然を手にしたにしても,彼の役に対するストイックさ(*03),現場での佇まいは,彼なりの演技メソッドもあったのだろう.陶芸,密教,コーヒーに代表されるような趣味や嗜好は,役へのスイッチや入り方の媒介としての意義があったように思われる.

    (02)
    野球人,アーティスト,プロデューサーやスタッフなどメディア人,経営者や外交官など交友や影響の範囲は当然ながら広い.『君よ憤怒の河を渉れ』など中国での出演作ヒットもアジア映画史として興味深い様相を示している.炭鉱町から巣立ち,主演俳優となる前の彼の前半生についての証言は少ないが,アジア的アイコンとなる過程として重要な挿話もあったに違いなく,いっそうの俳優研究が望まれる.

    (03)
    笠智衆との共演作についてのエピソードが国谷裕子との対談で引き出されている.笠は老人ホームの入所者を「怠け者」と撥ね付けており,その印象を尊敬する役者としての笠のイメージの劈頭に掲げていることに留意したい.役者としての孤独や自立,そして世間からの乖離に生じた批評的な余白が,彼らの役づくりのコツであることを告げている.

  • 高倉健が亡くなって、少しして新刊文庫で出たのを購入したのだが、途中まで読んで、永らく積ん読していたのを、今回読み終わった。
    初版は2016年だから、買ってから5年くらい経っている。
    積ん読恐るべし。
    本の中で語られる映画でも、僕は東映のヤクザ映画の高倉健をまるで知らない。
    「仁義なき戦いシリーズ」はビデオやDVDで全て見たが、「唐獅子牡丹」や「網走番外地」は何も知らない。
    「野性の証明」「夜叉」「南極物語」「八甲田山」「幸福の黄色いハンカチ」など東映を離れてからの活動の方が、僕には馴染み深い。
    この本を読んでいる間、何だか背筋を伸ばされるような気がして、暮らし方の些細な部分に影響を受けていたようである。
    エピソードを読むだけで、元気が出るのは矢張り大スターなのだと思う。
    ノンフィクションやドキュメンタリーのようなものは、あまり読まないが、「りんごは赤じゃない」「マイノリティの拳」「生き仏になった落ちこぼれ」魂の森を行け」などは、とでも面白く読んだ。
    残念ながら、絶版のものも多いのだが。
    ビートたけしファンだった僕は、横浜まで「夜叉」を一人で観に行った。
    そして、その日たけしはフライデー襲撃事件をおこした。
    これは、単なる偶然だが、印象に残っている。

  • 18年間、生活をともにしてきた女性、養女の小田貴さんの特別手記「2014年、闘病の日々」が目につきます。「辛抱ばい」、83年の人生をそう生きてきた(いつも母親に喜んでもらいたかった)健さんが唯一弱音を吐けるひとだったんだなと思いました。「鳥肌が立たないといい仕事ではない」確かにそう感じます。「本当に大事なものは、人の思いです」、全く異論はございません! 全205作品、ひとつ選べと言われたら「昭和残侠伝」。もうひとつだと「幸せの黄色いハンカチ」でしょうか!

  • 【初めて明かされる闘病の日々、そして最後の手記】高倉健さんが亡くなって2年。日本映画の黄金時代そのものだった昭和の大スターの、清廉高潔な生き方と魅力を余すことなく伝える追悼

  • 幼女が語る最後の姿。最後の手記(敬愛する阿闍梨さんへの追悼文?)。多岐に渡る交友からの追悼文。映画評。インタビューと内容は盛りだくさん。

    個人的に面白く読んだのは、沢木耕太郎との交友。たぶんインタビューは間に合わなかったであろう春日太一による高倉健評。この他、みんな約束に間に合わなかった。って言っている。諸行無常。

    あと、明らかにカラーが違う文体が飛び込むと思えば吉田豪らしい各タレント本からのやんちゃな高倉健評を面白く読む。

  • 私が観たことがあるのは東映を離れてからの作品ばかり。若いころの作品も観てみたいと改めて思う。

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