玉依姫 八咫烏シリーズ5 (文春文庫) (文春文庫 あ 65-5)
- 文藝春秋 (2018年5月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167910617
感想・レビュー・書評
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今作では舞台となっている「山内」の誕生が明らかとなる。八咫烏たちはなぜ人の姿をしているのか?先代の金烏に何があったのか?襲撃してきた猿の存在は一体なんなのか?この辺りも明らかになるので、今まで読んできた方ならばきっとハマり込むだろう。第三弾『黄金の烏』を読んだ時に、「山内」だけでなく外界にも派生していく物語かと少し感じていた部分はまさに今作がそれに当たる。だが、著者後書きによるとこの『玉依姫』はデビュー作よりも前に書いていたものだというのだから、第三弾で感じたことはもともとの世界観を匂わされていただけだったことが分かった。そして、次作で第一部が完結するようだ。第三弾まで読まれた方は今作までは読んでみることをオススメするが、結局ここまで読んできた方なら次も気にならないはずはないと思うので、結果せめて第一部は全て読み切ることになるのだろう。前作の最終ページを読んでいたら次作が気にならないわけないですしね。
神への崇拝と祭祀の意義。利他の心は信用と愛を生み出したが、利己の心は混乱と怨恨を生み出す。「山内」という異世界が舞台でありながら、利他も利己も共に同じ人間という種族の中にある心が描かれていることが、どこか完全にリアルな世界と切り離せない感覚を覚える。名前より幸せを見つけられて良かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
はー…こんな展開で来るんですね。
前巻まで慣れ親しんだ八咫烏たちの住む山内という世界とは違って、今巻の舞台は平成の日本。
登場人物たちも、出てくるのは若宮と真赭の薄ぐらい。なんと、雪哉が出てこない…だと…!
あと、ひどい怪我を負った八咫烏はたぶん彼だよね?真赭の薄があれだけ親身に看病してたということは。助かってほんとに良かった…。
日本神話をベースとして、山神とそれに仕える巫女・玉依姫の話はそれはそれで面白いんですが、どう前巻までの八咫烏たちの話と繋がるのか読みながら気が気じゃありませんでした。
やっぱりずっと読んできて感情移入もバッチリしちゃってる登場人物たちにはみんな幸せになってほしいし、でもどう考えても不穏なことになっちゃってる雰囲気しか感じ取れない。
ラスト、彼らはあれはあれで幸せになったと言えるのかもしれませんが、八咫烏たちの山内はどうなっちゃったのー!?
…とりあえず、次巻を早急に読みたいと思います。
次巻で第一部が完結するみたいですしね。
すべてがまるっとハッピーに片付きますように!(でも難しそう…なんとなく泣)
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エピソード0の位置づけとなる『八咫烏』シリーズ第5巻。神隠しの話しは、丸で十二国記の『魔性の子』のようであり、『天上編 宇宙皇子』にも似たような話しがあったなぁと思いながら、読み終えました❗
1巻と比較すると、大どんでん返しがある訳でもなく、自分が少し日本神話を苦手にしていることから、読み終えるのに少し時間が掛かりました❗
また、途中に少し遣り切れない話しがあって、純粋に物語を楽しめなかったのは、ちょっと残念でした❗ともあれ、物語の全容が解明されて、次巻の最終作に期待したいと思います♫ -
2回目。文庫にて。このシリーズ、巻を増すごとに視野が開ける。これまでの八咫烏の世界から一気に八咫烏の見え方が変わる。
1回目読んだ時、この作品があまり好きでなかった。
今まで信じていた烏の世界が大きく揺さぶられることと、ワクワクよりじめっとした世界観が強く残った。でも、今はこの先の展開も読んでいるのでもっとフラットに、世界観の転換として捉えることができた。
1回目にこの作品を読んだ時の奈月彦の印象の違いへの驚愕は、まだ第一段階にすぎない。フリーザ第1形態では驚いちゃいけない、という感じ笑
2024.1.7
5 -
八咫烏シリーズ5作目にして、舞台は人間界に。実は読み出した時は、それまでの八咫烏シリーズの雄大な世界観が一気に縮小してしまったような感覚が少しあったが、物語はさすがのおもしろさだった。
作者の阿部さんは20歳での松本清張賞受賞が話題になったが、この作品はそれをさらにさかのぼる高校生の時に書かれたものがベースだとか。恐るべし。本編の主人公・女子高生の志帆があまりに不安定で、キャラクタとしての統一性が崩れているように感じた。しかし作者自身も当時は女子高生だったことを知ると、また見方も違ってくる。
天狗が自らを語る口調やクライマックスでの英雄と志帆のやり取りは、まるで本格ミステリの探偵が謎解きをしているかのよう。どんでん返しに次ぐどんでん返しといい、阿部さんはミステリもいけるのでは。
本シリーズの特徴は、立場が変わると同じ出来事でもぐるりと違って見えるということ。それが意外な真実につながるのだ。次作でまずは第一部が完結。どう落としていくのか楽しみだ。 -
山内の謎、というか起こりの話とその後の話、というのかな。面白かったけれど、あれ?ともなった。それに若宮の脇役感というか小物感というか。これまでがむちゃくちゃ面白かっただけに、少し残念。
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前作までとは趣が違う。正直言うと,こちら側との関係を持ち出してほしくなかった。せっかく作り上げた世界観が薄れてしまう。
あらすじ(背表紙より)
高校生の志帆は、かつて祖母が母を連れて飛び出したという山内村を訪れる。そこで志帆を待ち受けていたのは、恐ろしい儀式だった。人が立ち入ることを禁じられた山の領域で絶体絶命の少女の前に現れた青年は、味方か敵か、人か烏か?ついに八咫烏の支配する異世界「山内」の謎が明らかになる。荻原規子氏との対談収録。 -
八咫烏シリーズの5冊目。
外伝みたいなお話かと思ったが、作者が語るところによれば、この話が一番最初に書かれ、ここから八咫烏シリーズに展開したみたい。
元よりマンガみたいなシリーズであるが、今回はまた輪をかけたお話で、村人に生贄を要求する山神とそれに仕える烏と猿、そして生贄として差し出された女子高生という図だが、この差し出された志帆という子が何ともけったい。
天狗が出てきたり、途中からは日本古代の神々の話になり、これは「RDG」に似てきたなと思っていたら、巻末には阿部智里×萩原規子の対談が載っており、さもありなん。
荒魂やら和魂、生贄譚と巫女、八百万の神々への信仰など、色々語られる割に分かったようで分からない話で話を締められ、何だか消化不良だわな。 -
八咫烏シリーズ5作目。
前作が、いよいよ烏vs猿の壮大な戦いが始まる……
といった終わりだったので、読み始めて、あれ?となった。
思わずカバーと中身違う?と思って、確認したほど。
山内という今までの世界を抜け出し、まさかの現代、しかも日本での物語。
主人公も今まで名前すら出てきていない、新しく出てきた、女子高生。
雪哉は?若宮は?もういっそあせびでも良いから、八咫烏に出てきてほしい……
と焦れてきた頃、段々と繋がりが見えてくる。
様変わりしただけでなく、少しおどろおどろしいテイストなので、好き嫌いが分かれそう。
結末も賛否両論ありそうだけど、私は1作目同様、嫌いではなかった。
お気に入りというか、「まるで口の中に入ってしまった一本の髪の毛のように、ささやかながら強烈な違和感を残していた」という表現は、分かりやすくゾクリとさせられた。
志帆の台詞だったら、やっぱり「——あなたは、ただ単に、生き方が椿の花と同じだったというだけ」が好きだった。