柘榴パズル (文春文庫 あ 87-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167916930

作品紹介・あらすじ

「この夏が、永遠に続けばいいのに」。
とぼけたお祖父ちゃん、料理上手で力持ちのお母さん、クールだけど実はとても優しいお兄ちゃん、甘え上手の妹。
大好きな家族に囲まれた19歳・美緒の夏休みに、不思議な事件が相つぐ。一致団結して謎にあたっていく仲良し山田一家に、忍び寄る怪しい影がーー。
気鋭作家渾身の、ミステリー連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • "家族”を題材とした短編ミステリー小説。どこにでもいそうな山田家やその周りいる人々との交流を通したハートフルなストーリー、

    …かと思ったらそれは読者に対してのミスリードでしか無く本当は"家族"の愛に飢えた人間達が家族を演じる疑似家族であった。
    個人的な伏線としては
    ・祖母の描写は出てくるのに、父親の描写が全くといって良いほど出てこない。→ショウコが父であり母だから。
    ・写真屋の安藤が最初に山田家と出会ったときの反応→そもそも友広が山田家を家族であるという感覚が他の人に比べて少なく、安藤に対してそこまで家族の話をしていなかったから。
    ・友広が突然現れた坂口に不信感を抱いていた→"山田家"の秘密がバレるの内心恐れていたから。
    ・桜子を置いていってしまった恭子に対する桃子の反応→自分も同じような目に遭っていて桜子に自分と同じ思いをして欲しくないと思ったから。
    など思い返すと腑に落ちるところが多いと感じた。

    彼らは寂しさから家族として生活し作品の中でも、騙すつもりで暮らしていたわけでは無いのに源一郎の妹たちの反応はとても独りよがりで気持ち悪かった。彼らは源一郎の言葉通り表面でしか物事を見ることの出来ない人々なのだと感じた。
    そしてエピローグは"山田家"は解散し、それぞれに散っていくことになるが、最後のシーンで彼らは一歩踏み出して、前に進んでいて彼らの日常が決して無駄では無いと分かり、ほっとした。

    そして最後のページのあのシーン、表紙を見て納得した。そういうことだったとはなぁ。

  • まさかこんな展開になるとは!
    日常に起こる奇妙な事件をさくっと解決していく複数のお話は、それほど引き込まれるという感じの内容ではなかった。
    話の間に挟まれる一家殺害の記事により、最後に重い事件が起こるのだろうと想像でき、それを求めて読み進めた。が、これが予想外だった。
    最後は良かったなぁ。

  • 面白い。家族、その周辺で起こる事件の謎解きが、短編として連なる。そして、所々に挟まれる凄惨な事件の記事。読むに連れ何となく違和感を覚える「家族」。大きな嘘は金目当てでは無い、誰もが一度は良いなと思う「サザエさん」。誰もが皆んな少しづつ嘘をついて生きている。それは悪い面ばかりでは無い。新たな家族の創生も良いけど、ちょっと戻って欲しかったかも。

  • 少し重い目だが、一応は日常の謎を仲良し家族が解き明かすという、一見ハートウォーミング系のミステリ連作なのだが、幕間に不穏な情報が差し込まれるので、心温まるとはいかないのがミソ。全編を通しての種明かしである「バイバイ、サマー」を除く、四編のうち三編までハウダニットで、丁寧に作り込まれたトリックだけれど少々小粒な感じ。推理しなくても、犯人(?)はストーリー的に大体見当が付いてしまうはず。ただ、お話の雰囲気からして妥当な感じで、物語にはよく溶け込んでいるように思う。

  • 幸せな家族の日常の謎に時折挟まる不穏な新聞記事。巧みな構成にいつの間にか引き込まれ、気がつくとこの家族の幸せが壊れないよう、祈りながらページをめくっていた。本を閉じたとき、感情がかき乱されしばらく呆然とした。すごく刺さった作品です。

  • ちょいちょい挟まれる事件記事がいい。本編とギャップがありすぎて気になってしょうがなかったが、それも最後にすっきり。似たプロットの作品や映画があると解説にあったので、読み慣れた人には不向きかも。

  • 2022.2.21-493

  • 巧みな構成と人物描写の上手さで引き込まれるように読みました。伏線は幾つか張ってあるのね。

  • 「物事は、なんでも見た目通りじゃないからねえ?」。いつも嫁の名前を間違える祖父、柔道部出身という母、どこか冷めた兄、年齢より幼い妹、そして私。ほんわかしたムードで4章300ページにわたって繰り広げられる家族ミステリーはところどころに不気味な伏線が引かれ進み、読者はなんとなく違和感をずっと感じながら読み進めることになる。そしてその違和感は最後の20ページで鮮やかに回収される。平易で読みやすい文章だが、著者の技量が光る佳作。

  • 仲の良い家族が日常の謎を解決していく連作短編なのかなと思いきや、なぜか間に残忍な殺人事件の記事が…まさかこの家族に…と心配&ドキドキしながら読み進めていくと、驚きの展開が待っていました。
    家族の物語とミステリーが両立した作品でした、面白かったです。

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著者プロフィール

山形県生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。『未成年儀式』で富士見ヤングミステリー大賞に準入選し、2009年にデビュー(文庫化にあたり『少女は夏に閉ざされる』に改題)。他の著作に『ひぐらしふる』『夏の王国で目覚めない』『僕らの世界が終わる頃』『サクラオト』『思い出リバイバル』などがある。本作『向日葵を手折る』が第74回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門にノミネート。

「2023年 『向日葵を手折る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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