楽園の烏 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 803
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167919405

作品紹介・あらすじ

<シリーズ累計180万部突破>
「八咫烏シリーズ」新章スタート!

新宿の片隅でたばこ屋を営む青年・安原はじめ。7年前に失踪した父から「山」を相続した途端、「山を売ってほしい」という依頼が次々と舞い込み始める。そこへ現れたのは、“幽霊”を名乗る美しい女。山の秘密を知るという美女に導かれ、はじめはその山の“中”へと案内される。
その場所こそは、山内と呼ばれる異界。人の形に変じることのできる八咫烏の一族が統治する世界だった――

猿との大戦(『弥栄の烏』)より20年の時を経て、物語は現代の風景から始まる。
舞台は次第に「山内」へと移り、動乱の時代を生き抜いた八咫烏たちの今、
そして新たなる世代の台頭が描かれる。

第1部以上のスケールで展開される、傑作異世界ファンタジー。

感想・レビュー・書評

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  • 大好きなファンタジー
    八咫烏シリーズ8巻目
    第二部が始まった!
    第一部6巻目で終わりかと思ったら、外伝的な7巻目のあとがきに、第二部に続きます、とあったので楽しみにしていた。
    けれど、文庫版に時間がかかり、この頃の記憶力低下のせいか、読み始めのうちは、千早?誰だったかな……
    読み進めるうちに思い出したけれど、雪哉の変わり方にはびっくり!
    しかし それも終盤、次の巻で明らかになりそうな予感。
    20歳で、1巻目を書き松本清張賞!
    今31歳位で、段々上手くなっている。
    これからが、とても楽しみ。

  • 第一部の読了から半年強空いたものの、読むと再び八咫烏の世界に引き込まれていった。
    今回は人間界から話がスタートし、タバコ屋を営む冴えない中年男、安原はじめが中心人物。はじめが養父から相続した「山」には何か想像もつかない秘密が隠されている。「幽霊」とともに山を目指したはじめは、山の中にどんな世界を見るのか…

    山内世界は第一部の猿との大戦より20年の時が流れている。
    中央で政治的実権を握るのは雪斎、かつての雪哉なのだが、まあだいぶ非道な権力者になってしまったなというのが一番の印象。長束に言わせると「必要性の奴隷」であり、すべてを合理性で考え、物事を進めるのが雪斎だ。
    そんな雪斎が実質的に統べていると言って過言ではない今の山内は果たして楽園なのか。はじめとともに改めて山内を旅しながら、そこに暮らす八咫烏たちの生活を見て、楽園とはどんな場所か、楽園には何が必要なのかを問うのが、今回の主題になっている。
    どんなに恵まれた環境でも、いい物がたくさん与えられても、自由や人とのつながりがないと人は幸せに生きていけないのだと改めて考えさせられた。

    はじめは最初「大丈夫かこいつ」と思うほど適当すぎる人物に見えたが、なかなか頭が切れるところもあり、最後に明された正体には驚き。
    またラスト1ページは「幽霊」の正体もほのめかされており、空いた20年に何が起きていたのか気になる。
    雪斎、長束の他、千早が再登場したのは嬉しかったが、若宮や浜木綿、明留らが今どうしているのかは全く描かれず、謎が残る。
    次回で過去に戻ってその辺りが見えてきそうなので、読まなければ。

  • 八咫烏シリーズ第二部。
    作者さん、どこまで想定していたんだろう。

    八咫烏の住む山内の権利を、現実世界の人間が父親の失踪によって譲渡される所からのスタート。
    八咫烏側としては、人間たちに勝手に開発されては困るわけで。
    なんとかして、はじめの持つ権利を奪いたいと考えている。

    そんな所で、中年雪哉の登場!
    なんか、やってること見てると、鎌倉殿の義時を彷彿とさせるんだよね……。
    恐らくは山内の維持のために、露悪的に振る舞う様子とか。陰謀に陰謀を重ねて、相手をゲームセットに持ち込んじゃう所とか。

    そうして、今部のテーマとは何なのか。
    ラストにバタバタと明かされる情報だけでは、まだまだ見通しが立たないんだけど。

    とりあえず一年に一度の楽しみは継続。嬉しい。

  • 八咫烏シリーズの第2部開幕とあって、ファンの期待を背負った形での発売だ。1部の登場人物がこぞって現れ前作から20年後の世界が描かれる。山内と人間界との関わりが明かになり、烏と猿、人間、天狗、そして新たな登場人物たちの思惑が交差して事件が起きる。
    八咫烏シリーズはファンタジーという形を成した政治の話だも思う。そんなこと考えていたのかお前は!!と話が進むにつれて明かされるこの20年の出来事と、さらにこれから。
    ここは本当に楽園なのか?、何をもって楽園なのか。
    あっという間に読みきってしまう面白さはさすがだ。

  • 本作品の見どころは雪哉の豹変ぶりだ。

    第一部の八咫烏シリーズの中で、一番緻密かつ複雑に何度も描写された雪哉。

    幼少期の雪哉(シリーズ2)と雪哉の成長する生活(シリーズ4)を読んで、雪哉を好きになるしかないほど、雪哉は魅力的なキャラクターである。

    そんな雪哉を投影したまま本作品を読み進めると、「かわいかった雪哉がそんなことするはずない」と叫びたくなるほど別人だった。

    果たして雪哉改め雪斎は、八咫烏の民に生きやすさと、不満の矛先を宮中(金烏)に向かせないために、捏造した猿を作り出したのだろうか?
    雪哉がそんな誰でも思いつく理由で、虚構の猿を作ったのか。

    本作の主人公はじめは、「楽園に必要なもの」を雪哉が持ってくれば権利を渡すと言った。本作の後半で、はじめは、答えは「人、そして、人との関わりは喜びだ」と明らかにした。

    この言葉を噛み締めているうちに私は、雪哉が茂丸の遺体に絶叫し、炭になった体に縋り付く姿がよぎった。

    唯一対等に話し合えるかけがいのない友人を奪った、山神・大猿に復讐心が感じとれ、ゾッとしてしまった。

    杞憂で終わればいいなと、現段階読み進めてきて、切に願う。

    引き込まれる世界観を作り出す著者様に感謝である。

  • 新章の幕開けを感じさせられた!
    すべて博陸侯の手の上かと思っていたらまさかの大どんでん返しに最高に痺れました。
    このシリーズは本当に毎回面白い。
    そして読み進めるたびに雪哉の雰囲気がガラリと変わってしまう。彼への評価はバラバラだし、今回の非道な言動含めてますます彼がわからなくなりました。
    山内を守るため、が真意なのか、あえて悪役じみたことをしているのか。
    そこも含めて続きが楽しみです。

  • 面白かった!
    舞台が前作から20年後で、安原はじめが主人公というストーリーが新鮮だった。

    最後の文章で、空白の20年に一体何があったのかと思わずにはいられません。

    次巻は過去編とのこと。
    読むのが楽しみです。

  • 全然違う話になってる。八咫烏の世界はどうなるの?

  • 山内のシステムを別な視点から補間する.これまでの内容に張られていた伏線が綺麗に回収されつつ,社会的テーマも輻輳する,読み応えのある本作が益々層を厚くする.単なるエンターテインメントとしての物語だけでない深みが今後も楽しめることが嬉しい.

  • いやー、おもしろかったな。雪哉がこうなるのか。失礼を承知で言えば、十二国記と彩雲国の二番煎じ的な見方をしていたところがあったのだけれども、ここに来て俄然結末に興味が湧いた。ふたつの世界のつながりを現在進行形で濃くして、どこに落としどころを持っていくか? 続きが楽しみ。

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著者プロフィール

1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞受賞。デビュー作から続く「八咫烏シリーズ」は、松崎夏未氏による漫画化、中台翻訳など進行中。19年『発現』(NHK出版)刊行。

「2023年 『烏は主を選ばない(4)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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