写真館とコロッケ ゆうれい居酒屋3 (文春文庫 や 53-7)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167920517

作品紹介・あらすじ

新小岩の路地裏にある居酒屋・米屋。
ここには、甘酸っぱい初恋やピリ辛の下積み時代、ほろ苦い嘘や挫折など、人生の喜怒哀楽にそっと寄り添い、あなたの背中を押してくれる美味しい料理とお酒があります。だけど、このお店には大きな秘密があって……。
売れっ子のDJや女将さんの亡夫の釣り仲間、写真館の主人などなど、きょうも米屋にはいろいろなお客さんが訪れます。
父と娘、母と息子、すれ違う想いや許されぬ恋、そして忘れられぬひと……素敵な出会いと切ない秘密、読めば必ず元気になれる、ちょっと不思議で温かい居酒屋物語、待望の第3弾。

感想・レビュー・書評

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  •  東京葛飾の新小岩にある居酒屋が舞台のオカルトファンタジー。

     そこは商店街の裏通り。現在では整骨院になっている土地は、かつて米屋という居酒屋があった。その店は 30 年前に女将が亡くなり店も人手に渡って久しい。
     ところが、今でも夕方になり悩みを抱えた人が通りかかると、米屋は忽然と現れ、悩める人は誘われるように暖簾をくぐる。

     さて今夜、女将の心づくしの酒とアテに邂逅する客の抱える屈託とは……。 シリーズ3作目。
             ◇
     誰かに呼ばれた気がして、秋穂は目が覚めた。どうやらうたたねしていたらしい。仏壇の前に座った秋穂は、さっきまで夢でおしゃべりしていた夫に手を合わせた。さあ開店の準備だ。

     軒先に暖簾を上げると、さっそく常連客が戸を開けて入ってきた。皮切りは沓掛音次郎と水ノ江時彦だ。 ( 実は2人とも冥界の住人だが本人たちにその自覚はない。)

     午後9時に店から客が引けた。いつもの夜よりも早いが、もう看板にしようかと秋穂が迷っていると、喪服姿の中年男が入ってきた。
     男は長い金髪を三つ編みにして肩に垂らしており、生え際には剃り込みを入れている。おまけに夜だというのにサングラスをかけている。怪しげな一見客に息を呑んだ秋穂だったが……。  
     ( 第1話「イワシは33回転」) 全5話。

         * * * * *

     今回は各話ともオープニングは秋穂と正美のやり取り ( もちろん秋穂の夢 ) で、亡き夫である正美の為人が少しずつわかる展開になっています。2人は子どもはいないものの、仲睦まじい夫婦だったのがよくわかります。

     さて3作目も5話構成。いずれも心温まるお話でしたが、気に入ったのは第3話の「新小岩のリル」です。
     堅実に生きるふみえと消費文化に毒された美貴。そのスタンスの違いが米屋では際立っています。分をわきまえるのか分を超えるのか。
     米屋が秋穂1人で切り盛りできるだけのアテしか出さないことを考えれば、ふみえと美貴のどちらが落ち着ける店なのかははっきりしています。そこのところの描写がおもしろかった。

     ところで我が家のネコも完全室内飼いなのですが、ふとしたはずみで外に出たことが何回かありました。ただ出てみたものの室内とはすべてが違うためか、足がすくんでその場で固まってしまったので楽に保護できました。
     それでも念の為に、爪研ぎを使って家へのルートを示す方法は覚えておこうと思いました。

     長く飼っているとネコもかけがえのない家族だというのは実感しています。
     今年で 15 歳の我が家の老猫。動きもゆったりしてきています。これからも仲よく暮らして、いざそのときがきたらきちんと看取ってやりたいと思います。

     本シリーズを通して描かれるのが「昭和は遠くなりにけり」という思いですが、それでも山口恵以子さんを育てた昭和の人情が、今でも変わらず人々に安心と元気をもたらしていく展開にうれしさを感じてしまいます。
     そんなことを思って読み終えました。

     「魔法のタレ」は、さっそく作ってみます。甘エビがスーパーに並ぶときが楽しみです。

  • 『ゆうれい居酒屋』シリーズ第3弾!
    いや~~、このシリーズは本当に面白いです。
    第1弾を読了したのが2月4日、第2弾が2月18日、そして第3弾(本書)が2月28日で、今月読了した9冊中3冊がこのシリーズとなりました。
    私の場合、就寝前の1~2時間にジャンルが異なる3冊ほどを併読するのが通常の読書パターンとなっており、このシリーズは1日に1話(1冊に5話収録)を読むことが多かったのですが、その度にほんのりと温かい気持ちにさせていただきました。
    また、本シリーズを読んだ方は、「米屋」に行って、音二郎さんをはじめとする常連さん達と一緒にホッピーを呑みながら、秋穂さんの作った料理を食べたい気分になること間違いなしです!
    次回(明日、絶対に行こう!)、本屋さんに立ち寄った際には、『ゆうれい居酒屋4』を持ってレジに向かっていることでしょう。

  • 新小岩駅南口の商店街の路地裏にある居酒屋・米屋。常連さんで持っている店だけど、ふらりと立ち寄る一見さんの悩みを、アットホームなメンバー達が親身にアドバイスしてくれて…

    お気に入りは「ルアーはかすがい」
    彼氏と徐々に疎遠になっている事に焦る環奈に、常連さんが釣りを勧めてきた。釣りなんてやる気のなかったが、いざやり始めるとどんどん面白くなって行く…

    1人の時間を楽しむ事ができる様になり、彼氏に依存していた事から解放されて良い意味でフェードアウトできたのが良かったです。

    どの話もほっこり温かい読了感で楽しみにしているシリーズ。また次巻も期待しています。

  • 新小岩駅前ルミエール商店街にある米屋。
    米屋って名前だけれど、居酒屋。
    そして、居酒屋は居酒屋でも、実在していない居酒屋。

    このシリーズの好きなところは、さらっと読めて、ほっこりするところ。
    少々、こじつけっぽいところも否めないが、そこまで気にはならない。

    今回、読んでいて、今更気づいたこと。
    単に幽霊のやっている居酒屋に、悩める人が行ったってわけではなく、その居酒屋の中は、時空が捩れているよなーと。
    だって、そこで話したことを30年後の子供が親から聞いてるんだもん。
    だから、実際は、居酒屋を発見した時代にタイムスリップしているってことよね。

    今更ながら面白い設定だなー。。

  • 3作目と気付かず読んだ。
    美味しそう…

  • 女将の時代と現在、この30年のズレが良い味を出しているんだよねぇ。
    「アボカド梅ポン酢海苔大葉」‥これ、絶対美味いやつ!
    木村拓哉主演の「HERO」の「あるよ」、懐かしい!

  • シリーズで読めることが幸せ。
    作者の山口さんもさくさくと美味しい物を作る方だんだろうなと思った。次は食堂のおばちゃんシリーズが読みたい。

  • シリーズ三作目。
    ワンパターンなんだけど、つい読んでしまう。
    安定のほっこり。

  • イワシは33回転/ルアーはかすがい/新小岩のリル/
    写真館とコロッケ/めぐりあう秋刀魚

    優しい人?に話を聞いてもらって、ちょっとした美味しいものを食べれば幸せだね。

  • 今シリーズも安定のワンパタ具合が心地よい。女将の生きている世界ではスマホなどのありえないものが登場しても『ヘンな板』持っている人もいるものね的に首を傾げる程度で華麗にスルー。この作品を読み始めた頃、現代と繋がっていることに気づいたら女将も米屋も消滅してしまうんじゃないかと密かに心配していたが、案外大丈夫なようにできているらしい。不思議ではあっても物騒なことはなにも、ない。だからこの物語は心地よいのかもしれない。まあ、不実な客には容赦ない結末が待っていたりもするが、それも人生をやり直すきっかけを与えてくれているのかもしれない。そう考えると米屋の存在はやっぱり優しい。そしてまだまだこのシリーズは続く模様。大変嬉しい。

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著者プロフィール

1958年、東京都江戸川区生まれ。早稲田大学文学部卒業。松竹シナリオ研究所で学び、脚本家を目指し、プロットライターとして活動。その後、丸の内新聞事業協同組合の社員食堂に勤務しながら、小説の執筆に取り組む。2007年、『邪剣始末』で作家デビュー。2013年、『月下上海』で第20回松本清張賞を受賞。その他の著書に「婚活食堂」「食堂のおばちゃん」「ゆうれい居酒屋」シリーズや、『風待心中』『ゆうれい居酒屋』『恋形見』『いつでも母と』、共著に『猿と猿回し』などがある。

「2023年 『婚活食堂9』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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