戦中派の死生観 (文春学藝ライブラリー 雑英 19)

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  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784168130519

作品紹介・あらすじ

死んだ仲間は何のために戦ったのか? 戦後日本は戦争と敗戦から何かを学びえたのか? 真の愛国とは? 死を覚悟して生き残った戦中派が「日本人として生きる」ことの意味を問う。(解説・若松英輔)(目次)戦中派の死生観戦後日本に欠落したもの青年は何のために戦ったか戦中の青年たちは何を読んだか三島由紀夫の苦悩「戦艦大和ノ最期」をめぐって死者の身代わりの世代 ほか

感想・レビュー・書評

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  • 近代の狭間にあって、自らの死を直視し過ぎたがゆえに強烈に虚無を内在化し、また言葉通り必死に外へ向かって有を生み出そうとした世代、それが戦中派ではないだろうか。その特攻体験という特異な体験をしたが故に、ロストジェネレーションよりも深く戦後に沈殿した世代である。とりわけ著者の吉田満はその記録文学からもわかるように、後世へ託す気持ちが強かったのだろう。戦後社会や戦後派の戦時中を見る眼差しに耐えられない様子だ。
    もし現在、戦後の革新派がその思想的価値の大きさにもかかわらず、思想上において正しく弔われていないとすれば、死者を適当に弔うことができなかった時代に原因と悲劇があるのであり、またそれは、現在に生きる私たちが正しく弔われない可能性をも意味しているのではないだろうか。

  • 戦後日本に欠落したものとは「アイデンティティー」であった、というのが吉田の結論である。吉田は戦艦大和の乗組員であったが、大正期以降の共産主義による浸透工作や、GHQの進駐の実態を知っていたのであろうか? いささか疑問が残る。「太平洋戦争」と書いているところも個人的に気に入らない点である。
    https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2022/12/07/213532

  • 本文もさりながら、若林英輔氏の解説がとてもよかった。

    「戦争を否定するのはよい。だが、そこに連なることを強いられた者たちに裁きの刃が向けられるのを吉田は認めることができない」

    その気になれば徴兵は拒否できたとか、怠惰に過ごせばよかったなど、事後の反戦的な言説はどこまでも本質を逸らしているし、状況がもつ力をあまりに軽視している。吉田はこの遺書で渾身の反論を試み、そして成功したのだ。

  • 皆におすすめ。大和に乗艦していた人の話。

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