1983年刊。
私が小学生の時、何気なく見ていたTVに、とんでもない「まんが」が放映されていた。
確かに、それは、かっこいいロボットが立ち回り、悪魔のような敵を破壊して平和を回復する物語ではあった。マジンガーZに毒された我々にはストレートに響くはずの物語であった。
ところが、その巨大ロボットは、敵を倒すための攻撃に伴う必然として、周辺の人々の家を破壊し、彼らに幾多の迷惑をかけ、そればかりか彼らの命を奪う結果を引き起こす。
住民達は、巨大ロボット操縦者のヒーローに食って掛かる。
「お前たちがいるから、難民にならなくちゃならないんだぞ」「早くどこかへ行ってくれ」と…。
それは脳天をカチ割られるような衝撃であった。何と勝手なことを言う人たちだろうか…と。
そしてそれから数話して後、さらにとんでもないシーンを目撃する。
それはヒロインの少女を敵が人間爆弾に改造することから始まる。そう、普通なら、少年は少女を救い出すのだ。爆弾をはずす魔法の方法をもって…。
しかし、このTVマンガは、この予定調和を木っ端微塵に打ち砕く。
少女は、何もなし得ない少年の前で爆死する。無力感に苛まれ、泣き叫ぶ主人公。見ている私の中には言いようのない不快感が突き抜けていった。
しかしながら、見るのをやめられなかった。
その後の展開は……。そして衝撃のラスト二話分に絶句するしかなかった。そして、波に洗われるザンボエースは涙に暮れた主人公の心の裡をあらわすかのように…。
この作品の名は「無敵超人ザンボット3」。著者が監督を務める作品の視聴が、私の彼との出会い(片面的な)であった。
本書は「機動戦士ガンダム」総監督・富野喜幸氏の自叙伝である。
一応、映画「ザブングル・グラフティ」までの出来事が書かれているが、事実上、ザンボット3までで頁の大半を占める。
また、彼から語られる夫人との出会い。その結果、醸し出されるその存在の大きさ。これも十分看取できる書である。