日本経済生か死かの選択: 良い改革悪い改革

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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198614294

作品紹介・あらすじ

瀬戸際の日本経済。バランスシート不況を見誤った小泉政権への緊急提言。不良債権処理と財政再建は構造改革ではない。早急に小泉構造改革とは切り離し、現実的な景気対策で大恐慌シナリオを回避せよ!本書と同内容の著者の論文が2001年度最優秀論文として米国NABEのAbramson賞を受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 本書はリチャード・クー氏が小泉総理登場時に執筆した日本経済への処方箋とも言うべき本である。筆者は古典派経済学者と異なり、需要の小ささを指摘し、債券市場の異常な超低金利を見て財政再建政策に警鐘を鳴らし、財政出動による需要増を主張している。また、バブル後の不況の原因を「バランスシートの不況」と指摘しており、企業が利益最大化から債務の縮小化に走っていると主張、政府やマスコミがこの不況克服に時間がかかることを理解していないとしている。確かに評者が高校生の時などは大型企業が債権放棄やDESなど債務圧縮に努めており、リストラが一巡し薄型テレビなど新しい需要が出てきたときに景気が拡大し始めた。
    時価会計で大きく評価損を計上した銀行や生保なども息を吹き返したのである。筆者は時価会計のデメリットにも指摘しており、今更になってアメリカや日本が時価会計制度にやっと慎重になったことを考えれば筆者の指摘は非常に鋭いと感じている。
    また筆者はインフレターゲットについては銀行の背信行為が必要であり、需要には満たず、また素早くバランスシートを回復したい企業経営者にとってモラルの低下の問題になるが、企業経営者は正しいことをしているので効かないとしている。

    ただ、筆者は年金や医療・介護といった分野について全く触れられていないところに評者は物足りなさを感じた。毎年膨張をつづける医療費の問題にどう対処するのか?そこは皮肉にもまだ膨張する医療費の問題が上がってこなかった所以かもしれない。また、ルーズベルト型の政策をかなり評価しているところもやや疑問を持った。
    評者が一番納得できなかったのは筆者が「財政赤字が将来への負担にならない」と主張しているところである。筆者の主張通りならば財政黒字になっていなければならない。しかし、現在の状況は言うに及ばず、当時の日本政府の赤字国債の残高は既にGDPの120%程度になっていた。それに好景気を前提としているのではないかと思ったが、筆者は短期のスパンで見ているように思われる。そこは注意しなければならないところであろう。

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著者プロフィール

リチャード・クー
野村総合研究所 主席研究員、チーフエコノミスト
1954年、神戸市生まれ。76年カリフォルニア大学バークレー校卒業。ピアノ・メーカーに勤務した後、ジョンズ・ホプキンス大学大学院で経済学を専攻し、FRBのドクター・フェローを経て、博士課程修了。81年、米国の中央銀行であるニューヨーク連邦準備銀行に入行。国際調査部、外国局などでエコノミストとして活躍し、84年、野村総合研究所に入社。現在、同研究所研究創発センター主席研究員。


「2019年 『「追われる国」の経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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