清水義範の作品らしい,たわいもない話ばかりの短編集。バスが来ない,お通知表,マイルド・ライト・スペシャル,宗派不問あたりがなかなかの秀作。清水義範好きなら十分楽しめる。★3で。
個々の作品の所感は以下のとおり
○ バスが来ない
時間どおりにバスが来ないバス停での,人々の心理の葛藤を描いた作品。このようなどうでもいい話を,これだけ面白く描けるのは,清水義範らしい,人間観察のたまものだろう。
○ 私の履溺書
一代で財を成した人物の自慢の手記という体裁の作品。にやりとさせる描写がされている。
○ お通知表
会社で社員に通知表を出すというアイデアで書かれた作品。新入社員のどうしょうもなさと,絶対評価の通知表のむつかしさを,清水義範らしいユーモアとひねくれた目で描かれている。
○ マイルド・ライト・スペシャル
昔,たばこを吸っていた頃,ここまでマイナーではないが,結構マニアックなたばこを吸っていたので,この作品の主人公の気持ちは分かる。たばこに限らず,なかなか手に入らないものがあれば,意地になって探してしまう人の気持ちは分かる。
○ 宗派不問
お葬式を舞台にした作品。お葬式をビジネスとしてとらえることへの,皮肉な目線で描かれている。
○ きぼこおたく
こけしおたくの人々の話。おたくという文化を皮肉な目で描いている。
○ 戦慄の寒冷地獄
節電,節電とうるさくなった現代では,もはや懐かしく感じてしまう,夏の極寒の冷房地獄を描いた作品。もう,こんな時代は来ないだろう。
○ 祭りの夜
みんなが同時にぐわぐわしゃべる物語。まさにまつり。作品のできとしてはイマイチ
○ ねぶこもち艶笑譚
読みにくい。清水義範は,たまにこのような作品を記載するが,好みの作風ではない。読むのがめんどくさい。清水義範の作品は,もっと何も考えずに読みたい。
○ 語り伝えの歴史
歴史を口授するという文化そのものを描いた作品。それを文章にするとこうなるというのがプロットか。これもイマイチ。