天使の眠り (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198931889

作品紹介・あらすじ

京都の医大に勤める秋沢宗一は、同僚の結婚披露宴で偶然、十三年前の恋人・亜木帆一二三に出会う。不思議なことに彼女は、未だ二十代の若さと美貌を持つ別人となっていた。昔の激しい恋情が甦った秋沢は、女の周辺を探るうち驚くべき事実を掴む。彼女を愛した男たちが、次々と謎の死を遂げていたのだ…。気鋭が放つ、サスペンス・ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • さくっと読めて面白かった。札幌も出てくるしフランスも出てくるし、なんとなくうれしくなる。とてもシンプルな文章で軽快なのに、ときにはたと立ち止まるような深くささる言葉がある。「人を殺すのに正義感をふりかざすのはやめて。……単純にお金のために殺したと認める方がまだましよ」。

  • 心理ミステリー
    ストーリー的にはかなり無理があるようにも思えますが、心理描写と構成が面白く、サクサクと読めました。
    結末はあれでよかったのか?意見が分かれるところでもあるかと思います。
    個人的には面白い本でした。

  • なかなかの仕掛けだった。
    恋愛を何度繰り返しても本気になれない宗一。
    それには若かりし日に3ヶ月だけ同棲をした恋人一二三の存在があった。
    同僚の結婚式に出席した宗一は、13年前に突如として宗一の前から姿を消した一二三と再会することになる。
    しかし彼女は13年の年月を感じぬほどに、いや…まったくの別人のように若々しく美しかった。
    同姓同名?
    そんな疑問は隣に寄り添う少女によって瞬時に払拭される。緑色の目の少女。それは間違いなく一二三の娘。緑色の瞳、そんな偶然があるはずもない。
    整形?いや別人?では娘は?
    興味深い始まりである。
    有り得なさそうで、ありそうな…。

    そうそう上手く行くことではないけれど、動機は身勝手としか言いようがないけれど、上手くことが進むからこそ面白い!ミステリーとして最後まで楽しめました。

    人はいろんな事情で天使にも鬼にもなる。
    誰かにとって天使であってもその同じ人が誰かにとっては鬼となることは間違いなくある。
    知らぬが仏。
    13年間忘れられずにいた恋人の真実を知ったときの宗一の混乱と虚無感を思うと切ない。

    親心は痛いほど分かるけれど、それでも我が子が背負った運命を親であっても変えることはできない。それよりも、親子としてもっと当たり前の愛情をもって生きて欲しかった。
    自分が我が子を愛するように、誰にだってその人を愛する人たちがいるという想像力を失ってはならない。

    今年の8冊目

  • 全てを犠牲にしてでも守りたい娘の命。
    救う為には手段は選ばず、他人として生きる事を選ぶ。
    それで解決したなら良かったかもしれないが、志半ばで自ら命を絶つという選択は理解出来ず、余りにも身勝手に感じてしまった。

    本物の母親ではないこと、父親から遺伝した病気のこと、それら真実を知るであろう時に、自分が存在する意味を見つけ出せている事を願う。

  • してやられました。そんな結末は全然予想していませんでした。そんな驚きとともに、いろんな伏線が回収されて、気持ちいいくらいの裏切りでした。子を想う親の強さを感じました。

  • 2人の視点で進んでいくストーリーは飽きがこなくて、文章も読みやすい。だから逆に物足りなさは若干。
    母親の最後は理解できない残念な結果に終わるが、最愛の娘を守るにはそうなるのかなぁ。

  • 随分前に読みかけていたのを引っ張り出してなんの気無しによみはじめたら、、
    文才というか伏線回収って小説を書く上で必須とは言わないまでもあって然るべきなんだなあ

    小学生くらいの頃こういうミステリーものが好きで、その類の続きが気になって仕方がないという感覚を思い出した

    ここまでとらわれた一二三への想いが、一二三自身との繋がりの中では大した厚さではなかった事実が小説として楽しむには物足りなさを感じるけど、ある意味それってリアルなのかも

    こういう伏線が張ってある物語、よく読んでいた昔ならきっと途中で気づいたのに読み慣れてないと気づかないもんだな〜ちょっとかなし

    あとがきを読んで、岸田るり子さんが人間の記憶にフォーカスしている人、というところが腑に落ちる
    人間の記憶は自分自身こそ1番自信を持てないというか確かなのにどこか不確かというか、、夢と現実とが折り混ざる感覚に似ている

  • 13年ぶりに出会った昔の恋人。
    わずかな時間だったが共に暮らし、そして行方をくらました女性は、以前とはまったく違う印象を宗一に与えた。
    本当に本人なのか?
    疑問を抱きながら宗一は一二三について調べ始める。
    本当に面白かった。
    幾重にも入り組んだ人間関係、張られた伏線はどう回収されるのか。
    江間が感じている母親への違和感。
    母として慕う気持ちはあっても、無償の愛のような包み込まれる愛情はなかなか感じられない。
    それにしても、どうしてあんなラストになったのだろう。
    人生のすべてを賭けて成し遂げようとしていたものを、あんなにもあっさりと・・・そう感じてしまった・・・手放すことにしたのだろう。
    結局、よく考えもせずに身勝手な思い込みで子どもを生み、一人よがりな使命感に突き動かされて行動していたにすぎない。
    意地もあるんじゃない。
    お金がないってことだって惨めよ。
    人間は自分が惨めであればあるほど、別の形でプライドを取り戻そうとするものよ。
    人として正しいプライドのあり方とはどんなものなのか?
    そもそもプライドとは何なのか?
    「誇り」と言いかえればわかりやすいのだろうか?
    命は大切だ。
    まして誰よりも大事な人の命は、出来ることならどんなことをしても守りたいと思うだろう。
    けれど、それはあくまで常識の範囲でだ。
    結果命が救われたとして、事実を知ったらどんなに衝撃を受けるか。考えなかったのだろうか?
    生きていればいいというものではない。
    当たり前の幸せを与えてあげることこそ、本当に大切なことだったように思う。
    この物語は何を伝えたかったのだろう。
    犯人にはいっさい共感できない。
    協力者にも、すべての原因となった人物にも、共感ができない。
    安易なラストにしてしまったために、意味のわからない物語になってしまった。

  • 主人公は、13年前の恋人と再会するが、彼女は別人のようだった、という冒頭は面白そうに思えた。しかし、回想シーンがやたら多く、読んでいて退屈した。
    トリックに意外性はあったが、かなり強引なトリックだった上、トリックの解説が長すぎる。看護師の仕事がそれほどまでに簡単とは思えないし、向井が共犯者ではないかと疑われなかった理由が判らなかった。
    また、本物の一二三が偽物の一二三(レイカ)を殺害しようと思った理由があまりにも短絡的でご都合主義的な印象があり、そうでもしなければ、作者が話の収集をつけられなかったためではないかとさえ思えた。

  • おー。


    期待せずに読んだせいなのか、満足の一冊!
    すっかり主人公の男性の気持ちになって読み、
    登場人物・江真に同情し、読み終わって、
    一二三の気持ちにしっかりと同調できて感動できた。

    よく出来ていると思う。
    一人称で述べられている事実と三人称で語られる状況は、
    読み直しても破綻していないし、江真に対する向井さんの態度も、
    宗一に対する一二三の驚きや「本当に覚えていないの」という台詞も、
    すべてがフェアだ。

    ただ、最後の部分が若干納得行かない。
    自身に保険金をかけ、それで5億になるのかな?とも思ったが、
    自殺で保険金は下りないのでは。。
    と、すればこの死の意味は?

    なんとか自分を納得させた理由は、母親を正しく尊敬できる少女に、
    江真を育てたかったから?
    あるいは十年以上ひたすらに思っていた人に会ってしまったら、
    もう、解放してあげたかったとでも思ったのだろうか?

    その部分はちょっと、えーって感じだったけれど、
    あまりにも読み直しての上手さに感心したので★4つ、つけておきます。

    書評なんか見るとかなり評価は低いけれど、
    あたしはこの構成力、かなり好き。

    他の作品も読んでみよう。

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著者プロフィール

1961年、京都市生まれ。パリ第七大学理学部卒。2004年に『密室の鎮魂歌』で、第14回鮎川哲也賞を受賞。著書に『密室の鎮魂歌』『出口のない部屋』『天使の眠り』『めぐり会い』ほか。

「2021年 『味なしクッキー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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