異世界で全裸勇者と呼ばないで(2) (リュウコミックス)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (164ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784199508189

作品紹介・あらすじ

異世界召喚されて早々魔女に呪いをかけられてしまい…
タオル一枚での異世界冒険を強いられることになってしまった幡上瑠奈。

同じく魔女に呪いをかけられてしまったクリス、ティアと共に
魔女を探すためにまずは情報集めを目的にギルドでの冒険者登録に挑戦するが、
初めての【全裸】での異世界イベントに瑠奈たちが想定してなかった…
トラブルが発生してしまう!?

全裸ではギルド登録やダンジョン探索も一筋縄ではいかない!?
肌色全開タオル一枚での異世界冒険第二幕が遂に開幕!!

感想・レビュー・書評

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  • 勇者と魔王が向き合う中で、なぜか広がる全裸の輪。

    本作の紹介につきましては一巻の方でもレビューを差し上げたほか、ある一点を除けばこちら通常版と同内容である「電子限定特装版」の方にも文章を回しましたのでそちらもご参照いただけましたら幸いです。

    ただ、こちらでも一応触れておきますと。
    あくまで個人的な見解であると断っておきますが、通常版の方を購入されることをオススメします。
    「隠す!」という目的意識あって組まれているためか、構図の完成度としては通常版の方が上でしょうから。

    特装版の方にも芸術点の上回るコマが散見されているのは事実です。ですが、どうもお色気の方に目線が行ってしまって、本命のストーリーラインに向けるべき意識を割かれるのも難しいところ。
    したがって、私個人としましては両方読んだうえでこちら通常版に軍配を上げる次第です。

    とまれ、あまり長々と語っても仕方がないので二巻の内容の紹介ついでに感想を述べていきましょう。
    ここ二巻のはじまりを飾るは冒険者ギルドでの主人公一行の登録回です。それに続きメインを占めますはダンジョン攻略回となっています。RPGに範を取るファンタジー作品なら、まさしく華よと言いたくなりますね。
    他方で、なんでギルド登録だけでこんなに見せ場があるんや! とツッコミたくなりましたが……。

    問題はダンジョン攻略のあとです。
    主人公である全裸勇者こと「瑠奈」と女体化勇者こと「クリス」のコンビに続いて仲間になった、のじゃロリババァ魔術師「ティア」の驚愕の正体判明! に至る驚愕の引き、ここに注目したいですね。
    実にスピーディーでハイテンポ、出し惜しみは抜きで、駆け足感なく駆け抜けた――てなものです。

    それら衝撃的な〆については伏せますが……、一巻では全裸と女体化のインパクトで押しに押した分、改めて読者をストーリーラインに乗せる狙いあっての御開帳なのかもしれません。演出を花開かせるため、ここ二巻では瑠奈と仲間たちの間での丁々発止の掛け合いに大いに力を入れているように思われたので。

    ゆえに、森下先生はさっそく勝負に出たんだなあと嘆息する次第です。
    「全裸」なる出オチだけでは終わりません。最初から提示された要素でもある「勇者と魔王」というファンタジー作品ならこれまた王道の対立項に真摯に向き合っています。なので一読者として作者に信を置きました。

    あと、個人的に言っておきたいのがなんだかんだで良心的なほのぼの路線を崩してないってことですね。
    二巻でも主人公の瑠奈は全裸の呪いで相変わらずひどい目に遭いまくるんですが、この状態異常が詳細を知らずとも周囲からは、きちんと“異常”だと認知されていること。ここを押さえ続けているのが強いです。

    常識的かつ抑えた反応で瑠奈のことを怪訝に思ったり心配してくれたりする街中の男性がいることで、この漫画が狂気の作品になってしまうことを防いでいるのかなあって思ったりもします。
    ついでに言えば美男美女だけでなく中年男性をちゃんと描けるのが、十年選手な漫画家の強みなのかなって。

    あと、この作品がタイトル通りになっちゃった元凶のひとりである女神様がきちんとペナルティを受けます。
    瑠奈もそれを認めて許します。このように悪ノリをどこまでもいつまでも許される類として描かず、不快感が後に尾を引かないようきちんと潰しながらサクサク物語を先に進めているのがこれまた巧みな点ですね。

    問題の女神様も話の転換点に居合わせていい感じに緊張感を抜いてくれますし、作劇上無駄にしていません。
    全般的にバトル自体の緊迫感は薄いんですが、その辺は本当に全裸にならないようバスタオルを押さえるアクションという形で瑠奈が補っているので、本当に上手くできてるなこの設定……って思うなどしました。

    それから瑠奈なんですが、自身の特性を生かしてのここぞという機転と発想も見どころですが、アップになるタイミングでの力強く、けれども繊細に描かれている体の輪郭線が気に入りました。
    体の輪郭線がダイレクトに出る分、ここぞという時で見栄が決まるのだなあって感じるなどもしています。
    加えて恥じらったり凛々しかったりとリアクションが実に豊か、お色気抜きでも見ていて楽しいんですよ。

    それに絡めてついでに語るとするならば同じ女体でも現状ではスレンダーなクリスとお子様体型なティアで身長帯も含めて、しっかり個性を出しているところも好きです。白黒その他と、濃淡の基調も分かれてますし。
    ついでに言えば瑠奈が曲線で構成されている中、シャープで直線的なクリスが同じ画面に収まるとバランスがいいわけですね。そんなクリスもなぜか予期せぬ理由で脱がされる羽目になるのは、ご愛嬌……でしょうか。

    つまるところ、瑠奈はかなり優秀な主人公ですね。RPGあるあるで思考を止めずにファンタジー作品に慣れた現代っ子の視点からひとつひとつ仮説を立てながら、着実にこの世界の謎を追っていく。
    全裸という唯一無二の個性のほか母性に似た優しさも備えてますし、呪いへの同情抜きで好感が持てます。

    と。ネタバレをある程度避けてのレビューとしては以上になります。作品のタイトルがこんなになっちゃった原因の過半を占める、某「魔女」の正体が気になるところですが、その辺は続刊に期待ですね。

    それと元凶たる魔女も魔女で、人が悪いだけでなく妙にかわいげがあったり、微妙に虚を突いたやり取りを繰り広げたりするところがツボに来たので彼女が今後どうなっちゃうのか? 先述した女神様のようにひどい目に遭うのか、意外とやりたい放題のまま終わってしまうのか? などにも興味を向けてみたいところです。

    なんだかなと思われましたか?
    森下先生の作風に関わる話なので、一応伏線として置いておきたいのです。
    それでは。次巻では温泉以外で何人が脱ぐのかと頭を抱えつつ、またお会いできましたら光栄です。

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著者プロフィール

7月9日生まれ。千葉県出身。2013年、講談社イブニング誌上にて「幼なじみは女の子になぁれ」で連載デビュー。その後BookLive NINOにて「ただし俺はヒロインとして」を連載。得意ジャンルはコミカルなTSF(性転換モノ)。好物はクリームソーダ。趣味はYouTube配信。

「2022年 『異世界で全裸勇者と呼ばないで(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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