タイトルの「甕のぞきの色」は不治の病を宣告された青年の話。
西洋医学に頼る術をなくした彼の頼った先は「奇跡の水」で体が回復するという宗教施設だった。
その奇跡の水を見つけ、施設のシンボルともなっているのが18歳の少女、比売子。
彼女は18歳にしては幼くまるで少年のようだった。
やがてその水の分析が化学的に行われ、マスコミが施設に押しかけてくる。
「甕のぞきの色」とは、水をいっぱいくんだ大甕を覗くと水が幽かに青みを帯びて見える。そのぐらい幽かな青色をひとはけだけかけた藍染めのことだそうです。
そういうものは見えるといえば見える。
見えないといえば見えない。
あるやなしやのもので、そういうものを信じられるか、信じられないかで変わってしまうような幽かなものを例えてるのだろうと思いました。
またこの本には作者の霊体験「蓮の池」、自分にとって都合のよい女を求める男のあさはかさを描いた「二口女」も収録されています。