- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784255010779
感想・レビュー・書評
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近松の古典やギリシャ・ローマの古典、そして実際の判例を取り上げて、中学・高校生と一緒に法とは何か、自由とは何かを考える。徒党(グル)と個人。この対立で徒党を解体して徹底的に個人に肩入れすることが「本来」の法であるという。「占有」という概念が出てくる。二人の人が一つの物にかかわって争っている時に、高い質で持っている方を勝ちとする。その人に占有があるという。それを破る者を失格とする。法の体系の核にこの「占有」という原理がある。最後まで読んでいくと、日本の社会にはこの占有という原理が弱いことが分かる。最高裁の判例でも「占有保持請求本訴ならびに建物収去土地明渡請求反訴事件」で占有をしている方が負けている。現実はなかなか難しい。でもそんな政治システムを形作るのも人間だから、吟味された古典を読んで深く考える人になろうということで終わっている。
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20190105 基本的人権とはという教科書的な解説ではなくて、そこにたどり着くために古典を元に考えさせる構成。出来上がった本を読むのも良いが講義に参加しているつもりで考える事。この本をきっかけに考える人が増えて来たら政治も変わって行く予感がする。
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中高生に木庭顕先生。おもしろい企画ですね。
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摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50125362 -
法学研究者が、中高生向けに行った特別授業を本にしたもの。
企画コンセプトは[ https://booklog.jp/item/1/4062575388 ][ https://booklog.jp/item/1/4255004854 ]を思い出させる。脳内の仮想高校生向けではなく、本物の中高生に向かい合って作るこういう本はだいたい面白い。
方法がユニークで、映画や文学の古典作品を読ませ、その中に描かれる構造について話し合うことで、法の本質を考えさせるというもの。ギリシャやローマの物語は筋が複雑ですぐ飲み込めないのと、やはり抽象的なことがらの議論ではあるので理解が難しいところもあったが、全体は面白かった。
いくつかメモ。
・法の目的は徒党の解体。徒党とは利益や貸し借りといった不明瞭な力関係で結ばれた集団。
・徒党が個人を力で圧倒しようとする時、法がその個人を守る。
・徒党に対抗するのは個人、あるいは孤立した個人同士の連帯。
・占有。物を押えている方が強く、占有している側=被告にまずは権利があるとみなされる。その状態をいったんブロックした上で、現実の力関係と切り離した「劇場」内で言語による解決を図る。
・ただしその入口でレッドカード一発退場になる場合もある。精神的自由、身体的自由を侵した場合。
・都市と領域。都市とは徒党を解体した空間、ここで政治が行われる。ただしすべての空間を都市化することはできないから、都市のほかに、徒党が最小化するようにコントロールされた空間=領域がある。領域内に第二次政治的システムが発生することもある。
中高生が結構臆せず発言し、途中から担任の先生まで議論に加わってくる。著者の先生はきちんといちいち受け止めていて、ライブ感がある。あとがきによれば、なるべく生徒たちの名前を覚えるようにしていたそうで、議論の中でも頻繁に呼びかけたり発言を振ったりしている。ただ呼びかけの回数を見ると「〇〇君」に比べ「〇〇さん」はだいぶ少ない気がする。参加者には女子もいた。偶然か女子が大人しかったのか先生がいじるのを遠慮したのか、これはその場を見なければ不明。 -
再読する。
人権とは、もともと何もないところから何かを生み出す「権利」ではなく今あるものを守るための「占有」だということ。
誰のために、それは、徒党に対する個人のために。
数々の古典を読み込み、最後に出てきた自衛官合祀事件の受け止め方は、判例集を見て、「他人の信仰に基づく行為に対して、自己の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であることを要請している」という部分を頷きながら読んで済ましていた自分に強烈な反省を促すものだった。 -
著者、朝日賞受賞!
じんぶん大賞1位!
朝日賞、そして紀伊國屋書店が運営・選出する人文賞を受賞!追いつめられた、たった一人を守るものとは? -
東2法経図・6F指定 320.4A/Ko11d/Nakada
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もひとつ。