1989年刊行。
本書は、訳者が書誌と著者略歴を開陳しないという致命的問題がある。故に、そもそも本書がフィクションか否かすら判然とせず、まえがきもない本書であれば猶更その問題は大である。
かかる弱点があることは置くとして、本作は、いわゆる第一次ソロモン海戦時に米豪海軍側で参加した人物の自叙伝の体裁をとっている。
勿論、その後の、ガダルカナル島・ヘンダーソン飛行場砲撃戦や、後の捕虜体験なども叙述される。
連合国軍側も勝利を得べく懸命なのは当然の仕儀ではあるが、中でも第一次ソロモン海戦後の措置が目を引いた。
それは、戦術的敗軍であった米側の事後処理。すなわち、同海戦の敗因要因を、直接に体験した著者から備に聴取し指揮上の問題点を上官は著者に対し冷静に指摘しつつも、組織・機能上の敗因要因(艦艇間の無線通信網の不備)を取り除くよう検討した件だ。
敗因から学ぶ軍隊ということを雄弁に語るエピソードである。