- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784259517359
感想・レビュー・書評
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長岡求氏は、花卉流通の現場のプロであり、
最近は、花卉園芸家もしくは、花卉研究家として、テレビでも活躍中である。
この本は、花卉流通が今後どのように展開されていくのかを
かなりくわしく論じ、興味ふかい。
「過去を学び、今を知り、未来を求めること」という長岡氏の願いは、この本の中で、如実に表されているような気がした。
そして、数々のビジネス的ヒントも沢山埋め込まれている。
「内容は少しむつかしくなり、また暗くなってしまった・・・」
のは、「私個人の品種特性に由来する」と書いてあるのには、
著者を知る私にとっても、頷くほかない。
私は、「いつも長岡さんは、ジネンジョを掘るような仕事をしている。」
といったりする。
長岡氏は、花市場で仕事している立場から、
市場の歴史、価格形成のメカニズム、セリ取引、相対、そして、台車流通
と、花市場が遭遇してきた出来事を緻密に分析してある。
かなり、明晰で、今後の方向を指し示しているような気がする。
(ここでは、あまりふれない。
1998年10月に出版されているので、
いまの花卉の流れから見ると少し流れが変わってきているので、
いまの時代にマッチした・・・「補遺」がでるといいかもしれない。
やはりそれほど、花の流れははやい。
このときの話題は、インドから大量のバラが押し寄せてきた1996年をトピックスにして、インドの花の動向も分析していて、おもしろい。
なぜインドから、大量のバラが輸出されたかを、
実際インドの中を歩く中で、
インドの文化も考察をしながら、分析しているのがいい。
花は、ある意味では、輸出しやすい品目である。
しかし、以下の条件を備えていないといけない。
①量販品目である・・バラ、カーネーション、キク、ユリ。
②四季咲きの花が多い
③軽量なものが多い
④花持ちがよい。
インドから見た日本は、
①花の消費国である。
②直行便のフライトがある。
③インドは、他のバラの産地より日本に近い。
④EU諸国は、輸入関税が、17%であるが、日本はない。
⑤高品質なモノ、めずらしいモノは、単価が高い。
インドから日本に花を出荷した時に以下のような課題があった。
①同一品種を大量の送ると単価がくずれる・・・ヨ-ロッパではくずれないのか?
②2級品は極端に安い。
③植物貿易検査が厳しい。
④市場や仲卸、小売店など、関係業者が小規模である。
⑤日本国内の諸費用(通関や植防、燻煙、国内運賃、輸入業者のマージン)が高い。
⑥季節変動が大きい。
この本では、中国は、サカキの産地としてしか認識されていないが、
実際上の項目を、中国に置き換えると、もっと事態は、すっきりする。そして、問題となることも同じである。
最近 カーネーションの輸入量が、コロンビアを中国が追い抜いたという。これは、すごい大きな変化である。
ここで、長岡氏は、日本の花の消費について、
「日本は、先進国型の花卉産業を持つ国であるが、
花使いの文化は、欧米と異なる面が多い。
・・・宗教的な花使いが実に豊かであり、芸術の域に達した生け花の伝統をもつ。
さらに江戸時代に隆盛を極めた園芸がある。
そのうえに、今の消費文化があり・・
日本は、インドやタイなどと同じく、歴史的に豊かな花使いが底流にあり、
昔から花を扱いなれていた国といえるだろう。」
という指摘は、とてもおもしろい
そして、「花使い」という言葉が、その象徴的意味を持っている。
そして、
「インドや中国、タイなどの国々が、経済的な発展を遂げた暁には、日本に似た花の消費大国になる可能性が高い」といっているのは、まさに、同意見でもある。詳細をみるコメント0件をすべて表示