ドイツに学ぶ地域からのエネルギー転換: 再生可能エネルギーと地域の自立
- 家の光協会 (2013年4月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784259547448
作品紹介・あらすじ
原発依存を継続するのか、再生可能エネルギー転換の道を歩むのか。日本の原発事故をきっかけに脱原発に舵をきったドイツでは、国の政策と協同組合が大きな役割を果たす。日本のエネルギー転換に求められるものとは。
感想・レビュー・書評
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一橋大学のグループが編纂した、ドイツの地域からのエネルギー転換の本。
類似の本は多いが、レベルの高い研究者が書いているからか、密度の高い記述となっているように思う。
しかし、ドイツのような状況をどのようにしたら日本で実現できるか、具体的なアクションが欲しいところではある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
> 日本音農林業・農山村は、いま危機的な状況にある。脳裏水産業の衰退によって、
> 農山村から人がいなくなり、土地が荒れ、
> 集落の機能が失われ、これに財政危機が拍車を掛けている。こうした動きを食い止め、農山村の
> 再生につなぐためには、農山村に新たな価値創造をもたらす新しい産業をおこすことで、地域の
> 自然資源経済を立て直す必要がある。本書で示してきたとおり、再生可能エネルギーを通じた
> 「地域からのエネルギー転換」が、自然資源経済を再生する優良なモデルとなると考えられる。(P191)
ドイツでは、気候変動・エネルギー政策に2050年度までの政策ロードマップとして「エネルギー・
コンセプト」が作成されている。「エネルギー・コンセプト」では90年をベースに、50年までの温室効果
ガスを80%~95%削減することを目標に、温室効果ガスの削減目標ならびに電力の再生可能エネルギーの
導入目標やエネルギー効率の工場目標値などが10年ごとの中間目標を含め策定されている。
「エネルギー・コンセプト」の成果として、再生可能エネルギーが発電量に占める割合を2001年と2010年で
比較すると6.6%から19.9に増加(内訳は風力発電で1.8%から7.6%に増加。バイオマスエネルギーは0.6%から
5.2%に増加。水力は4.0%から3.1%に減少、太陽光発電は0%から3.2%、廃棄物発電は02.%から0.8%に増加)して
いる。ドイツのケースでは、政策的な後押しもさることながら地域金融・自治体が中心となった地域からの
エネルギー転換が進んでいる。地域からのエネルギー転換は売電による収入、地域外に流出した灯油やガスなど
の燃料代の節約、雇用の喪失など様々な効果がある。
日本では、再生可能エネルギー特別措置法施行以降、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が本格的に
導入され、その結果として、施行からわずか5ヶ月の西田に365万kWの新規設備が認定を受けている。これは、
20年以上にわたる蓄積に相当する量を、半年足らずで達成したことを意味する。
一方でメガソーラーの事業主体は、SBエナジーやシャープ・京セラあどの大企業が主体となっている。現状、
「エネルギー転換」は進み始めたと言えるものの、「地域からのエネルギー転換」は今ひとつといえるだろうと考える。 -
1990年のドイツのエネルギー源別発電量は石炭57%、原子力28%。再生可能エネルギー4%。これが2012年には再生可能エネルギーは22%。石炭に次ぐシェアを占めるに至っている。驚愕の数値である。加えて近年では電気を輸出するまでになっている。まごうかたなき論より証拠である。掛け声だけでなく確たる実践の結果がある。政府による政策的後押し、注目すべき協同組合方式、地域からのエネルギー転換。いずれも日本とは大きく異なり進んでいる。世界は広い。