健康格差社会―何が心と健康を蝕むのか

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  • 医学書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260001434

作品紹介・あらすじ

格差社会はなぜ健康に悪いのか?健康教育や介護予防はなぜうまく行かないのか?結婚はなぜ健康によいのか?健康によい社会・経済政策とは?生物・心理・社会モデルと社会疫学で解明する健康社会実現のヒントに満ちた本。

感想・レビュー・書評

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  • 格差社会を医療面からみた書。「社会経済状態」(所得、職業階層、学歴、就業状況)が生活習慣や心理ストレス、利用できる医療サービスの大きさという「因子」を介し、結果、それが健康状態を左右する。社会経済状態の格差が健康状態の格差をも引き起こす。これを筆者は「健康格差社会」と呼ぶ。
     この格差を是正するために筆者は「生き抜く力」(有意味感:人生に意味があると感じられる。把握可能感:自己や環境に起きている出来事をしっかり把握できる。処理可能感:人生におけるできごとは対処可能な経験だとみなす。)の強化を目的にする。具体的施策案は社会保障の充実(最低年金額の引き上げなど)や労働政策(ワークシェアリングや不安定雇用の抑制)、教育政策(上記「生き抜く力」を高める教育。そして教育を受ける時の経済負担の軽減。)、税制改革(相続税の強化や課税の累進制強化といった所得再配分を意識したもの)がそれぞれあげられる。
     総括すると、「医療技術の発展」などの客観的健康感よりも、一人一人が健康であると感じられる『主観的健康感』の充実した社会を目指す。
    格差社会が新自由主義のせいであるとほぼ断定している(2005年の著作ゆえか)が、これのせいなのか否かなのは議論がありここではなんともいえない。しかし、医療を社会学(ソーシャルキャピタルなどコミュニティー論が中心)と論理的に結びつけ、政策提案まで施すかなりの力作。結局「病は気から」なんだな。今後の発展に期待する。

  • 社会的格差が健康に影響を及ぼすか否か、科学的見地から述べるに当たっての最低限の知識、理念、社会的影響を読みやすく網羅されていてありがたい。SOC(Sence of Coherence)の概念モデルを「生き抜く力」として説明されている部分も説得力あり。一方で、社会疫学の限界、批判、科学的実証研究の課題にも忌憚ない見解が述べられている印象があり、読んでいて安心がある。社会疫学、健康格差研究の関心ある初学者にはおすすめできそう。

  • 分類=医療・経済。05年9月。

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著者プロフィール

2020年4月現在
千葉大学予防医学センター社会予防医学研究分野教授。国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター老年学評価研究部長。一般社団法人日本老年学的評価研究(JAGES)機構代表理事。

「2020年 『ソーシャル・キャピタルと健康・福祉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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